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藍川姫奈の死に戻り(中編)

◇m周目


私はアレに捨てられた。


いや、正確に言えば、少しずつアレの関心が私から逸れていったのだろう。


何よりも、徐々に本性を魅せてきたアレに恋心など抱けるはずがなかった。


私としてはようやく呪縛から解放されたようで、胸の奥では安堵すらしていた。


━━━自分が殺されなければ、ループは始まらない。


だが、幾度も殺され続けた記憶は簡単に拭えない。高校を卒業した時点で、私の人生は既に地獄だった。


誰も彼もが疑わしく見えた。


隣を歩く人間が、次の瞬間、私を殺すのではないか。


そんな妄想に心を食い荒らされ、私は早々に社会から閉ざされた。


両親は、当然私を心配した。


アレにフラれたから落ち込んでいる程度に思ったのかもしれない。


本当の理由━━━何度も殺されてきた事実など、言えるはずがなかったし、信じてもらえるわけがなかった。


部屋の扉が急に破られ、アレが這い寄ってくるんじゃないかと。


かつて艶を誇った金色のロングヘアは伸ばし放題のまま絡まり、蒼い瞳は濁り切っていた。一日中、モニターのブルーライトを浴びては、目の奥を焼かれるように痛めつけられていた。


友人とも縁を絶ち、唯一の逃げ道はゲームやアニメといったオタク趣味だった。


それは現実から目を逸らすための、薄っぺらな救いに過ぎなかった。


そんな生活を十年。


さすがに、もうアレが殺しに来ることはないだろうと思える頃になって、両親から「働け」と突き放された。


私は家を出た。


逃げるように、遠くへ。


誰一人知り合いのいない町へ。


自慢だった金髪は切り落とし、なるべく地味な服を選んで人混みに紛れるように生きた。もはや、目立つ自分でいることが怖かったのだ。


辿り着いたのは、寂れた地方都市の小さな本屋。


客足はまばらで、店内にはいつも埃っぽい静けさが漂っている。


━━━そこで、私は働き始めた。


「ん、しょ……」


本棚の整理中。脚立の上で背伸びをしながら、分厚い本を棚に差し込む。高い位置の作業はいつも緊張する。足元がぐらつくたびに、心臓が背筋が冷える。


「藍川さん」


「ん~?」


「上の方は俺がやりますんで……」


声をかけられて振り向くと、そこには少し気の抜けた雰囲気の青年が立っていた。目尻に小さな皺が刻まれ、伸びた前髪には一房だけ際立つ白髪が混じっている。


そのせいで実年齢よりもずっと年上に見え、三十代後半と言われても違和感がなかった。


「あ、それなら……お願いしますね。氷山さん(・・・・)


「いえ、別に……」


彼は小さく視線を逸らす。その不器用さが、かえって人間味を帯びて見えた。


「照れてます~?」


「……そんなことありません」


否定しながらも、彼の指先は無意識に白髪を弄っていた。その仕草が妙に可愛らしく、胸の奥がくすぐったくなる。


━━━それが、氷山充斗……“あっくん”との出会いだった。





「え!?あっくんって、私と同い年なの!?三十代だと思ってた!」


出会って一年。ある程度打ち解けた頃、私は彼を飲みに誘った。この中途半端な町には若い人が少なく、活発な私は退屈していた。だから自然と、同じ職場のあっくんと過ごす時間が増えていったのだ。


「なんか……ショックだな……」


ジョッキを煽る姿は妙に板についていて、とても二十代には見えなかった。落ち込むあっくんからは、まるで反抗期の子供との接し方に苦労するお父さんのような雰囲気があった。


