第24話 狙っていた獲物ではないけれど、事実を教えますわ
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――ダリアSide――
わたくしはマリーとのある意味での決着をつけようと思っていた。
アルカの従者であるリオンとともに歩いていると、後ろから声を掛けられ、振り向いた途端伸びてきた腕をリオンが掴んで叩きつける。
「我が主の大事なお方に、何か用でしょうか?」
冷静に聞くリオンに対し、王室騎士団師団長を父に持つドルフがキレ散らかすが――リオンは努めて冷静に彼を押さえつけている。
「貴方の言い分は俺には通用しません。俺は王族を守るためにいる、貴方と同じ騎士団長の息子ではありますが、随分と粗野な貴様とは違うようだ」
「貴様と俺が同じだと⁉」
「この国の騎士の品格も地に落ちましたね」
リオンの言葉にドルフは驚いたものの、力の差は歴然としていてびくともしないドルフに、わたくしはクスクスと悪役らしく笑う。
「リガードに仕える者たちは低俗ばかり……だからこそ……幽閉されたのかしら?」
嘲笑うダリアにドルフは――。
「貴様が言うことさえ聞いていれば! 操り人形のままでいてくれれば良かったものを‼ 全ては貴様の所為だ‼」
「あら、わたくしが言うことを聞いておけばなんですの? 丸く収まったとでも? そんな筈あるはずないじゃない。国王陛下が黙っていないし、公爵家も黙っていないわよ?」
「そんな筈はない! 貴様さえ黙ってリガード様の言うことを聞いていれば、」
「わたくしを『殺す』と皆さんの前で口にしたのですから、公爵家は王家に対して許さないでしょう? 娘を殺すと言われて、はいそうですか。お好きなように……という親がいるとでも思いまして? だとしたら貴方がたの頭、どうなってますの?」
ドルフを見下すわたくしに、流石の彼もそこまでのことをリガードが言ったとは知らなかったようですわね。
更に扇を開き、悪役の仮面を被って床に這いつくばるドルフに声を掛けた。
「ああ、頭が可笑しいから幽閉されたのね?」
「リガード様に対してなんてことを……婚約者でも許されないぞ!」
「婚約者でも……ねぇ?」
と意味深に口にするわたくしに、ドルフは勝ち誇った顔をしていたけれど、可哀想に……事実を伝えないといけないみたいね?
「婚約者がいるのに、他の女を城に呼んで朝から夜まで猿のように盛るのは……許されることかしらね?」
「は? え、あ、え⁉ まさか……」
「下手をしたら今頃マリーさんのお腹には……いいえ、これ以上は口にしてはいけないわね?」
クスクス笑うわたくしに、「そんなはずはない! マリーは俺を愛してくれている!」と口にするドルフだったが、それを打ち砕くように更に口にする。
「御冗談でしょう? マリーはリガードだけではなく、スノルとも関係を持ってますのよ?」
そう事実を言われ呆然とするドルフ。
ああ、その絶望に染まった顔……たまりませんわね?
ふふふ。悪役とはこれも楽しいものなのかしら?
「貴方だけ……なんて言葉、あの方にとっては、何よりも安っぽい言葉ですわね」
「嘘……だ。だってマリーは……俺だけを愛していると……だって、そうじゃないと俺は」
「夢を見るのは勝手ですけれど、貴方のお父上は、貴方を修道院に入れると言っていたそうですわよ? 毒婦に侵された長男は消毒だと言ってね?」
「う、嘘だ……」
「お父様から聞いた話ですもの、事実では?」
溜息混じりに、お前のことなどどうでもいいとばかりに口にすると、ドルフは顔面蒼白になって震え始めましたわ。
額には酷い汗……。
あらあら? 今頃になって怖くなったのかしら?
輝かしい未来なんて、毒婦マリーといることで潰えているというのに。
「毒婦マリーと繋がっている者たちは全員……粛清するそうですわよ?」
「粛清……」
「宰相の息子、スノルには最早次期宰相の座は訪れないそうですし、貴方は貴方で、修道院行きでしょう?」
「あ、はっ、う、あああ……」
「わたくしが我慢すればいいだけの話? 違いますわ。あなた方が目をいつまでも覚まさないからリガードは幽閉され、スノルはお父様に見放され孤立し、再度申し上げてあげますけれど――ドルフ、貴方に待っているのは修道院行きですわ」
追い打ちを掛けたわたくしに、ドルフはガタガタと震え上がっている。
その様子がたまらなく面白くて、悪役らしく声を高らかに笑うと――。
「自滅していくといいですわ。罪を背負ってね?」
わたくしが言うとリオンはドルフを床に叩きつけて手を離し、傍に立つ。
床に這いつくばって、わたくしに手を必死に伸ばすドルフに最早価値など無い。
颯爽と去っていくわたくしに縋る手を伸ばしても、到底手を取ってもらえるはずもなく、ドルフは立ち上がり走り去っていく。
その様子をわたくしはくすりと笑って見つめ、「どうなるのか楽しみですわね」と口にする。
「マリーではなく、ドルフの方から崩せましたね」というリオンに「上々ですわ」と機嫌良く伝えたわたくしは、颯爽と去っていくのであった。
毒婦の手にかかる者たちは、自らの愚かさで自滅していく――。
それを目の前で見届けるのも、悪役令嬢としての楽しみのひとつ。
――歩む私の足取りは、今日も確かに、勝利の香りに満ちている。




