第22話 女帝気取りの毒婦の取り巻きを剥がす算段をつける
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それから数日も経てば、アルカとダリアの親密さに誰もが「婚約は白紙になったんだな」と知るようになる。
さらに「王太子はマリーという毒婦に落ちてから駄目になった」という噂が立つようになった。
ダリアはその噂について扇を広げてくすりと笑うのみにとどめ、俺はそんなダリアを愛おしくエスコートするさまが目撃される。
無論、意識してそうしているし、お互いがリガードのときとは違う「なくてはならない存在同士」という特別感を出したのは言うまでもない。
新学期が始まれば、後は文化祭とダンスパーティーくらいしか残っていない。
俺のこの人間国での留学期間が終わることもあり、その日の学校終わりに俺はダリアを家に呼び、会話をすることになる。
「冬のダンスパーティーが終われば留学が終わる。そうなった場合、その頃には婚約しているダリアを連れてエルフ王国に帰りたいと思っている」
ここに来て、初めてダリアに「一緒にエルフ王国に来て欲しい」と頼んだのだ。
しかも、学校を退学してまで――。
それについては申し訳ないと思う反面、出来れば俺を選んでほしいとも思っているが、彼女の意思を尊重する気でいた。
「私は学園を最後まででなくて宜しいので?」
「学園では顔つなぎというのが殆どだろう? 意味がないと俺は思う」
「では、私はその時、学園を退学し、アルカについていきますわ」
「そんなにすんなり決めて良いのか?」
「あら、そうしてほしいと顔に書いてありますよ?」
くすくす笑いつつ彼女は口にし、俺は眉を下げて頭を掻きつつ、自分もまだまだ未熟者だと改めて知ることが出来た。
ダリアに関しては、つい顔に出がちだ。
これからのことを考えたら、もっと気を引き締めねばならないのに――。
「このことに関しては、君のお父上には既に書面で伝えているが、概ね了承してもらえたところだ」
そう告げると、彼女は嬉しそうに微笑むばかりで――。
「俺でも妻となる君の両親には気を使うんだぞ」という俺に、彼女はくすくす笑いつつ「とても大事にされているようねと……母から言われましたわ」と微笑む。
全くもって、惚れた女には敵わない。
どこまで言っても、俺はダリアには勝てそうにないなと自覚した瞬間でもあった。
そこから、俺達の焦点は毒婦マリーへと移る。
学園でのマリーは独裁者のような動きをしているものの、皆からは冷ややかな目で見られており、それらをダリアのせいだと信じて疑わない。
自分で蒔いている種だというのに、自分で破滅の道を突き進んでいることにも気づかないのだ。
ダリアが自分に対して嫌がらせをしてきたといっても、常にアルカがそばにいるため、それこそ虚偽であると誰もが知っていた。
無論、一部を除いては――。
その一部が邪魔だった。
王太子、リガードの隣にはいつも、次期宰相であるスノル。
そして王国師団長の息子ドルフがついていた。
その二人も手籠めにしているマリーは、まさに女帝という有り様だったが、皆の目は冷ややかだ。
そして、その未来あったスノルとドルフの未来もまた、マリーによって奪われつつある。
そのことを、少し理解させる必要があるなと俺はダリアに語った。
「どう理解させるおつもりです?」
「まずは、頭の切れる方だったスノルから落としていこう」
「スノルはリガードを王太子として、とても評価していましたが、マリーの手に落ちてからは両者駄目になりましたね。いえ、さらに輪をかけて駄目になったという方が正しいでしょうか?」
そう語るダリアに、アルカは少し考え込む。
毒婦マリーと出会う前のリガードの話を精霊を使い聞いたが、今よりは少しマシな程度であったのは間違いない。
それならば――……。
「他国の王族から見て、リガードは王太子とは認められない行動だな……というのを、全面に出してから突き落としてやろう」
ニヤリと黒い笑みを浮かべると、ダリアは「私は必要ですか?」と聞いてきた。
「君が一人になれば、絶好のチャンスと思ってマリーが動く、それは阻止せねばならない」
それだけは絶対に許せないことだと再度伝えると、彼女は暫く考え込んでからくすりと笑い、次のような提案をしてきたのだ。
「ならば、リオンを借りても?」
まさかの反応で、思わず目を見開く。
「私も少々、言われっぱなしは気に入りませんの。悪役らしくマリーを口で倒したいですわね」
微笑むダリアに、俺は悪役らしく笑い「好きにするといい。だが助けが必要な時はいつでも駆けつけるぞ」と約束する。
こうして、次の互いのターゲットは決まった。
アルカは次期宰相候補だったスノルを。
ダリアはマリーを。
しかし、これが思いがけないことになるとは、誰も想像していなかったのだが――。
彼女が毒婦マリーに立ち向かおうとする姿を見ていると、胸が熱くなる。
悪役令嬢の仮面の奥にある真っ直ぐな勇気を知っているからこそ、俺は守りたくなる。俺たちの絆で、この学園に新たな秩序を刻み込む。
――さて、誰が笑い、誰が泣くのか、楽しみだな。
しかし、ダリアは予想外の動きをすることになる。
何故ならば……。