「げ、元気だしなって!老け顔の方が長生きした時、得だよ!ほら、顔が変わらないし、60歳くらいになったら『若いねぇ~』って羨ましがられるって!」


「……間接的にもっと老けてるって言いたいのかぁ?」


「そ、そんなことないよぉ?ただ、大人っぽく見えるだけだって!」


「気を遣わせてるのが分かって辛い……」


再びグイっとビールを飲み干すその横顔は、やはり三十代どころか四十代にさえ見えた。


……やめよう。これを言うと、余計にショックを受けそうだし。


あっくんは不思議な人だった。


面倒事を避けそうな雰囲気なのに、実際には自分から首を突っ込み、困っている人を放っておけない。


誰かが喧嘩をすれば仲裁し、風邪で欠勤した時には私の机に差し入れを置き、疲れている時には黙って仕事を肩代わりしてくれる。


それが自然すぎて、特別なことをしているようには見えなかった。


━━━自然に、本当に、ただ自然に。


「まぁまぁ!辛いことは酒でも飲んで忘れなって!店員さん、おかわり~!」


私は手を振って店員を呼んだ。


「なぁ……」


「ん?」


「その、『あっくん』って何だ?」


「え?充斗(あつと)だから、『あっくん』。どう?言いあだ名じゃない?」


「安直すぎるし、そもそも許可した覚えがないんだけど?」


「あだ名なんてテキトーでいいの。大事なのは籠めてる愛情だからね」


「愛情……」


またあっくんは、前髪の白髪を弄った。ここまで分かりやすいとからかい甲斐があって楽しくなる。


「私からの愛情だよ。愛情!アイ♡ユー」


両手でハートマークを作って見せると、あっくんは一瞬だけ固まった。


けれど、


「……そういうのは大事な時にとっとけ……」


顔を背けて、ジョッキを煽る。


酒を煽るあっくん。けれど、耳がほんのり赤かった。だが、耳の先がほんのり赤く染まっているのを、私は見逃さなかった。


━━━結構、本気だったんだけどなぁ




次の朝。


目を覚ましたのは、ボロアパートの床に雑に敷いた布団の上ではなかった。


そこは、まだ私が汚れていなかった頃の部屋。


━━━私は、高校二年生に戻っていた。


◇L周目


「何で……私、殺されてないのに……」


理由が分からなかった。私が死ぬことでループは起こるはずだった。


もう二度と会うはずがないと思っていたアレと会った時に、自然と笑えていたか不安だった。


けれど結局、アレは私に一切の興味を示さなかった。そのまま何事もなく、高校を卒業した。


再び、私は引き籠る未来を選択しようと思った。


けれど、今回は妙に冷静で、自分が死ななくても変わらないのならあまり関係ない、と考えて私は働き始めることを選んだ。


何をやりたいのか明確に決めていたわけではない。


ただ、小さい頃から子供が好きだった。


笑った顔や泣きじゃくる姿に触れると、自分まで生きている実感が湧くようだった。


気付けば、保育士の道を選んでいた。


忙しくも賑やかな日々を十年近く続けた。


子供たちの小さな手に引かれて園庭を走り回り、夜はぐったりと布団に沈む。


時折、またループするのではないか、と心がざわめくことはあったが、日々の喧騒に紛れて、その不安も薄れていった。


そんなある日、新卒の職員が入ってきた。珍しく男性で、この職場ではひときわ目立つ存在。女性ばかりの環境において、力仕事や子供の喧嘩の仲裁に男性がいてくれるのは助かる、と自然に思った。


しかし、初めてその顔を見た瞬間━━━私は息を呑んだ。


ボサボサに伸びた髪、少し胡散臭そうな雰囲気。だが、その中に紛れるように覗く一房の白髪。


「氷山、充斗です。よろしくお願いします」


━━━あっくんだ……


間違いようがない。


あの日、あの時、出会った彼と同じ仕草、同じ声。


「あ、ええ、と、よろしくね!」


私は必死に笑みを浮かべ、何でもない風を装って返した。あっくんは私のことを知らない。知らないはずだ。それでも、再び巡り会えたことに胸の奥で震えるほどの喜びを感じていた。


