兄貴✖️結界✖️カン
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「…あ、兄貴」
俺はしどろもどろな声で兄貴に声をかけた。
俺の口からそんな情け無い声が出てしまったのは、兄貴の異様な様子が前回目にした時よりも数倍に増していたからだ。
『ていっ…ていっ…ていっ…ていっ…ていっ…!』
兄貴は相変わらず叫んでいたが、その声はだいぶ枯れてガラガラ声になっており…目の下にはクマが濃く出現していた。
その目は異様な程充血しており…瞳の白目部分は「白よりも充血の赤」の割合の方が大きかった。
俺がの呼びかけに、一瞬兄貴が俺を見て…その間は「ていっ…ていっ…っ…!」と唱えるのをやめた。
だが、本当に一瞬だけの事だった。
兄貴は再度、遠くに目を遣ると再度「ていっ…ていっ…ていっ…ていっ…ていっ…!」と壊れたテープレコーダーの様に叫び始めた。
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「…兄貴の周りの紐…あれ…なんです?」
俺は兄貴の「相変わらずな状態」に絶望しながら…虚ろな声でオッサンに質問した。
「ま、結界…的なもんだと思っときゃいい…気休めだけどな。」
「建物の周りも、同じ種類の紐で囲っている風ですけど…二重に結界張ってるって事ですか?…だから、建物に入る時に『紐に触るな』って神経質な感じだった…て事ですか?」
俺の質問に答えるオッサンの応答を聞いていたソージがオッサンに直接尋ねてきた。
オッサンが視線を俺からソージに移して答えた。
「繰り返しになるが、結界…つーても『気休め』程度の代物だ。当たり前だが、この世に体のある俺らの様な生き物が物理的に取り除こうと言えば取り除ける訳だから…ま、ホントに気休めだ…」
「…あ、あの…そういう事が出来るって事は…あなた、そういう力ある方って事ですか?」
「…待ってっ!…って事は、あ、あ、兄貴の方見てて「ヤバい」って事は秒で理解出来たけど…これはそういう「案件」って事…ですよ、ね?」
ナナちゃんとフタバちゃんが、立て続けにオッサンを質問攻めにした。
「…おいおいおいっ!…期待を裏切る様で悪いが…俺にはそんな人智を超えた力的なモノは…ないぞ?…実際この年までおばけや幽霊の顔を拝んだ事もない。」
「「「…」」」
オッサンの回答を聞いて、ソージとナナちゃんとフタバちゃんがお互いに顔を見合わせた。
「…あ〜その、上手く説明出来ればいいんだが…「見えはしないがカンはいい」ってヤツだ、俺は。この件に限らず…「バランスの悪い」モノを見ると…直接的な言い方をすると「歪なモノ」に対する俺のカンの反応は「当たる」んだ…この小僧を見た時も「歪んでる」と思ったが、兄貴の方を見た時の反応が……ヤバかったぜ……こう脳天から「歪な何か」が、俺の脳天を揺らし体を真下に突き抜けっ…こうっ…ズっ…ギューんっ!!とタマ…が裂けっ」
「……ちょっ…その先は、表現もういいですっ!…女性が二人もいるしっ…聞いて俺も痛くなりそうで…聴きたくない………です…すみません」
普段は落ち着いた態度を見せるソージが慌てて…オッサンを止めに入った。




