苦い思い出2
「す、好きです!…付き合っ」
「無理!!!!」
告白し終える前に、俺は…一美ちゃんに振られた。
「…付き合って…下さい。一緒に登校っ」
一美ちゃんが両腕で、大きなバッテンを作った。
バッテンの後に…一美ちゃんはうざったそうな表情を浮かべ、俺を一瞥すると…登りかけのジャングルジムを登り始め…友達の側へ行った。
バッテンを見て、俺は大きく項垂れるしか無かった。
今日は頑張って独り登校したけど…明日からも独りで登校しなきゃならない。
そのリアルが俺の頭の中を高速で侵食し始める。
半分程侵食された辺りで…俺はそのリアルが怖くなり始めた。
「う、う……っうえっ…」
嗚咽が俺の耳に届く。
それが俺の声だと気づいた時には、俺の流した涙が俺の布マスクを何滴も吸収した為、ベトベトに湿っていた。
ジャングルジムの上から知った顔が俺をじっと見つめている。
一美ちゃんの友達だった。
「…ねえ、あれ…あれ…ほら!」
一美ちゃんの友達が信じられないモノを見た、という表情で俺を凝視しつつ…一美ちゃんに声をかけた。
友達の声がけに呼応し、一美ちゃんがジャングルジムを登る作業を中断し…ゆっくりと俺の方を振り向いた。
一美ちゃんが、俺に一瞥した途端…一美ちゃんの友達同様『信じられないモノを見た』といった表情を浮かべて呟いた。
「断って…マジ正解…」
一美ちゃんのセリフが俺の耳に届き、俺に中の何かを抉った瞬間、俺は一美ちゃんから顔を背けた。
顔を背けた先にソーイチがいた。
ソーイチと目が合う。
その瞬間、ソーイチが俺から顔を背けた。
ソーイチの肩が小刻みに揺れ…ソーイチが自分のお腹を抱えた。
ソーイチの顔を見なくても…俺は理解出来た。
ソーイチは笑いを堪えるのに必死なのだと言うことが。
ソーイチと一緒にいた友達もニヤけた顔で俺を見ている。
俺は自分の中で震えるモノを感じた瞬間、その場から駆け出して逃げた。
この後の事はよく覚えていない。
登校時に揶揄われた時と同様、何も記憶がなかった。
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