「どうも……」


軽く会釈しながら、彼は無意識に前髪へと指を伸ばした。


白髪をいじる癖は昔と変わらない。


━━━あっくんは、やっぱり、あっくんだった。


私たちは上司、部下として過ごした。


あっくんは本屋で先輩として働いていたあの時の姿を私は覚えていた。


業種は違えど、根っこの部分は変わらない。


不器用に見えても、仕事には真剣で、一生懸命にやってくれる人だ。


その誠実さは、子供たちに真っ直ぐ届いていた。あっくんは子供たちにすぐに懐かれ、いつも明るい声を園内に響かせていた。




「え~、あっくんの書いた小説、読ませてよ!」


「絶対に嫌です!」


「先輩命令!」


「パワハラで訴えますよ!?」


事務室に響くやり取り。同じ年齢のはずなのに、私の方が歴が長いせいか、真面目なあっくんは常に敬語を崩さない。


「プロを目指すなんて凄いじゃん!私なんて作文一枚まともに書けないから、尊敬しちゃうなぁ」


「いえ……それで何年も、書き続けて……もう、無理だって気付いちゃったっていうか……」


彼は謙遜するように笑った。だが、その瞳にはどこか影が差し、自信をなくしているように見えた。


「じゃあ、私が編集者になってあげる!さぁ、カモン!」


「絶対嫌です……!」


「ケチ~!」


残業の夜。


蛍光灯の白い光が事務室に滲み、私とあっくんは保護者に配るプリントを並んで作っていた。


笑いの余韻がふっと消えた時、彼が真顔で口を開いた。


「……それにしても、藍川さんって、何でこんなに俺に関わってくるんですか?」


「ん~?」


「なんというか、妙に馴れ馴れしいというか……なんか俺のことを前から知っているというか……あ、ごめんなさい。気持ち悪いですよね……」


私は君のことを知っている……


けれど、それを口にするわけにはいかない。


だから、私は正面から言った。


「あっくんのことが好きだから」


「え?」


「冗談じゃないよ。君の仕事ぶりも、人柄も、全部好きになっちゃったんだ。


━━━だから、付き合ってよ」


過去も含めて、私は何度でも彼に惹かれてしまう。今生でも、また惚れ直しただけだ。


心臓が暴れるように跳ねる。それでも視線を逸らさずに伝えた。


「あ、えっと、ありがとうございます。俺も……好きです」


不器用な返事。けれど、それで十分だった。


「な~んだ。両想いだったんだね~!」


私はすぐに彼の腕に身体を寄せた。


その瞬間も、彼は恥ずかしそうに白髪をいじっていた。





次の朝。


目を覚ました場所は、あっくんの腕枕ではなかった。


見慣れすぎた天井。何度も繰り返してきたあの感覚。


全身から幸福の余韻がはぎ取られた。


━━━私はまたループした。


◇V周目


━━━いっそ、死んでしまえばいいのかもしれない。


何度繰り返しても、未来はアレによって必ず壊される。もがく気力もなくなっていった。


私はただフリーターとして、惰性で工場のバイトに通っていた。


ベルトコンベアの上を、同じ製品が延々と流れていく。


金属が擦れる乾いた音。油と鉄のにおい。規則的なリズムに、心は凪いでいた。


━━━どうせ、今回もループする。


そう思うと、何かを意欲的にしようという気持ちは最初から生まれなかった。


ある日の帰り道。


視界に映ったのは、制服姿の高校生カップルだった。


二人は笑いながら、肩を並べ、繋いだ手を放そうとしない。


未来を信じ、希望を当然のように抱くその姿が胸の奥を焼いた。


羨ましかった。


あまりにも眩しくて、気付けば足が無意識に車道へ踏み出していた。


「━━━あぶねぇ!」


「……え?」


突然、強い腕が私の身体を抱き寄せた。視界が暗転し、全身に浮遊感が襲ってきた。


「ぐっ!」


背中に衝撃。私を庇った男の身体が、鈍い音を立ててアスファルトに叩きつけられる。直後に鳴り響くブレーキ音。鞄が宙を舞い、スマホが砕けて地面に散らばった。


