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悪役王子は悪役令嬢を愛したい  作者: 寿明結未


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第26話(閑話)堕ちていく俺達は、足掻けるか……?②

ブックマーク、評価、感想、誤字脱字報告ありがとうございます。

 ――ドルフSide――


 何故、俺は一週間も学園を休んでいるスノルの下へ来たのかわからない。

 だが、俺もまた一週間学園を休んでいた。

 脳裏に浮かぶのは、ダリアとの会話だ。



「リガードに仕える者たちは低俗ばかり……だからこそ……幽閉されたのかしら?」



 嘲笑うダリアに俺は酷いことを口走った――。



「貴様が言うことさえ聞いていれば! 操り人形のままでいてくれれば良かったものを‼ 全ては貴様の所為だ‼」

「あら、わたくしが言うことを聞いておけばなんですの? 丸く収まったとでも? そんな筈あるはずないじゃない。国王陛下が黙っていないし、公爵家も黙っていないわよ?」

「そんな筈はない! 貴様さえ黙ってリガード様の言うことを聞いていれば、」

「わたくしを『殺す』と皆さんの前で口にしたのですから、公爵家は王家に対して許さないでしょう? 娘を殺すと言われて、はいそうですか。お好きなように……という親がいるとでも思いまして? だとしたら貴方がたの頭、どうなってますの?」



 俺を強気に見下すダリアに、流石の俺もそこまでのことをリガードが言ったとは知らなかった。

 更に扇を開き、床に這いつくばる俺に声を掛けた。



「ああ、頭がおかしいから幽閉されたのね?」

「リガード様に対してなんてことを……婚約者でも許されないぞ!」

「婚約者でも……ねぇ?」



 意味深に口にするダリアに、俺は勝ち誇った顔をしていたけれど……次に飛び出した言葉は、耳を塞ぎたくなるような言葉だった。



「婚約者がいるのに、他の女を城に呼んで朝から夜まで猿のように盛るのは……許されることかしらね?」

「は? え、あ、え⁉ まさか……」

「下手をしたら今頃マリーさんのお腹には……いいえ、これ以上は口にしてはいけないわね?」



 クスクス笑うダリアに、「そんなはずはない! マリーは俺を愛してくれている!」と口にした俺だったが、それを打ち砕くように更に口にする。



「御冗談でしょう? マリーはリガードだけではなく、スノルとも関係を持ってますのよ?」



 そう事実を言われ呆然とする。

 絶望……というのがぴったり来る。

 まさに、心に鉛が乗ったかのように身体が重くなったのを感じた……。



「貴方だけ……なんて言葉、あの方にとっては、何よりも安っぽい言葉ですわね」

「嘘……だ。だってマリーは……俺だけを愛していると……だって、そうじゃないと俺は」

「夢を見るのは勝手ですけれど、貴方のお父上は、貴方を修道院に入れると言っていたそうですわよ? 毒婦に侵された長男は消毒だと言ってね?」

「う、嘘だ……」

「お父様から聞いた話ですもの、事実では?」



 溜息混じりに、お前のことなどどうでもいいとばかりに口にされ、俺は顔面蒼白になって震え始めた。

 額には酷い汗……。

 今頃になって怖くなった。

 輝かしい未来なんて、マリーといることで潰えているというのに気づいたのだ。



「毒婦マリーと繋がっている者たちは全員……粛清するそうですわよ?」

「粛清……」

「宰相の息子、スノルには最早次期宰相の座は訪れないそうですし、貴方は貴方で、修道院行きでしょう?」

「あ、はっ、う、あああ……」

「わたくしが我慢すればいいだけの話? 違いますわ。あなた方がいつまでも目を覚まさないからリガードは幽閉され、スノルはお父様に見放され孤立し、再度申し上げてあげますけれど――ドルフ、貴方に待っているのは修道院行きですわ」



 追い打ちを掛けたダリアに、俺はガタガタと震え上がっている。

 その様子がたまらなく面白いのか、悪役らしく声を高らかに笑うと――。



「自滅していくといいですわ。罪を背負ってね?」



 そう語って去っていったダリア……。

 だからこそ、今だからこそ、スノルと話がしたかった。

 同じ――被害者として。



「お前と色々確認を取りながら話したい。今後の事についてもだ」



 そう口にした俺に、スノルは強く頷き語り合うことになった。

 それは、マリーを裏切ることになるのか、リガードを見捨てることになるのかはわからない。だが二人は真剣に、未来について語り始めたのだった――。


 お互い恥も忍んで、マリーのこと、そしてリガード様のことを語り合った。

 そして、助言をくれたお互いの相手――アルカ様とダリア様についても。



「きっとあのお二人は、俺達を軌道修正させようとしてくれたんだ……」

「マリーと一緒にいると……最早破滅しかないと?」

「恐らく……。そうでないと、今まで散々な事をしてきた俺達を、気遣ってはくれないだろう?」

「確かに……」



 だとしたら、アルカ様の王太子としての器の大きさ。

 そして、ダリア様の心の広さを感じ、自分たちがいかにちっぽけで情けなかったのかを知ることが出来た……。



「全てを確認し合った今、スノルと俺はただの仲間ではない――未来を共に見据える盟友だ」



 しかし、その先に待つのは、一度は深く愛した……手強い毒婦マリーの存在。

 彼女が何を企み、誰を味方に引き込むのか。

 すべてを知った上で、私たちは次の一手を打たねばならない。

 覚悟を固めた二人の視線の先には、まだ誰も知らぬ学園の嵐が、静かに渦巻いていた――。

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