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「ねね」ちゃん  作者: きゃんぷ3
苦い思い出1
15/24

親友「ナナ」2

ナナは、母子家庭育ちだ。

ナナのママが、ナナのパパと別れた理由は、ズバリ一言で言えば『マザコン夫と姑との性格の不一致』らしい。

ナナのパパは、大層なマザコンらしく、またその母親もモンスター級のマザコンママだった。

ナナ曰く「ママとパパの家庭生活は異状そのもので、事件がない日を探す方が難しい」程だったそうだ。

ナナは、モンスターマザコン父&おばあちゃんコンビの異様な生活の様子について…

同居していた間のナナ自身の記憶は勿論の事、自分の母親からもその異様な環境ぶりを離婚後に色々聞かされたらしい。 ナナのママは、各種の異様なエピソードの締めくくりに必ずこう言ったらしい。 『最初から2対1だもの…そりゃ詰むわよね。』 そして、おまけの一言を発するのだ。 『ママはナナを味方にすれば…2対2にする事もできたかもしれない…でもそこまで付き合う価値の無い連中だって思ったから別れたの~』と。

更に、ナナのママは、ナナのパパについては『自分がない人』だったと言っている…これについてはナナ自身も、思い起こす節があるらしい。

そのエピソードとして、ナナが小さい頃のある思い出を話てくれた。

それは、ナナが先ず、ママに向かってバレエを習いたい、とせがんだ事時の事だ。

その時は偶々、マザコンママ…すなわち、おばあちゃんが不在だった。

『自分の無い』ナナのパパは、奥さんと娘からバレエ教室へ通う事を打診され、即答で『いいよ』と言った。

しかし、その日の夕飯時に、おばあちゃんがバレエの話を知ると、即反対してきた。

おばあちゃんのはこう言ってバレエを孫娘に習わせる事に反対した。

『女の子が人前で足をパタパタ広げて踊るなんて…はしたない!』

すると、おばあちゃんの反応を見たパパも、直ぐにおばあちゃんに同調したらしい。

『そ、そうだよ!バっバレエなんて…はしたないって、ダメダメ!』

ナナは当時まだ小さかったけど、パパの『手の平返し』に強い違和感を覚え、パパに言い返した。

『朝、ママがパパに言った時は、パパはバレエ習っていいって…言った。なんで、今はダメだっていうの?』

『だ、だ、だって…おばあちゃんがそう言うからだよ。はしたないだろう?』

と。

その時、ママが言ったの。

『あなた…今朝、ナナに向かって「バレエ教室通っていいよ」と返事を返した時は…『はしたない』って思ってたんですか? 『はしたない』って思っていたのに…ナナに真逆の返事を寄越して期待させたんですか?』って 。

ママのセリフを聞いたパパは、なんとも形容し難いうめき声をあげたの。 子供の目から見ても…パパは明らかに困っていた…そして奇妙な表情と声だなって、覚えている。

そして私は子供ながらパパの奇妙な態度は…ママに言い返せなくて困ってる事は理解できたの。

そしたら、おばあちゃんがね…『ダメなものはダメなの!』って…火がついたみたいに…ママに向かって怒鳴りつけてさ…それから続けてママに向かっておばあちゃんが、マシンガントークみたいに…こう言ったの 『自分の旦那様を遣り込めようとなんかして…嫌な嫁だねっ! バレエというのが人前で足をバタバタさせる…はしたない踊りだって事ぐらいわからないの! 同じ女なら…旦那にそんな話を持ってくる前にっ…娘にダメだって断るものでしょ?! パパが優しい性格している事をいい事に…揚げ足取りみたいな真似をしてっ… ナナちゃん、大きくなったら…ママみたいな性格の悪い女になっちゃダメよ!!」 おばあちゃんのその態度とセリフに…私はドン引きしてたら…パパがおばあちゃんの援護射撃するみたいに言ったの。

『そ、そうだっ!そうだよっ!!…おばあちゃんの言う通りにすればいいんだ!』って 。

そしたらさ、その時のおばあちゃん…満面の笑みでパパを見つめてさ…。 『親思いのいい子になってくれたわ…ナナもパパみたいにならなきゃね。」っておばあちゃんから言われたの。

