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「ねね」ちゃん  作者: きゃんぷ3
苦い思い出1
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ソージ1

「振られたのは二郎…おめえがダセエからだよ!」

俺はソージにきっぱりと言われた。

このソージに言う奴、ソーイチの友達だった奴だ。

いや、今も友達らしいから過去形はオカシイ…友達である、だ。

ダチからソーイチの事を聞いた時に…俺は嫌な記憶が蘇り適当にはぐらかしてしまった。

が、次にダチがソージの話をし始めた時には思わず「会いたい」と言ってしまったのだ。

で、今、こうしてソージと対面している。

このソージ、小学生時代はソーイチと一緒によく連んでいた。

俺はソーイチとは話しをした事が無かったが、ソージとはそこそこに仲が良かった。

俺がそう言っていた、とダチがソージに言って再会が叶ったのだが…。

いざ、俺と再会を果たしたソージは開口第一声として俺にこんなセリフを放った。

「俺、誰とでも分け隔て無く話すだけのタイプってだけで、二郎以外の奴とも普通に色々話をしていただけの事だから。」

とキッパリ言い放った。

ダチが少しドン引きした表情を浮かべ、俺とソージを交互に見ている。

なんだよ…久々に会ったんだから、普通は『久しぶり』じゃねえの?

俺の中で曇った気持ちが沸き起こった瞬間、ソージが言った。

「ま、お前の事聞いてさ…あれからどうしてたかなって思って、一度会ってみようかなって思ってさ。久しぶり。」

俺が欲しかった言葉はようやくソージの口から放たれた。

機嫌を直した俺は…ようやく普通に話しをする事が出来た。

話しをしている内に、ジャングルジムでの告白の件を…このソージが話し始め…で、冒頭のセリフである「振られたのは二郎…おめえがダセエからだよ!」を俺はソージから吐かれてしまったのだ。

ダチが引き攣った顔をして俺を見ている。

まさか、ジャングルジムの黒歴史について触れて来るとは思わず…何か引っ込みがつかなくなった俺は…責める口調でソージに言った。

「ダセエ?…ダセエって何がだよ?!」

ソージがため息を吐いて答えた。

「学校中の色んな奴が居る場所で…告んねえだろ普通…一美ちゃんも相当恥ずかったと思うぜ。」

「一美ちゃんがそう言っていたって事かよ!」

「知らん。一美ちゃんとその事で話した事ないし。」

冷静にソージが返して来た。

「じゃあ、何で恥ずかしいとかって分かるんだよ!適当なっ」

「…一美ちゃんの友人達がそう言ってたんだよ。俺自身は一美ちゃんとは、その話をした事ないよ。俺は直接関係無いから俺が気にしても仕方ないし。」

感情的に言葉を放つ俺と対照的にソージは冷静に…淡々とした口調だ。

ソージの表情にも、面白がっている素振りは微塵も無かった。

そに表情を見た瞬間、懐かしい何かが…俺の記憶から顔をだす。

そうだ…ソージは小学生時代からそうだった。

ボッチだった俺と偶には話をしてはくれたが…俺から嬉しそうに話しかけると、毎回…一瞬だけ嫌そうな表情を見せる。

そしてその後で同情した様な表情を浮かべて俺と二、三会話を交わすと適当に話を切り上げて何処かへ行ってしまうのだ。

大学生になり…再会をした今、向かいで俺を見つめるソージの表情…。

小学生時代と変わらず、何処かしら同情した表情を浮かべていた。

数分の沈黙が流れる中、先に口を開いたのが再会をセッティングしたダチだった。

「まあまあ、過去の話だしもういいだろ?…二郎もふざけて告ったんだよな!?」

「外堀を埋めてって言ってんだよ…」

「へ?」

俺の反論に…ダチが間の抜けた声を出し、ソージが眉根を寄せた。

「皆のいる前で告れば、逃げないでしょって…」

「…誰かが、言ったって事?」


『二郎くんはカッコいいから、一美ちゃん、絶対にうんって言ってくれるよ!…皆がいる前で告りな…外堀埋めて逃げられないようにね!』


「…お母様が…俺はその通りにしただけだよ!」


「うっ」

ダチが何かを詰まらせた様な声を発する。

「それ、『外堀を埋める』ってそういう使い方じゃないと思うぜ」

ソージが冷静に反論した。

その表情には、相も変わらず…面白がる素振りは勿論の事、ドン引きしている様子も見られなかった。


「当時は小学生だから仕方なかったのかも知れないけど…今の今でも他責っぽい言い方すんのは、ちょっとどうかと思う。」

ソージの反論を聞いて俺は大きく項垂れた。

そうだ。

そうだった。

思い出した。

コイツは小学生の頃から裏表ないタイプだった。

ソージとの会話も、最後は一発『ど正論』をぶちかまされて終わり、みたいな展開ばかりだったな…。


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