フタバちゃん3
ソージの言っていた通り、フタバちゃんには直ぐに会えた。
店に入って来た俺を見ると、フタバちゃんは一瞬驚いた顔をみせたが、
直ぐに落ち着いた表情になった。
「ソージくんが言った通りだ。来たんだね。」
久々、俺の耳に届いたフタバちゃんの声は、昔と同じだったが、少し大人の色が滲んでいた。
「後、30分ぐらいでバイト上がれる…あそこの公園のベンチで待ってて。」
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「あんたの、ママ頭おかしいよ」
公園のベンチへやって来るなり、フタバちゃんに噛みつかれる様に言われた。
俺の腹の底から生まれた呻き声が、苦しそうに喉を押してくる。
俺は苦しくなって顔を伏せた。
しかし、フタバちゃんは攻撃の声を俺に浴びせる。
「久々に会ったソージくんもあんたに呆れてた!『自分の事しか考えてない。やっぱ、あの親にしてこの子ありだなって思った』ってね!」
「ソージや、お前だって…なんなんだよ!再会早々いきなり文句ばかり言いやがって!」
俺の口からでたのは、喉の奥に詰まった呻き声ではなかった。
怒りが滲んだ反論に、自分自身で驚いた。
その反論が俺の口から発せられたと知り、俺自身も驚いた。
驚いたせいだろうか…次に俺の口から出たセリフは、吃っていた。
「…だ、だ、だいったい、な…お、お俺が何したってんだっよ!」
「…」
フタバちゃんは、そんな俺を仁王立ちの状態で見下ろしながら、ゆっくり腕を組んだ。
「…お、お、俺の親がっ、ん、な何したって、い、言うんだよ。」
「…」
フタバちゃんは微動だにせず…相変わらず俺を見下ろしていた。
フタバちゃんと睨めっこ状態になった俺は、フタバちゃんが無言で睨みつけて来る為、フタバちゃんの容赦をまじまじと観察する形となった。
フタバちゃんはソージの言う通り、ピンク色の髪をしていた。
ベーカリーでhs、エプロンを着用していた分からなかったが、服装は原色ピンクの派手なロゴ入りTシャツに、ゆったり気味のデニムに個性的な形のサスペンダーという…格好だ。
少し短かめのデニムに裾から、緑とオレンジの縞々靴下が覗いている。
俺の知っている…小学校時代のフタバちゃんは、地味なひとつ結びの髪に白Tシャツとデニムばっか着ていた。
それを思い出せばこそ、フタバちゃんは…かなり個性的に脱皮している様に思えた。
「私ね、アンタの事、好きだった。」
「………え」
フタバちゃんの以外な返しに、俺は思わず間の抜けた声が…俺の喉の奥から飛び出した。