子供心にゾっとしたわ。 ナナがポツリと吐き捨てる様にそう呟き、話を続けた。

「その時ね、思ったの。 なんか、パパって…誰かに操作されなきゃ、何一つ動けず、何一つ話せない人形とか…ぬいぐるみ?みたいだな、って。 」

私はナナが自分のパパの事を『自分がない』と言っていた理由について…この件を聞いて妙に納得した。

そこまで、ナナは話し終わると、ナナのグラス内の氷は大部分が溶け、氷の塊は…角が取れ、大きさが半分以下になっていた。 ナナは角の取れた氷を…グラスを直接口につけ、口の中に流し入れた。

ぼりぼりっと、氷を嚙み砕く…妙に重低音のある音が、今度は私の鼓膜に響いた。 ナナの喉元が大きく動いて、嚙み砕いた氷を飲み干した。

「フラグ立ってんなって出来事が…そのバレエ事件から、ちょっと後の事だけど…学校で学芸会があったんだ」

ナナが一窓の外を覗き込んで、遠くに自分の視線を遣りながら話し始めた。 「主人公が男のパペットで…それを操るのがおばあちゃんなの。 おばあちゃんが間違えて男の魂を体から追い出してしまって…それに焦ったおばあちゃんが男がまだ魂のあるフリをする為に…男のパペットを操作する?…みたいな内容の劇、だったかな?…男のパペットだから、操るおばあちゃんは頑張って男の『フリ』しているっていう「喜劇』だったんだ。 そのパペットとおばあちゃんがウチのパパとおばあちゃんに見えたんだよね。 あ、でも劇のパペットと、おばあちゃんの方が…ウチのパパとおばあちゃんよりも全然マシだと思ったね。 だって、劇の中のおばあちゃんは、自分を頑張ってパペット寄りにしてるんだもん。 ウチのおばあちゃんは、逆で、パパを自分寄りにしようとしてる。」

それから、ナナは外に向けていた視線を私に向けていった。

「で、学芸会のあったその日に、ママにその事言ったの。 そしたらさ、ママがポツリとこう返してきたの。」


『そうね、我が家のパペットはおばあちゃんの感情増幅器の役目だもの、ね。ママはパパではなく…おばあちゃんと結婚してしまったのよ。』って


そこから程なくして、一筋縄ではいかなかったが…ナナの両親は離婚し、ナナとナナのママ二人の生活が始まり、今に至るらしい。


「しっかし、さあ〜『しゃもじ山姥』だっけ?そのマザコン母?…ウチのおばあちゃんもそうだけど…子供は明らかに愛玩用であり、一人前の人間に育てるって概念が抜けてるよね…だからなのか、愛玩用と年の近いフタバに対しても、御飯は提供しても、料理の作り方を教えるって発想が、抜け落ちてる…」

ナナはそこまで話すと、急に黙り込んだ。

その間、5〜6秒程度だったと思う。

すると、次の瞬間、ナナはニコニコしながら…私に顔を近付けて質問してきた。

「…二郎くん、だっけ?弟の方。」

「…な、何、いきなりっ…」

「…ちょっと会ってみたい」

「…え、マジ?!…ナナ、マザコン無理って言ってたじゃん!…そいつも兄貴程じゃないけど、マザコンだよ?」

「…違う、違う!そういうのじゃなくて、さ…もしかして、もしかしたらさ…フタバが『しゃもじ山姥親子』が頭おかしいっていう事承知の上で、しゃもじ山姥親子に近づいたのって…弟の存在が大きいかな?って。」

「は?…何言ってんの?…ちょっナナ!さっき自分で『違う!そういうのじゃない』って否定してたけど…私ならマザコン弟とナンカで、何かあるって言いたいの?…あり得ない!!久々会った時だって、『うわ〜変わんない…子供っぽい』って思ったし…あ、そういや」

私は、急に思い出した。

「どした?」

少し不思議そうな表情で、ナナが私の顔を覗き込んだ。

「旅行に誘われてた…弟の方に…なんか、『頼むから兄貴に会ってくれないか』って。でもなんかすごい切羽詰まった感じだった」


ナナが向かいの席から、自分の両肘をテーブルに乗せ、テーブルを押し出す感じで…より私に顔を近づけてた。

それは、『詳しく聞きたい』という…ナナの合図だと私は思った。

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