第9話 学園中間テスト勉強と、その結果――
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学年の中間テスト間近。
俺とダリアとリオンは、学校のとても広い図書館と呼ぶべき図書室で試験への勉強を行っていた。
今回、リオンも仲間に入れての脳内会話となるが、彼の得た情報もなかなか面白いようなので、聞くことになったのだ。
まぁ、大抵は予想がつくが……聞いてみないと分からない事も多い。
とはいえ、俺達の成績は「Sクラスの恥さらし」と名高いリガード王太子を含めた三人と比べれば雲泥の差がある。
正直、勉強をする体を取りながら、脳内会議が主になりそうだ。
『あの学園合宿から一ヶ月の入院を経て、やっと学校にやってきたはいいが、開口一番に、お前達の所為で‼ と怒鳴られるとはある程度想定していた』
『わたくしもですわ』
『お二人共に、想定内のことだったのですね。正直俺には、彼らが意味不明で不可解で気持ち悪いです』
『それが、一般的な感覚だろうよ』
リオンの言う言葉は一理ある。
周囲の生徒たちにとっても、彼らが意味不明で不可解で気持ち悪い存在だという認識であっているのだろう。
一国の王太子という目で見るより、意味のわからない生物……という目で見られている事に、あいつ等は気づいていない。
余程自分たちに都合の良い脳内をしているようだ。
『しかし、試験前だっていうのにあの連中は呑気なものだな。今回のテスト次第ではまたクラスが変わるだろう? Sクラスから最下層に落ちるんじゃないか?』
『お父様のお話では、最下層まで落ちた場合、婚約破棄がしやすくなる……という話でしたわ』
『ははっ! そいつは朗報だ』
『そうですね。アルカ様にとっては最高のお知らせですね』
『え?』
『んんっ! ダリアが自由になるのは実に喜ばしいと思ってな』
『そう……ですわね』
『取り敢えず、テストが終わったらになるが……ダリア』
そう脳内で告げて彼女を見ると、彼女は大きい目を更に大きくしてこちらを見つめてきた。その顔の可愛さというかあどけなさというか、たまらないな。
『……夏季休暇に、君をエルフ王国に呼びたいと思っている』
『……え⁉』
『無論、君が嫌なら断っていい』
『それは大変誉れですが……。わたくしまだあの男の婚約者ですし……』
ああ、やはり断られてしまうか……。
そう思った時、図書室で耳にしたくないあの四人の声がどこからともなく大声で響いてくる。
図書室では静かにしろと誰もが心に思うくらいの大きさだ。
「夏季休暇はマリー! 君を城に招きたい! 夏季休暇の間はずっといていいぞ!」
「きゃあ嬉しい! 王族の暮らしに憧れてたんです~!」
「決まりだな!」
思わず沈黙する俺達。
ダリアを見ると頭を抱えており、暫くすると――。
『城に赴いても……彼女が常にいると思うと胃が痛くなりますわね……。アルカ様、先のお誘い、是非お願いいたしますわ』
『まぁ、城に行く度にあのリガードの腐った顔と毒婦の顔を見るよりは健全だな』
『というより、婚約者がいながら別の女性を城に招き入れて夏季休暇を過ごすなんて……相当な馬鹿としか思えませんが。しかもここ学校ですよ? 貴族の皆さんの耳がある場所で、よく言えましたね』
『あいつ等馬鹿だからな。その辺が分からないんだ』
嘲笑い鼻で笑うと、リオンは小さく『なるほど』と呟き、ダリアもまた『愚か者ここに極まれりですわね』と呆れた様に溜め息を吐く。
それでも尚続くでかい声での会話に、図書室の教員が注意に行ったようだ。
厳しく叱咤され、「俺はこの国の王太子だぞ!」と喚いていたが「王太子であればこそ、貴族や民の模範となってもらいたいものですな」と言われ、図書室を出ていったようだ。
強くドアを閉める音が聞こえ、周囲からは大きなため息が溢れた。
「あれで我が国の王太子って恥ずかしくて言えないわ」
「不敬罪になるわよ?」
「別にいいわよ。皆も思ってるでしょ? お父様達は恥ずかしいって言ってたわ」
「うちのお父様たちもだわ……」
そんな声がしてくる。
どうやら貴族の間でも、王太子を恥ずかしい存在だと言っている者たちが増えている事がわかり、俺としては笑顔になる。
それから数日後――学園内での中間テストが行われた。
俺とダリアが上位で一位と二位を取り、三位にリオンがついている。
リガードたちはというと、言うまでもなく悲惨な状態になっていた。
「流石ダリアだな。見事な順位だ」
「いえ、アルカ様には勝てませんわ」
「お二人共、一位と二位おめでとうございます」
「リオンも三位おめでとう。そのような成績を収める従者を持って幸せだ」
「有り難いお言葉……感謝致します」
そう会話する中、ずっと下の列にあるリガードと毒婦たちのテストの結果に、顔面蒼白で震えている奴らの姿があった。
そっとダリアの肩に触れ、微笑みあうと気にせず歩き出す。
雄叫びに近い悲鳴が聞こえたが知ったことではない。
授業をサボり、まともな勉強をしてこなかった自分たちを恨めば良いだろう。
『スノルとドルフの未来は、これで立ち消えたな』
『一度でも最下位に落ちれば、宰相の座と、王室騎士団への入団が厳しくなりますから……。ここから這い上がるのは、並大抵の努力では無理と思いますわ』
『従者の名折れです。恥ずかしい者たちだ』
こうして、俺達は勉強という学業の中で、彼らに対してザマァ返しを出来た訳だが。
テストが終われば、国王との面談が待っている。
結果が出た日に来て良いとのことだったので、学校帰りに向かう予定だが――。
『そういえば、父から本日城に呼ばれているとのことですわ。わたくしも出席いたしますけれど……』
『ああ、俺との面談があるんだ』
『アルカ様との?』
『この際、しっかりと黒白つけておきたくてな』
このままダリアをリガードの婚約者になんてしていられない。
だが、王家には王家の言い分もあるだろう。
もし腐ったような言い分を言うつもりなら徹底抗戦する構えだ。
エルフ族を怒らせるとどうなるか……国王とて知りたくはないだろう。
力んでいた身体から力を抜かす様に息を大きく吐くと、俺は前を見据える。
「まだ先は長いかも知れないが、一歩でも前に進んで見せる」
――ダリアを、我が妃にするためにな!




