気になる、萌キャラ「ねね」ちゃん…のそっくり。気になる理由は…
ねね。
ねね。
ねね。
可愛い名前。
『同じ文字をふたつ続けると印象的でいい』
誰かは忘れたが、その誰かが…どこかで言っていた言葉。
まあ、細かい事はいい、そんなに重要じゃないと思うから。
だが、この言葉は事実だと思う。
僕の「ねね」は確かに可愛い。
膝にちょこん、と座る程度のサイズ。
小さく短い手足。
2、3等身の体。
その体には赤にレースがあしらわれたドレスを纏っている。
黒い髪の毛…いや、藍色のフェルト生地で作られた髪の毛。
フィギュアや、アクリル板へ印刷された公式の「ねね」ちゃんは黒髪だが、僕の膝にちょこんと座る「ねね」ちゃんのぬいぐるみは藍色の髪の毛だ。
そして、ねねちゃんの顔。
目は不機嫌そうに半目を開き、口は一文字に結ばれている。
かわいい。
ああ、かわいい。
そこもかわいい。
本当にかわいい。
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「かわいい? 公式の「ねね」の方が全然美少女じゃね?」
僕のかわいい「ねね」ちゃんを一眼見た時の僕の弟の感想だ。
その時の心情は今でも覚えている。
心底、不快感が…心の底辺部分から泥を纏った状態のまま、緩慢な動きで心の表面迄へと姿を現す…そんな感じだった。
僕はこの弟と、今の今まで「ケンカらしいケンカ」をした事が無かった…らしい。
その昔お母様がいっていた。
『お兄ちゃんは、威張った態度を取った事が無いからね。弟にとって良いお兄ちゃんね。偉いわ』
母に褒められた僕は、嬉しくなり母に「おねだり」した。
『お母様!僕、偉いので明日からの登校は…僕に付き添って!』
お母様は驚いた様に僕と弟を交互に見た。
すると、二つ違いの三年生の弟は言った。
『いいよ、僕は…ひとりで学校いけるもん』
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「だからさ、髪の色とかさ、公式と違くね?ってだけの話だよ。兄貴がこのぬいぐるみが可愛いって言うならいいんだ」
弟が、僕の機嫌を取る様に取り繕った台詞を吐く。
その態度に僕は溜飲を下げ…僕の膝に座る「ねね」ちゃんの頭を撫でた。
「うん、ピンと来たんだよ…ネットショップで見た時にさ。」
兄貴はそう言うと「ねね」ちゃんの頭を撫でた後、赤いフリル付きのドレスの上から、つるん…とぬいぐるみの体を撫でた。
撫でた拍子に引っかかった指がぬいぐるみのスカートを偶然にもめくる。
白い下着をつけたぬいぐるみの下半身が露わになる。
下着をつけたその下半身はむっちりとした肉付だった。
それを見た瞬間、やっぱり似てねえわって思った。
そしてあり得ないと思った。
「ねね」ちゃんは、とある…同人作家が作り上げた物語の萌キャラ主人公だ。
萌キャラ主人公らしく美少女設定だ。
小さい顔に癒し系を意識した丸く大きな瞳。
そして、サラサラの黒髪を靡かせながら悪霊と戦う美女巫女。
それが「ねね」ちゃんだ。
スレンダーだけど、ボンキュッボンな体から霊力を放つ際の決めポーズは、ファンの間でテンション爆上がりする瞬間だ。
なんて…俺はファンであるかの様に「ねね」ちゃんの有り様を語ってしまったが…俺自身は「ねね」ちゃんのガチファンではない。
「ねね」ちゃんの事は美女だとは思うし、ちょっと気になる存在だが…俺自身は「ねね」ちゃんの相棒の激烈なファンなのだ。
「ねね」ちゃんの相棒…の「なな」ちゃん。
「ねね」ちゃんとは対照的に金髪碧眼の容姿のスナイパーだ。
吊り目で、ベースは「可愛い」を基調としたちょっと「かっこいい」が入った顔だ。
顔も俺好みだが、「ななちゃん」の設定に俺は完全にノックアウトされた。
「なな」ちゃんと…ちゃん付けで呼んでいるが、実は「なな」ちゃんの性別未定なのだ。
女ばかり生まれる一族出身の「なな」ちゃんは男になりたい。
でも、先祖達の業の深さが原因で男になれない。
だから、相棒をタッグを組んで、悪い悪霊供を退治している。
最初は兄貴がハマった「ねね」ちゃんに…一時ではあるが心奪われた俺ではあったが、ストーリーを鑑賞する内に…いつの間にか「なな」ちゃん一筋になってしまった。
「なな」ちゃんに向かって「ねね」ちゃんは絶対言わないけど…他の仲間達から、偶に「貧乳」呼ばわりされ、シュールなしっぺ返しを喰らわせるやり取り等も、俺が「なな」ちゃんにハマった理由のひとつだ。
ああ、「なな」ちゃんの話となると…どうしても熱が入ってしまう俺。
「に、してもなあ…」
思わず、独り言が口から飛び出た。
「似てねえよな…ぬいぐるみ」
何でそんなモンにハマった?兄貴…
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