第29話 大々的に知らせられた婚約破棄と、新しい婚約
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翌日――王国に激震が走った。
陛下から国民に対し、ダリアとリガードが三ヶ月前に婚約が白紙になっている事を告げられたのである。
しかも、婚約破棄は王族有責だったと言う事も、激震のひとつだった。
これに国民は驚きを隠せなかったが、巷に流れるリガードの悪評を聞くに、さもありなん……と言う流れもあった。
しかし、加えてもうひとつ良い知らせがあったのだ。
他国の王族である俺と、ダリアが婚約したことが加えて発表された。
これにより、他国の王族である俺とダリアの婚約で、国の結びつきが一層強くなるとして、国民は安堵したのは言うまでもない。
学園でも「婚約おめでとうございます」と祝われる俺達は、念願かなっての手を繋いでの登校ができるようになった。
誰からも祝福を受ける俺とダリアに対し、それを睨みつけるリガードとマリー。
大失敗の学園祭の事もあり、嬉しいニュースに誰もが飛びついた。
そう――学園祭は結果として、最悪な形で終わった。
リガードが生徒会の仕事をせず他の者達に任せっきりで、マリーとの時間を優先したというのが専らの噂だ。
事実ではあるが、「本人が全く仕事ができない」……というオチがある。
そこで、俺とダリアは、再度自分たちの知っているゲームの内容を語り合う。
「既に二人からは決別されているので、マリーはリガード狙いで間違いないだろう。寧ろそれしか今は残っていない……と言うべきだな」
「それであっていると思います」
それならば、仕掛けてくるのは、ダンスパーティでの断罪しか最早残っていないと判断した俺は、ダリアを少し安心させる為にこんな提案をした。
「冬のダンスパーティまで後二ヶ月か。ドレスは俺から是非に」
「貴方からのドレスしか着ないわ」
俺の返答に対し、ダリアは笑顔で答える。
無論三ヶ月も前から、既にドレス作成には手をつけているのもダリアは知っていた。
――お互いの色を纏いダンスパーティに出る。
そこで断罪されるだろうが、それでも悪役らしく立ち振る舞ってやろうと語り合う。
なにせ悪役を演じるのはこれで最後だ。
しっかりとリガードと毒婦マリーを断罪出来るかどうかにも掛かってくる。
失敗の許されない断罪劇。
「皆さん、最初はわたくしが断罪されるのを見てどう思うかしら?」
「あのアホは何をしているんだと呆れるだろうさ」
「でしょうね」
「そこに颯爽と俺が現れる。それだけでひとつの大きな劇のようなものだろう?」
「ふふふ! そうね。わたくし、ちゃんと悪役令嬢を演じますわ」
「俺は、悪の仮面をかぶり――悪役王子をしっかり演じよう」
お互いに楽しみにしつつも、こうしてリラックスして力を抜く。
失敗しないための大切なことだ。
すると、ダリアはこんな事を口にしだした。
「でも、わたくしがこの国にいられるのも後二ヶ月なんですね」
しみじみと語るダリアにアルカは「不安か?」と問いかける。
他国に嫁ぐと言うのはなかなかに大変だった……と言うのは母の言葉だ。
幼い頃、母は王族の暮らしがとても苦痛だったと聞いている。
故に、外に飛び出し働いているわけだが――。
「不安はありますが、エルフ王国で貴方の妻になる方が楽しみですわ」
嬉しげに語るダリアに、アルカも笑顔で接し、木枯らしが吹く外を見つめる。
ダンスパーティまでの間は、あの二人は恐らくじっとしているだろうからと、学園生活を送っていくのだが――そうは上手く行かない。
「嫌だわ。リガード様と言う者がありながら、影でコソコソと逢引して」
「公爵家の恥さらしだよなぁ‼」
そう喚き散らすリガードとマリー。
それを本気で聞く者たちはそうそういない。
いるとしたらリガード派閥の家くらいだろうが、皆泥舟に乗るのは嫌なのか、愛想笑いをして去っていく。
それがまた、二人の癪に障るらしく、机や壁をドン‼ と殴り、思い通りに事が行かないことに腹を立てていた。
だが、学生からすれば二人に対して怒りが湧いているのを馬鹿どもは知らない。
学園祭を台無しにして、貴族としてのなんたるかを聞いて育っている生徒達にしてみれば、二人の所為で学園祭が大失敗に終わったのだ。
劇はなんとか……形にはなっていたが、それでも何とか。
その他は、最早ボロボロの状態で、家族を呼べる状態ではなかった。
それを何度二人に進言しても、二人は学園祭を強行。
結果――国王が学園長に呼び出されると言う前代未聞の結末となったのは最近の事だが、最早そんな事もリガードの頭にはないらしい。
国王も、最早リガードには匙を投げたらしく、今後の進退はわからない。
だが、いい方向には行かないだろうと言うのは――公爵様のお言葉だ。
「やれやれ、あの馬鹿二人が泥舟に乗って後は沈むだけなんだがな」
「全くですわね。でもわたくしにはこの先、良いこともございますわ。不安はありますが、エルフ王国で貴方の妻になる方が楽しみですもの」
ダリアの言葉に、俺は微笑みながら彼女の手を握る。
「ならば安心だ。俺が隣にいる限り、君を孤独にはさせない」
二人の掌の温もりが重なり合い、外の冷たい木枯らしなど、まるで届かない。
──その幸福の時間が、陛下の口から、新たな波紋を呼び起こすことなど……知る由もなかった。




