第2話 入学式後のクラスでのハプニング
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Sクラスに入ると、留学生である俺は従者のリオンと共に攻略対象及び、ダリアのいる教室へと入り挨拶となる。
最初は貴族たちからの挨拶となり、次第に貴族の地位が高くなっていくごとに挨拶……というやつだ。
攻略対象であり、王国師団長の息子……ドルフが挨拶した後。
攻略対象である、宰相の息子であり次期宰相候補のスノル。
次に悪役令嬢であるダリアが挨拶し、そして、この国の王太子――リガードが挨拶をするが……。
一番最後に挨拶するのが、俺というのが……また悪役らしいと言えば悪役らしい。
「場所は秘密情報な為、伏せますが、この国に留学に来た王族がひとり、アルカ・デバディスです。従者のリオンと共に、一年間留学しますが、よろしくお願いします」
――最初は警戒されない程度に。
俺がエルフ王国から留学したことを知るのは、国王と学園長のみ。後は……転生者のヒロインであるマリーだけだ。
自分がエルフ王国の王太子であることを、俺の許可無しで口に出せば胸が痛み、もがき苦しむという契約書を交わしている。
――ヒロインがもがくのが楽しみだ。
挨拶が終わるとチャイムが鳴り、とりあえず授業は終わりだ。
席に戻る中、絡んできたのは無論リガードだった。
「おい、貴様」
そう声を掛けられたが、名を呼ばれていないので無視して隣の席がダリアという素晴らしい席に戻ろうとしたのだが――。
ガッと肩を掴んできたのはドルフだった。
……まるで下っ端のどこぞのヤクザだな。
俺がスン……と表情を落としたのが見えたのだろう、ドルフは一瞬腕が緩み、俺はその腕を払い落とした。
「なんだ?」
「本来王族が最後に挨拶するものだ。それを……留学生だかなんだか知らないが、祖国を口に出せないどうせ卑しい国の王太子だろう」
「ほう? それは聞き捨てならないな。話を全く聞いていない耳の悪い王太子と見える。この国の未来は暗いな」
「なんだと!」
「お辞めなさい! 彼のご挨拶にありましたでしょう? 秘密情報な為、祖国の名を出せないと」
そう声を掛けて駆けつけてきたのはダリアだった。
それだけで俺の気持ちは天にも登る勢いだったが、それは直ぐに地獄へと突き落とされる。
「女は黙ってろ! 消え失せろ!」
「きゃあ!」
そう言って自分の、現在は婚約者であるダリアを突き飛ばしたのだ。
これには教室も騒然とし、俺は急ぎ床に座り込んだダリアへと駆け寄った。
「大丈夫か?」
「ええ……ちょっと足を捻りましたが……」
「……っ! 女性に、しかも自分の婚約者を普通押し飛ばすのか? この国の王太子ってのは野蛮だな」
「なに?」
「祖国にも、〝次期国王となる男はどうやら骨の髄まで愚か者〟という事を伝えておこう。自分の婚約者に暴言を吐いて暴力を振るう〝暴君〟ともな」
「貴様……っ‼ 無礼である‼ 他国の王族でないなら斬り伏せているところだ!」
そう声を荒げた王太子に対し、俺は「おー喚け喚け。犬の遠吠えだな」と嘲笑い、周囲がリガードを止めてる最中、Sクラスにマリーが入ってくる。
途端、リガード達は攻略対象。
彼らには魅力的に見えるらしいこの世界のヒロイン、マリーを見つめた為、俺は颯爽とダリアを抱き上げ、教室を後にする。
「わたくしが至らないばかりに……申し訳ございません」
「アイツは放っておけ、馬鹿は死んでも治らん」
厳しいようだが、アイツが改心することはないのだ。
死ぬまで、それはないだろう。
まぁ、乙女ゲームの世界でヌルゲーと言われる世界。
死ぬことはないだろうがな。
涙を我慢するダリアに対し、保健室に着くとダリアをベッドに座らせ、カーテンで周囲に見えないようにする。
「……何時までもそんな顔するな。お前が傷つくことねーだろ? 突き飛ばしたのは阿呆が悪いんだ」
「そう……ですが」
「アンタはそうやって、何時までも王太子の尻拭いをしていくつもりか?」
「……それが、婚約者に課せられた義務のようなものですから」
「はっ! この国は根本から腐ってんな!」
そう苛立ちを隠せず声を大にして言うと、回復魔法を使いダリアの痛めた足を治療する。
簡単な回復魔法だが、俺は魔法の力はかなり備わっているらしく、問題なく回復はできたのでホッと安堵した。
「貴方様は一体……白魔法なんて……まさか!」
「おっと、そこから先は口にするなよ」
――そう言ってウインク。
白魔法が使えるのは、この世界では【エルフ族の特権】というのがあるのだ。
つまり、俺はダリアに口ではなく、魔法で自分の身分を明かしたのだ。
驚き固まるダリアに、歯を見せてニカッと笑うと、彼女は暫し治療された足を見つめつつ、痛みがないことを確認して「凄い……」と呟いた。
「ま、俺はこの程度の力しかないがな」
「いえ、十分かと思いますわ……。リガード様ったら卑しい国だなんて……とんでもない。いざ彼の国と戦争なんかになろうものなら……人間国等容易く滅ぼされるでしょうね」
「まぁ、赤子の首をひねるよりは簡単かもな」
溜息混じりに事実を伝える。
この世界は、エルフ王国の精霊の力を利用して人間国は成り立っている。
つまり、エルフ王国の方が立場が上なのだ。
国を明かしてないにしても、他国の王族を蔑ろにするこの国の王太子では、この国の未来はないだろう。
このあたりも含め、俺はこの国の国王及び、自国の祖父に伝える義務もあった。
すると――ダリアが小声で小さく呟いた。
「……貴方は、悪役には見えませんわね」
「違うな。俺は悪役だからこそ、お前を守るんだよ」
思わぬ言葉だったのだろう。
ダリアは目を見開き、俺を見つめていた――。
「え? 何故貴方が悪役なの?」
「じゃあ、なんで嬢ちゃんは自分が悪役って言ってんだ? 理由言ってみろよ」
口を抑えたダリアに、俺はニヤリと笑う。
一瞬怯むダリアに対し、俺は小さく彼女に質問を投げかけた。
「……アンタ、前世って信じるか?」
その言葉にハッとしたダリア。
――ああ、こいつは間違いねぇなと悟る。
「まさか! 貴方も転生者なの⁉」
「おっと、学校ではどこに耳や目があるか分からねぇからな? 放課後、家に来い」
どうやら、彼女を呼び出して色々聞かねばならない事が山ほどあるようだ。
――この分だと、恐らく俺とダリア、そしてマリーの三人が〝転生者〟。
何がどうして、こうなったのかは分からないが……この先のことを考えると、色々と面倒くさい事になりそうだ。
少なくとも、ヒロインであるマリーにだけは、俺が転生者であることは伏せておいたほうが良いだろう。
二人教室に戻り、後は帰宅するだけという事で既に帰宅準備をしている生徒たちの中、既に王太子達はいなかった。
自分の婚約者の怪我すら気にも留めないのか。
俺とダリアは視線を交わせて小さく頷くと、俺の乗って来ている馬車に乗り込み屋敷へと帰っていく。
そこで、転生者同士の会話――お互いの認識のすり合わせをする訳だ。
馬車の中で彼女と視線を合わせた瞬間、ある事を確信する。
俺たちが手を組まなければ、この国は確実に終わる。
……だがそれ以上に。
俺は必ず、悪役令嬢を幸せにしてやる。




