第31話 断罪する為のダンスパーティ①
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ダンスパーティー明日に控え、パーティーが終われば留学期間も終わりだ。
そうなれば――ダリアを連れてエルフ王国へ帰る。
大手を振って、今度はダリアを王国に連れて帰れるのだから、俺の心は結構軽い。
無論、明日のダンスパーティーがどうなるかによるだろうが。
明日は、国王陛下もお越しになってのダンスパーティーだ。
年の瀬、一番学園が華やかになる日といっても過言ではない。
今回は学園も、王太子リガードと毒婦マリーによって破滅的最後を迎えた学園祭を反省に、ほぼすべての準備を教師が行った。
それくらいしないと元が取れないほど、学園祭は悲惨だったのだ。
このダンスパーティーを成功させねば、学園の威信に関わる。
それを教師たちも知っていての、ダンスパーティーだが……。
――申し訳ないが、リガードたちは必ず仕掛けてくるだろう。
最早ダンスパーティーどころではなくなる可能性が高い。
俺はこの日のために、マリーを断罪するカードは前々から用意していた。
最初の頃、ダリアとマリーにつけた『結晶妖精』という札がある。
ダリアとマリーに『結晶妖精』をつけてある。
その目は今もすべてを記録している。
舞台に上げる時は、魔法障壁いっぱいに投影してやるつもりだ。
俺が魔法障壁で大々的に見せ場を作れば、奴の悪事は皆の目に焼き付くだろう。
そのための布石はあの時投じておいたのだ。
ずっと記憶しているだろう。そして、今のこの時も。
そして――ダリアを狙う者たちとの、最後の幕引き。
「明日、必ず仕掛けてくる。けれど……俺たちはもう準備を整えてある」
アルカが低く囁くと、ダリアは真珠のような笑みを浮かべた。
「ええ、わたくしたち悪役は、最後まで舞台を飾らねばなりませんもの」
赤いバラの棘のように、華やかで鋭く。
毒をもって返すのは、この時のため。
「君となら、最後まで悪役を演じきれる」
アルカの言葉に、ダリアは静かに寄り添い、唇を近づける。
「どうか、その隣を最後まで許して……アルカ様」
二人は甘やかな眼差しを交わす。
――明日の舞踏会で、愛と共に断罪の幕を上げるために。
俺が告げると、ダリアはくすくす笑う。
既に悪役令嬢の仮面をしっかり出来上がらせたダリアは強い。
リオンを連れていたとしても、ひとりでドルフを叩き潰すだけの悪役ぶりを見せたのだから、彼女は名演技をしたのだろう。
今から期待してしまう。
そして、普段天使のような彼女が、悪役として君臨するのが楽しみでゾクゾクする。
「毒針でどこまで苦しんでくれるか見ものだ」
「棘がどこまで突き刺さるのかも、見ものですわ」
その言葉に笑う俺に、ダリアは満足げな笑みを浮かべて腕に寄り添う。
――かくして翌日、大舞踏会は華やかな音楽と拍手の中で幕を開けた。
だがその舞台は、ただの祝宴ではない。
【断罪】という名の劇場――勝つのは、必ずこの二人だ。
音楽家と演奏家たちを入れての優雅な音楽が流れる中、陛下も見守られる中でのダンスパーティーは実に素晴らしかった。
アルカの緑の髪に金の瞳。
それに合わせたダリアの緑のドレスに、ペベリットの宝石を使った上品なドレス。
アルカはダリアの美しい黒髪に青い瞳に合わせた服装できていた。
誰もが息を飲んで見つめる中、一際くすくすと笑い声の耐えない場所がある。
一体なんだろうかと思い見てみると――。
リガードはマリーの赤茶色の髪に合わせた服に、緑のワンポイントできていて。
マリーはリガードの赤い髪に合わせたドレスに、アメジストのような宝石をつけてきていた。
「なんだか、すごく微妙にチグハグだな」
そう語る俺にダリアは口を扇で隠し――。
「すごくあれは恥ずかしいわ」
と語ったが、二人はまったく気にしていない。
寧ろ、あの服を着て恥ずかしくないのは二人だけだろう……。
見ている側はとても恥ずかしい。
最初のファーストダンスを踊り、一回、二回、三回と踊る俺たち。
本来婚約だから二回が良いのだろうが、エルフ王国に着けばすぐに夫婦の契約だ。
今回くらいは羽目を外してもいいだろう。
ダリアの両親は涙を流しながら喜んでいる。
美しいダリアの踊りに、周囲からも感嘆の声が漏れる。
「流石大国の王太子と、その婚約者ダリア様だな……」
「ああ、我が国の王太子にも見習ってほしいくらいだ」
「何あのチグハグなドレスにチグハグなダンスは……」
「見ていて痛々しいわ」
そんな声が会場のあちらこちらで流れ始める。
それにやっと気づいた二人は、顔を憤怒させていた。
暫くの間、俺もダリアと二人静かに過ごしていたが――。
つんざく声でリガードがダリアを名指しして呼び出した。
その声は一点を射抜くような強さを持って響いた。
リガードの声は会場全体を揺さぶるほどに大きく張り上げられ、ざわついていた空気を一気に呑み込む。
誰もが息を呑み、次に誰が口を開くのかを待つように、会場は張り詰めた沈黙に包まれた。
リガードが叫んだ場所は国王陛下のおわす足元の近くでだ。
兵士が動こうとしたが、陛下が手を上げて止めた。
どうやら、このまま進めるつもりらしい。
王の瞳がわずかに見開かれる。
普段は微動だにしないその口元が、驚きと苛立ちを抑えきれず震えていた。
だが声を発することはなく、ただ沈黙が場を支配していた。
「どうやら陛下には陛下のお考えがあるようだ」
「そのようですね……」
「さて、始まるぞ。覚悟は良いか?」
「悪役の仮面はつけておりましてよ」
――こうして俺たちは前に出る。
【断罪パーティー】の始まりだ。
観衆は観客、舞台は学園のダンスパーティー、そして俺たちは悪役。
――幕が上がった。




