兄貴✖️俺✖️いろは神社の中
兄貴…何をやっているんだ?
急な傾斜の下り坂部分に腰掛けながら、木々に向かってリズミカルに頭を振る。
そんな兄貴を見て、俺はそう思った。
俺は注意深く耳を澄ます。
すると、鳥のさえずりや、虫の音、風が木々を揺らす小さな音達…その自然の音の中に不自然な音が混じっていた。
よくよく注意して耳を傾けると…それは兄貴の声だった。
兄貴はぶつぶつと、何かを言っている。
俺は、あまりこれ以上、石段を登りたくなかったが、兄貴の声が何を言っているのかが不明瞭な為、仕方なく石段を2,3段程上がった。
「ていっ…ていっ…ていっ…ていっ…ていっ…ていっ…ていっ…ていっ…」
兄貴の声が俺の耳に届く。
ていっ…ていっ…ていっ……?
直近で…聞き覚えのある音だった。
ていっ…ていっ…ていっ……?
兄貴の声を暫くの間聴いている内、俺は思い出した。
これは…俺が俺の夢の中で聞いた声だ。
それを聞いた途端、俺は猛烈に兄貴に腹が立った。
なんだよっ!コイツっ!
俺が、今回の旅行に対して全般…乗り気でない事を薄々感づいた上でのこの嫌がらせ!
このヘタレ…俺がここまで迎えに来る事を…待ってやがったんだっ!
ヘタレのくせにっ…俺に手間を掛けさせやがってっ!
「兄貴っ…何やってんだよっ!」
「ていっ…ていっ…ていっ…ていっ…ていっ…ていっ…ていっ…ていっ…」
「帰るぞっ…!」
「ていっ…ていっ…ていっ…ていっ…ていっ…ていっ…ていっ…ていっ…」
「…聞いてんのかよっ!置いていくぞっ…ひとりでここから帰れないくせにっ!」
「ていっ…ていっ…ていっ…ていっ…ていっ…ていっ…ていっ…ていっ…」
兄貴は俺を無視し続ける。
「兄貴っ!!!…くっそっ!…もうっ!!」
俺は無視された怒りが大きくなり、その場で地団駄を踏んだ。
俺のいる石段は苔がびっしり生えている…その事を、俺はこれまでに何度か言った。
だから、当然の結果だけど…俺は、苔で滑って尻餅をついた。
痛てえっ… !
石段へ打ちつけた部分が震源地の様にジンジンと…俺の体の内部へと鈍く響く痛みに…俺は暫く耐えた。
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