フタバちゃん5
「で、アンタのママが「白羽の矢」を立てたのが私。」
フタバちゃんが言った。
「私のウチさ…両親忙しいから、夕飯は現金渡される事多かったから…二郎くんんチみたいに、ご飯が出て来るの羨ましかった…二郎くん塾でいない時さ、偶にご馳走になっていたんだよ」
『一郎くんも、フタバちゃんが居れば「楽しい給食」みたいでしょ?フタバちゃんも学校生活の事色々話してあげて』
そういえ…お母様は当時、そんな事を言っていた…。
俺の頭の中で嫌な暗雲が一筋立ち込めた。
「で、私が高校生になった頃、「彼女に」ってアンタのママに言われたの。「フタバちゃんは、頭いいから勉強も教えられるわ」ってね…恋人兼家庭教師よ。私もアンタのママのご飯食べたって下心あったから…了解したの。」
フタバちゃんのそのセリフを聞いて、俺は不安の余り…思わず聞いてしまった。
「……………兄貴、フタバちゃんに…ひどい事したの?」
「………………え?」
『警察沙汰になって、マンションから引越ししたんだろ』
ソージの言葉が頭を過ぎる。
「流石に…兄貴が性犯罪者なんてっ……俺はっ耐えられないっ!」
俺がそう言うとフタバちゃんは絶句した様に俺を凝視した。
「……あの兄貴がっ!?っははっ……ないっないっっぷぷっ!」
俺の期待…いや、予想に反してフタバちゃんは、再度可笑しそうに腹を抱えて笑った。
フタバちゃんはそういうと、再度1分程…腹を抱えて笑い転げていた。
その様
その様子を見ていると…俺は何だが…先ほどフタバちゃんに言われた『除け者』みたいな気分になった。
実家の人間と、目の前で笑い転げるフタバちゃん…一瞬ではあるが…俺を除いた皆がひとつの何かを共有している様に感じたのだ。
しかし、俺の感傷的な気持ちはフタバちゃんが告白した真実に吹き飛ばされる事になる。
「それだったら、凄くわかり易く私は…第三者からも『可哀想な被害者』として扱われてたんだろうけど…」
笑いを含んだ声色で、やっとそこ迄話終えると…今度は落ち着いた声色でフタバちゃんが続きを話始めた。
「『事実は小説よりも奇なり』…この警察沙汰の真実を私がソージとソーイチに話したら…言われた言葉だよ。」
俺は思わず、眉根を寄せてフタバちゃんを見つめた。
フタバちゃんが片足だけを自分が座っているベンチにあげて、両手でその膝小僧を覆って言った。
「アンタの頭のオカシイママに…マンションの回廊を追いかけ回されたの、私。しゃもじで…頭叩かれながら、ね。」




