第16話(閑話)マリーの為の王太子にならねば……
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――リガード王太子Side――
その頃、人間国の城では俺の独裁政権のような日常が続いていた。
両親は俺の言うことを聞いてくれないのなら、俺が好き勝手しても良いだろう!
そう思い、父である国王が苦言しても、マリーを城に招き入れて生活を始めたのだ。
マリーは自分が次の王妃と思った態度を取り、俺はその様子を満足気に見ていた。
それなのに、メイドたちは困惑した様子で俺たちの元から去っていく。
俺を守るためにいるはずの騎士すら、持ち場を離れていったのだ。
まぁ、マリーには、俺が国王になった暁には王妃にすると言っているが、彼女では仕事は出来ないだろう。
だからこそ、側妃にして可愛がろうと思っている。
無論、王妃よりも良い待遇でだが。
城に滞在するようになってから、毎日がベッドの上で密な時間を過ごしている。
父が何を言おうと、最早俺には聞く耳なんてなかった。
ところが――。
「ねぇリガード? 他のスノルやドルフとは会えないの?」
「スノルやドルフと会いたいのか?」
「だって、ずっと貴方に独り占めされてたら、彼らがヤキモチ焼きそうで~」
「ヤキモチならいくらでも焼かせておけ。夏季休暇の間だけは俺だけのマリーがいい」
「もう……。確かにお城での生活は夢みたいだけど!」
「そうだろうそうだろう?」
「ドレスも宝石もこんなに沢山! まさに夢心地よ♡」
そう語るマリーには、沢山のドレスと宝石を送った。
ダリアには一度たりとも送ったことのない物ばかりだ。
それらに身を包み、楽な体勢で二人ソファーに座って高級な果物を食べる。
実に優雅だ。
勝手に仕事をしている父がいればこそ……。
その父の立場に、仕事でしか用のないダリアを打ち込めば、こんな甘い生活が出来るのだと、優越感に浸っていると――部屋をノックする音が聞こえた。
「誰だ」
「俺です。兄上にお話がございます」
「ッチ!」
「誰?」
「側妃の子供だ……。貧相野郎だが……入れ」
「失礼致します」
俺がどうでもいいとばかりに入る許可を出すと、俺にはついていない騎士を連れて第二王子――ガレリオが入ってきた。
「父王から、再三注意が言っていると聞いていたのですが……。この様子だと聞いていませんね?」
「それがどうした。下賤な側妃から生まれたお前にはわかるまい」
鼻で笑って言ってやったが、奴は顔色ひとつ変えずマリーを見つめた。
そして――口に決して今出してはならない言葉を口にしたのだ。
「その下賤な側妃とやらにと……。そちらのお嬢さんを言っているそうですが?」
「え?」
「煩い‼ 去れ‼」
そう言うと果物を乗せていた皿をガレリオに投げつけると、騎士団が間に入り奴に当たることなく割れた。
それでもガレリオは動くことなく、まるで下賤な者を見る目で俺を見てくる。
「王太子でいられるのはあと僅かだそうですよ」
「嘘をつくな! 貴様の顔等、二度と見たくないわ!」
「私もですよ。貴方が兄であることが人生の汚点です」
「なっ!」
「失礼致します」
そういうと、言うだけ言って去って行ったガレリオに憤っていると、服を引っ張られそっちに意識が行く。そこには怒りの形相のマリーが……。
「側妃ってどういう事? 王妃ではないの?」
「そ、それは……。マリーは仕事なんてしたくないだろう?」
「仕事しないから、王妃にはなれないわけ?」
「それは……」
「それなら、ダリアを側妃にして仕事させればいいじゃん。アタシは王妃。王妃になれないなら貴方を捨てるわ」
「なんだって⁉」
驚き声を上げると、頬を膨らませて「だって、そうじゃないなら貴方といる意味がないもの」と言われショックを受けた。
そうだとも、マリーのための王太子だ。ダリアを側妃にしてでも後ろ盾を持ち、国王になるのが先決か!
しかし……公爵家は婚約破棄を申し出ていると聞く。
そうなったら、俺の王太子としての立場自体が……っ!
「確かにマリーを王妃にしたい気持ちは、俺は誰よりも強いと思っている。君の言葉で決心を固めたぞ」
「本当⁉」
「だが、その為にはダリアとの婚約破棄するとしても、あちら側有責にしなくてはならない……。その為には色々と準備が必要だ」
「既に色々意地悪されているのに……まだ我慢が必要なの……?」
そう言って涙を溜めるマリーをぎゅっと抱きしめ、俺は「もう少し証言だけじゃなく証拠がいる」と告げた。
「いつもの証言ばかりでは足りない……」
「こんなにつらい目に遭っているのに……」
そう言って泣くマリーを抱きしめるが、マリーから聞くダリアの意地悪さを聞いても、それでは足りないのだと優しく諭しながら教えた。
するとマリーは――。
「決定的な証拠がいるのね……」
「ああ、決定的な証拠だな。それが作られたものであってもなんでもいい。ダリアを陥れるだけの、覆されない決定的な証拠が必要だ」
「わかったわ……」
その眼差しは涙に濡れているはずなのに、どこか――獲物を狩る狩人のようだった。




