第10話 断罪されるリガードと、俺とダリアの絆
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城には、俺とダリア、そして従者のリオンを連れてやってきた。
俺とリオンは顔パスだし、ダリアも今はリガードの婚約者と言う事で顔パスだ。
謁見の間まで到着すると、俺達の名が呼ばれ中に入る。
既にダリアのご両親であろう公爵家の二人が来ていて、軽く会釈をされた。
「この度は、俺の願いを聞き届けて頂きありがとうございます」
「いや、ワシの方こそ全てを理解しきれていない……。情けない話だが、リガードを信じてきた愚か者だと思ってくれて構わない」
「では、そうさせて頂きましょう」
歯に衣着せぬ言葉で告げると、陛下は眉を下げて頭を抱え、怒りの形相を見せるダリアの両親は、そんな陛下を睨みつけている。
最早汗をかいて、無駄な足掻きは出来ないと判断したのだろう。
陛下は全てを受け入れるつもりだと語った。
「では言わせて頂きますが陛下。我が娘ダリアは、幼い頃より誠心誠意王太子の為に頑張ってきました。ところが、よく聞けば暴言に暴力、果てには学園での騒動。娘は顔に傷を負い、手と腕にすらひどい怪我を負っているにも関わらず! 王太子、そして宰相の息子、そして王室騎士団師団長の息子と、アバズレ女が娘を指さして笑っていたそうです。これについて……どうお考えですか?」
「あ、う……そう……だな。」
「ハッキリして頂きたい! 我が公爵家はそのような者を王太子とは認めません。よって、ダリアとの婚約も破棄が妥当だと考えております」
「そ、そうだな……。うむ、まさにそのとおりだと……ワシも思う。ダリア嬢に怪我をさせたと言う知らせをアルカ殿から聞き、王家の影を呼び寄せ聞いた話でも……。とても、王太子としては恥ずかしすぎる行いをしているようだ」
溜め息を吐き、最早リガードの暴走をどうすることも出来ないと判断しているのだろうな。俺はそこに畳み掛けるように口にした。
「ちなみにですが。学園では夏季休暇にダリアがいても構わんと言わんばかりに、図書室で大声で喋り、そのマリーと言う女を夏季休暇の間、城に招くそうですよ」
「何だと⁉」
「あの……馬鹿者っ‼」
「それと、本日学園の中間テストでしたが……。俺とダリアは一位と二位を取りました。ですが、リガード王子たちは最下位です」
「さ……」
最早言葉をなくした国王に、ダリアの両親は「そこまで落ちぶれたのか」と頭を抱えていた。まぁ、抱えたくもなるだろう。
自分の娘がどれだけ頑張ってきたのかを知る両親としては、婚約者であるダリアを蔑ろにしていること。
その上、別の女に熱を上げてる馬鹿と言う風にしか見えないだろうからな。
「ダリアはどうしたい?」
「わたくしは、出来ることなら、いいえ、たとえ出来なくとも、王太子もどきとは婚約を破棄したいと考えております」
「ははは……王太子もどきか……。ダリア嬢にまでそう言われたら、最早あの子に未来はないな……」
「申し訳ありませんが陛下、あの方との未来は最早わたくしにはありません。婚約を破棄したいと願います」
「ああ、無論女遊びをしている王家有責でな?」
そう俺が口添えすると、陛下は「婚約者を大事にせず、他の女を城に招く馬鹿を、最早王太子に添える事は不可能だ」と語り、キッと前を向かれた。
「すぐ王太子を呼べ。今日は早く帰ってこいと強く言ってたのだ。帰ってきているだろう」
「先ほど……帰ってこられましたが……忘れておられるようです」
「直ぐに呼んでこい……」
「か、かしこまりました!」
陛下の怒りは今まさに怒髪天……と言ったところか。
暫くすると着崩した制服のまま現れた王太子に対し、集まっている面々を見て眉を寄せるリガードに、王は声を掛ける。
「リガードよ。聞くが、夏季休暇にダリア以外の女性を城に招くそうだな? しかも夏季休暇中にずっとか?」
「父上、聴いておられたのですか⁉ 実はそうなのです!」
「この戯け者が‼ ダリアが婚約者として収まっているからこそ、貴様が王太子になれたことすら最早忘れているのか‼」
「は? ダリアごときが……ですか?」
「ごとき……とは聞き捨てなりませんな? 我が娘をごときなどと」
「う……」
四面楚歌。
全員の厳しい目と、今まで静かに見守っていたリガードの母である王妃すら、怒りの形相で彼を見つめている。
今まさに、射殺さんばかりだ。
「このままでは公爵家から婚姻は白紙に……と言うのも十分にありえる。無論そうなればいいなと思っているがね。我が公爵家は、君を王太子とは最早認められない」
