第34話 エルフ王国への輿入れと――新たな時代の幕開け
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最後まで断罪を見てから去っていく俺達。
陛下の御心を察するに、相当辛い事だろうと判断できた。
だがこのまま家に帰るにも、何かと煩い連中がやってきそうで――俺達は、一旦休憩室を借り、ダンスパーティが終わるまでの間、休憩することにしたのだ。
「しかし、凄いラストだったな」
思わず苦笑いする俺に、ダリアも――。
「あそこまで愚かだと、笑いすら出ません」
と、ほとほと呆れていた。けれど、「陛下の最後の言葉は胸に来ました」と告げ、俺はダリアを抱き寄せる。
本当なら早く帰って父親達と過ごしたいだろうに……新王太子なんて出た今、そうそう公爵たちも帰って来ることが出来ないだろう。
ダリアはというと、明日にはついにエルフ王国へと旅立ってしまうことを考えているのだろう。俺にぎゅっと寄り添い、少しだけ身体が震えている……。
「今までとても苦労してきましたが、誰かに見守られていたように思います。今ならそう思えるんです。その守られる瞳に……わたくしは支えられた気がするのです」
思わぬ言葉に今度は俺がハッとした。
だが、目を僅かに大きく開いたが、直ぐに愛おしさが込み上げてきて――ぎゅっと強く抱きしめる。
「それは案外、間違いじゃねぇかもな?」
「まぁ! 見守られていたのですね?」
「ああ、随分と昔からな」
笑う俺と、驚いてから嬉しそうに笑うダリア。
お互いの額を合わせ合い、幸福の中で互いに目を閉じて口づけする……。
ああ……二人の仲がまた一層深くなったのを感じた。
「これから先も、見守って下さいますか?」
「無論」
そう聞くダリアの手の甲に唇を落とす俺に、ダリアは満足げに、やっと優しく微笑む。
「悪役の仮面は、もういらないからな」
「ええ、やっと脱げますわ」
「案外真実の愛と悪役同士は……相性が良かったんだけどな」
そういう俺に、くすくす笑いつつ同意するダリア。
本当に、意外と真実の愛と悪役同士は――相性が良かった。
無論、ダリアは悪役令嬢の仮面を被っていたが、それにしても――だ。
悪が愛で結びつくと、意外な結果を出すのだと、改めて知ることが出来た。
「これから、彼奴等がどうなろうと知ったことではないが、二人一緒にエルフ王国で平和に過ごそう」
「ええ、わたくしはどこまでも、アルカについていきますわ」
互いに約束し合い、小指を絡めて強く約束し合う。
この異世界に、小指を絡めて約束する方法はない。
俺達が異世界転生しているからこそ出来る……あちらの世界の、約束の仕方だ。
「明日にはエルフ王国での婚姻だ……。両親が来られないのは残念だが」
「その分……アルカがいつでもこちらに戻れるように、エルフ王に進言してくれたから、わたくしはいつでもお父様とお母様たちに会えますもの」
「本来はタブーなんだがな……。爺さん俺には甘いから……。特別だぞ?」
「ええ! アルカがわたくしを、何よりも大事にしてくださっているのがわかりますわ!」
そう言って唇をいきなり奪われて驚いたものの、直ぐに抱き寄せ深く口づけた……。
そして翌日――ダリアは家族に見守られ、エルフ王国へと旅立つ。
「地獄に堕ちるような断罪を見届けたからこそ、いま隣にある温もりが尊く思えるのだろう」
「はい、お父様。わたくしは今ある気持ちを大切に……アルカ様の元へ嫁ぎます」
『人間国からの本格的な輿入れ』ということもあり、エルフ王国に入るため、俺の屋敷までは馬車で来た公爵家。
花嫁衣装のまま馬車から降りて、エルフ王国の持つ屋敷へと入っていくダリア。
それはまるで絵画の一場面のように、白い花嫁衣装が陽光を受けて輝いていた。
ダリアの両親は涙を流しつつも、娘の門出を祝い……。
俺は花嫁衣装のダリアの手を取り、屋敷へと消えていく。
「まるで、おとぎ話のような嫁入りだわ」
「エルフ族との結婚はそういうものさ」
扉をくぐり、エルフ王国に行く前に――俺達は永遠の愛を互いに誓い合う。
「俺達の未来は……きっと」
「ええ、明るいわ。もう下を見ないですむもの」
嬉しげに微笑むダリア。
その言葉に眩しい笑顔を見せるアルカは、ダリアの手を握り、二人の未来は、静かにエルフ王国の奥へと歩み始めたのだった。
◇◇◇◇
その日、木枯らしが本来ならば吹き荒れるはずの秋の空が、春のような天候になり。
そして、木枯らしは青々とした葉に変わって舞い……花が雪のようにどこからともなく舞い散った。
これにより、国民全体が知ることになる。
【エルフ王族への嫁入りが行われている】――と。
その相手は、貴族たちにはすぐにハッと気付いた。
大国で、たったひとりの王子であり、王太子であるアルカ――。
そして、その婚約者であるダリアとの婚姻が成されたのだと。
気候は喜びの春を精霊たちによって告げられ、鳥が喜びの歌を歌う。
秋の空に――春の歌を。
それは、新しい歴史の第一歩。
王国に暗い影がひとつ落ちそうだったところに咲いた――平和の象徴。
それが、国民と貴族、そして……それを見つめる人間国の国王と新しき王太子が見つめ、見守っていたのだった――。
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