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悪役王子は悪役令嬢を愛したい  作者: 寿明結未


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第21話 空白の権力者の座に居座るは――

ブックマーク、評価、感想、誤字脱字報告ありがとうございます。

 夏季休暇が終わり、新学期が始まる頃、学園では王太子が幽閉されたことで持ちきりだった。そう仕向けたのは、祖父と国王による話し合いが実は行われていたからだが――。

 新学期、王太子がいないことで安堵感を覚えるダリアをエスコートする形で過ごす俺に、周囲の生徒たちも「ダリア様と王太子の婚約は白紙になったのでは?」と噂が上がった。

 ――それは水面の揺れのように学園中に広がるのに、そう時間は掛からなかった。

 ところがだ。

 その話を聞きつけた毒婦マリーがこう言い出したのだ。



「そうでないとアタシが王妃になれないんだから、当たり前じゃない」



 この反応に、全員が微妙な顔をしているのに、毒婦は気づきもしない。

 しかし、ある生徒が余計な事をマリーに言ってしまったのだ。



「ダリア様と婚約していたからこそ、王太子になることができたんですよ……。ダリア様との婚約が白紙になったとしたら、王太子の座は誰になるんだろう……」

「え⁉」

「え? マリーさんリガード様から何も……?」

「き、いてないわ。そんな事」

「そ、そうなんですね」

「~~あの屑‼ 王太子じゃなかったら本当にただの屑じゃん‼」




 と、口にしたマリーに全員がドン引きする姿を二人で目撃してしまった。

 まさか自分が愛した男を〝屑〟と罵る事が平然と出来るとは驚きだ。

 最初こそハーレムルートを選んでいただろうし、今もそれは狙っているのだろうが。

 果たして上手く行くのかも定かではなくなってきている。



「随分と自分が惚れた相手を見下すんだな」

「本当に欲しいと仰るなら是非。わたくしは邪魔など一切致しませんわ」



 そうダリアもと口にしたことで、彼女が王太子を既に見放している……という事が決定的になる。

 周囲も「ダリア様は良く我慢しておられたから」とか「見捨てられるようなことをするあの方が悪かった」等と、ダリア自身の事を気にかけてくれる発言が多かった。


 そんなダリアの声を察知したのか、物凄い化け物のような顔と速度で俺達の元に駆けつけてくる毒婦マリー。

 すると、まるで縋るようにダリアに頼み事を言ってきたのだ。



「――アンタと王太子の婚約が白紙に戻るのは困るのよ!」



 叫ぶマリーに対して、ダリアはと言うと……扇で顔を隠して眉を寄せ、心底うんざりと言う悪役令嬢スタイルで言葉を口にした。



「一体何がお困りになるのかしら? 意味がわからないわね」

「王太子でなくなるのなら、君の夫となるべく婿養子にもなれるだろう? 真実の愛を貫いたらどうだ?」



 俺も悪役ぶりを発揮してみたが、ふるふると震えて俺達を見つめる毒婦は、顔面蒼白で信じられないものを見る目で俺達を指さした。



「アルカ王子……貴方も可笑しいわ……。本当にバグってる……。だって、ゲームではそんな悪役じゃなかったじゃない……。アタシに愛を囁いていたじゃない」



 わけのわからない事を口にし、首を傾げて怪訝な顔を見せる。

 実際、俺は毒婦に愛を囁いたことなど一度もないわけだしな。



「俺が何時、君に愛を囁いたんだ? 夢の話を現実のように語るのは気持ち悪いな」



 と口にして突き放しつつ、自分が異世界転生していることを隠す。

 この場で俺が異世界転生してきたことを知られるのは、これからの動く上で非常に不味いからだ。

 しかし、毒婦マリーは暫く俯いてから、キッとこちらを睨みつけてニヤリと仄暗い笑みを浮かべると――。



「取り敢えず、今王太子の権力はほぼ空席。私がヒロインである以上、次期王妃となるのだから、私こそがこの学園の秩序であり法よ!」


 

 叫ぶマリーに、誰もが困惑する。「は? ヒロイン?」「何を言ってるんだ?」と周囲はコソコソと語り合っては毒婦に睨みつけられていた。

 それならば、学園長と言う存在はどうするのだと言うツッコミを誰かがしていたが、その声に対してマリーは今にも射殺さんばかりに睨みつけ黙らせていた。

 ところが、毒婦の言葉にダリアは扇で顔を隠しつつクスクス笑い始めたのだ。



「まぁ……。随分と崩れやすいそうな権力ですこと」

「確かに。明日には露と消えてそうな権力の席だな」



 そう二人で嘲笑い、毒婦マリーを哀れな者として見ていると、彼女は更に叫んだ。



「今に見てなさいよダリア‼」



 しかし、周囲の視線は冷たく、王太子は幽閉され、権力の座も空席。

 そこを毒婦マリーが乗っ取ろうと何しようと勝手だが、自分が法等と言われては、こちらも牙を折るべく動くことになる。無論……容赦はしない。


 

「まったく、私という存在の重要性を誰も理解しないなんて……! この国の未来は、私の美しさと才覚に委ねられるべきなのに‼」



 毒婦の高慢な吐息は、怒りと苛立ちに震えていた。

 無論心のなかでは『哀れだな。俺の手で奈落へ落としてやる日を楽しみにしている』と黒い笑みを浮かべている訳だが――。

 だが、俺達はどうすることも〝今は〟しない。

 一方で、俺とダリアは静かに微笑み合い、学園中の噂と空席の王太子の力も、自分たちの結束を揺るがすことはないと実感していた。


 


「どうやら、真実の愛と悪役の仮面は、思ったより強力な組み合わせらしいわね……」

「そのようだな。アイツのお手並みを拝見しようか」



 毒婦マリーの自己陶酔と怒りは、次なる学園生活でさらに膨れ上がる。

 果たして、学園の秩序は、誰の手に握られるのか――。


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