「公爵家からもそう言われておるのだぞ! お前は婚約者がいながら何をしているんだ!」
「な、何をって……」
「自己本位で相手を傷つけ、盛った猿のように女を食い散らかすような真似……が、王太子だと言うのなら、俺はそんな王太子でなくて良かったと心底思っているが?」
「――アルカ貴様! 無礼だろう!」
「アルカがどこの王国の王太子とだと思っている! 貴様等ひれ伏せ!」
「なっ‼」
王の罵声にリガードは驚いた表情で俺を見ている。
俺はその顔を見て満足気にニヤリと笑った。
すると、ブルブルと震えだし歯を食いしばって睨みつけて来るじゃないか。
「その顔が、俺にひれ伏せと言われた陛下からの返事とみなすが?」
「くっ……」
「陛下。やはり彼には王太子は荷が重たいようだ。自由にしてやってはどうだろうか?」
「じ、自由に?」
「そう、王太子と言う立場を剥奪され、そうだな……。男爵家に婿入りしたらどうだ?」
「ばばばば、馬鹿を言うな!」
「それが、お前と毒婦……っと、マリーの真実の愛の形なのだろう?」
笑顔で言ってのけると、リガードは震えながら違うとも、そうだとも言えず固まった。
いいザマだな……。そのまま落ちぶれる姿を見れるのは気分がいい。
「わたくしも、是非リガード様にはマリー様との真実の愛を貫いてもらいたいですわね。ええ、わたくしの知らない所で」
「ダリア! お前は口出しをするな!」
「当事者ですもの。口出しくらいは致しますわ」
「黙れ! 耳が腐る!」
「婚約者の声を耳が腐るだと⁉」
「我が娘の声で耳が腐るのでしたら、このまま婚約破棄しましょう」
「それがいいですわね」
「ま、待ってくれ。いまのは言葉のあやで……」
覆水盆に返らず――だな。
どんどん自分からボロを出すリガードは、最早何を言ってもボロしかでないだろう。
ここで、俺は話を切るように陛下に進言することにした。
「ところで、リガードはマリーを一ヶ月城に呼ぶとのこと。ああ、俺はそれについては反対も賛成もしない。だが、君がそういう立場を取っているというのは、学園でも周知のことだ。そう、君が浮気している事は既に学園中が知る内容だ」
「な……なんだって……」
「そこで陛下、及び公爵。ひとつ提案なんだが……。夏休みの半分でいい。ダリアを我が祖国に呼びたいと思っている。祖父はきっと大喜びされるだろう」
「わたくしも、是非勉強させて頂きたいと思っておりますわ」
「う、浮気だ! 貴様、俺というものがありながら!」
「お黙りなさいリガード」
「しかし母上、」
「黙れと、言ったのだ」
ここに来て静かだったリガードの母である王妃が、口を開いた。
そして俺とダリアを見つめ、柔らかく微笑むと――。
「良いではありませんか。我が国から彼の国に嫁ぐ者が現れたら、それこそ誉れ」
「は……、はは、うえ?」
「リガードの身代わりくらい、いるでしょう?」
最早母親である王妃にすら見捨てられたリガード。
震えるリガードは滝のように汗を流しつつダリアにすり寄ろうとしたが、それを阻止したのは公爵家のダリアの両親だった。
「娘には近寄らないでいただきたい」
「気持ちの悪い」
「くそっ!」
そんなやり取りがある中で、陛下は暫く考え込むと――。
「良いだろう。ダリア、彼の国で色々と刺激を受け、戻ってくると良い」
「そうさせて頂きますわ」
「ああ、アルカ様。半月で戻ってこれるのでしたら、もう半月は我が領地をご案内致しましょう。この国でも有数の土地ですから、色々と刺激になるかも知れません」
「それは楽しみだ。是非戻ってきたらご連絡し、その後、領地へ案内して頂けると嬉しい」
「貴様たち! 俺を置いて」
「黙れリガード! 貴様はもう下がって良い」
「ち、父上」
「下がれ!」
こうして、リガードは歯を食いしばり去っていった。
俺もダリアも胸がすく思いだ。
二人見つめ合い、柔らかく笑うと互いに安心感を与え合う。
笑顔で小さく頷くと、俺とダリアは――。
「夏季休暇が楽しみです」
「色々勉強してまいりますわ」
――そう、口にしたのだ。
互いに心が温かくなる。
夏季休暇は、楽しみが一杯かもしれないな。
しかし夏季休暇が始まろうかと言う前日、思わぬことが起きるのだ。
それは、マリーの相変わらずの暴走ではあったのだが……。
「俺の故郷を何故知っている? 知っていて口に出そうとしたら、全身に激痛が走るようになっているのだが? 俺の故郷を知るのは、国王陛下と学園長だけの筈なのだが? どこで知った、言え」
「ひぐぅぅいいいいいい‼」
――馬鹿は死んでも治らんのは、事実のようだな。




