第30話(閑話)最早リガードを救う手立ては無し
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――国王陛下Side――
玉座の上から見下ろしているはずなのに、胸の内は奈落へ沈んでいく。
――リガードよ。
お前を息子と思っていたのは、遠い昔のことだ。
本日は城の重鎮たちによる議会が行われている。
その多くは、リガードの進退についてのものだった。
これまでの影の出してきた資料が全員に渡され、さらに公爵家の影が調べ上げた資料も全員に配られ、論議がされているが……。
そのほとんどが、リガードから王太子剥奪の話題ばかりだった。
ワシも資料を読み、最早リガードには何を期待しても無駄だということが判明した。
いや、文化祭で決定的になったというべきか。
アイツにはダリアがいてやっと一人前一歩手前だったというのに、そのダリアがいなくなった途端この有り様とは……。
――育て方を間違えたのだろうか、と自問自答する陛下。
だが、第二王子は健やかに、それでいて民を思う姿はまさに理想そのもの。
リガードは元々駄目な男だったが、毒婦マリーの所為で全てが駄目になった。
そう結論付けたのだ。
散々マリーと縁を切るようにと言ってきたが、縁を切る様子もない。
最早傍若無人を繰り広げ、城の中での評判もすこぶる悪い。
議会の後押しもあり、ワシは意を決する。
「リガードの王太子剥奪を、ダンスパーティの日に行うことを決定する」
家臣たちもそれには否定はなく――。
「今のリガード王太子ではとても」
「王たる器はございませんな」
「まるで独裁者のような振る舞い。父君である国王陛下にもあの態度では……」
「断頭台に消えないだけ……マシでしょうな」
――そう口にする者が多数。
溜め息を吐くワシだが、あの息子がアルカ王子に宣戦布告でもしようものなら、国自体がなくなりかねない不安がどうしても拭えない。
アルカ王子は、あの大国――エルフ王国のたったひとりの孫息子。
エルフ王が何よりも守り通そうとしている、大事な孫息子なのだ。
何かあってからでは最早遅い。
リガードの王太子という立場を早く捨てさせなくてはと思っても、時期を見なくてはならず歯がゆい思いをする。
もしリガードがアルカ王子相手に宣戦布告すれば、多額の金を払ってでも心からの謝罪をしなくてはならない。
誠心誠意今後も……と考えていると、兵士からリガードがまたマリーを連れて帰ってきていることを知る。
「なに? もう二度と連れてくるなと、昨晩も話したばかりだぞ」
「ですが……マリーを連れて部屋に」
「即刻マリーを叩き出せ。これは王命である!」
そう告げると兵士は去っていき、重鎮たちは溜め息を吐いた。
「昨晩話した内容すら忘れるほど、リガード様は駄目になってしまわれたのですな」
「国王の命令を、ここまで蔑ろにする王子もまた、珍しい」
「ご自分が国王だと錯覚されておられるのではないですか?」
「即刻でも王太子の座を奪えないのが辛いところですな……」
大臣たちの言葉が胸に鉛のようにのしかかる。
まさにそうだ。
彼らの言葉通り、リガードには何を言っても無駄なのだと悟ることになった。
昨夜、あれほど「マリーを今度連れてきたらただではすまん」と言っていたにも関わらず……。
ああ、なんと辛いことか。
王妃は早々にリガードに見切りをつけた。
『あの子には元々王としての素質がなかっただけですわ。ならば、縁を切って断罪するしかありませんでしょう? 幸い出来の良い第二王子がいるのですから、リガードにこだわる必要がございませんもの』――と。
我が子をあそこまでばっさり切り捨てるほど、王妃は怒っていたのだ。
ダリアを蔑ろにし、殺すとまで言い。
どこぞの男爵家の娘に熱を出して尻を追いかけ回す様は、猿か犬の畜生のようだ。
いっそ、最早マリーという女を処さねばならないのではないかと考え始める。
リガードもあの女と関わる前は、まだ、まともだった方なのだ。
あの毒婦の所為で我が国は、混乱に陥ろうとしている。
そう思わずにいられなかった……。
「いざという時は影を使い、二人諸共……」――そう呟く。
もはやワシの目に、愛しい息子の姿は映らない。
そこにいるのは――国を傾ける大罪人。
「リガード……お前は、王家の血を継ぐ資格などない」