腕の束縛から解放され、私は白線の上に座り込んでいた。現実感がなく、ただ呆然としていた。


「いってぇ……」


呻く声。私の前に倒れ込む男性の背中。


運転手が青ざめた顔で駆け寄ってきた。


視界の端では、さっきのカップルが目を見開き、こちらを茫然と見つめていた。


私は目の前で倒れる彼を見た。


「あ、あの……」


声をかけた瞬間、彼は振り向きざまに、私の手を強く掴んだ。


「馬鹿野郎ッ!」


怒声が鼓膜を打ち、身体が震えた。


「自殺なんて、くだらないことすんじゃねぇ!」


「あの……」


「友人が、家族が……!あんたを知ってるそいつらが……ッ!今のあんたを見たら、どう思うのか考えやがれ……ッ!」


「━━━」


必死な叫び。


その顔を見た瞬間、私は心臓を鷲掴みにされた。


見覚えがある。


間違えるはずがない。


もう三度目なのだから。


「頼むからさ、俺の、前で……この世の終わり、みたいな顔すんのはさ、やめてくれよ……」


そう言った彼の瞳から、大粒の涙が零れ落ちた。


「毎日、毎日。自分が誰だか、分からずに生きてる俺が、虚勢を張って生きてんだ……ッ!だから、俺より不幸な顔、しないでくれ、よ……!」


その言葉の意味は、すぐには理解できなかった。けれど、胸をえぐるように響いた。


「ごめん……なさい」


震える声で、それだけ絞り出した。


彼は袖で自分の涙を拭った。


「……こちらこそ……生意気言って、すいません……」


彼は慌てたように謝り、ポケットを探った。しわくちゃのメモ用紙を取り出し、何かを書き殴って私に差し出す。


「……死にたくなったら、俺に言ってください」


「え……?」


「俺は死にたがる貴方を許さない……だけど、もし生きる意志があるのなら、その連絡先は破り捨てて構いません」


吐いた台詞が気障すぎると自覚しているのだろう。彼は気まずそうに目を逸らし、白髪混じりの前髪をいじった。そして、逃げるように運転手へ声をかけに後ろを振り返ろうとした。


だが、私は思わずその手を掴んでいた。


「ねぇ……」


「……はい?」


「名前……何て、言うんですか?」


分かっている。


もう分かりきっている。


それでも━━━三度目の邂逅でも、どうしても確かめたかった。




「氷山……氷山充斗(ひやまあつと)です」




それから、私の猛アプローチで私はあっくんと付き合った。


命を助けてもらった恩を返したい━━━口実なんて何でも良かった。


本当にあっくんが好きで、どうしても一緒にいたかったから。


押しに弱いのは知っていたから、強引に迫って、既成事実を作って逃げられないようにした。


どうせループするなら━━━そんなことを考えていても仕方ない。


私は、後悔しないくらい全力で楽しんでやると決意した。




ある夜、あっくんは重い秘密を打ち明けてくれた。


「……俺には中学生までの記憶がないんだ」


「え?」


驚く私の反応を流して、あっくんは続けた。


「気付いた時には……記憶がなかった。小さい頃のことを思い出そうとしても、真っ白で。俺のことを知っている人もいなくて……ただ、戸籍だけは存在してる。まるで“幽霊”だよ。俺は……」


そこで一度苦く笑った。


けれど、その笑みはすぐに歪み、吐き出すように言葉を重ねた。


「自分が何者か分からない。それは、何よりも不幸なことだと思う。俺は世界で一番不幸だ。歴史がないんだから存在証明もできない」


拳を握るあっくんの肩がわずかに震えていた。


「だから、俺以上に不幸にしてる奴を見ると、どうしても許せなかった……姫奈を助けたのも、そんな後ろ向きな理由だ」


あっくんはそこで口を閉ざし、重苦しい沈黙が支配した。


「絶対に……誰にも言うなよ?」


「うん……」


あっくんは出会った当初から自分の過去を話したがらなかった。それがようやくつながった気がした。


驚きは大きかった。けれど、どうしてこんな大事な秘密を打ち明けてくれたのか疑問もあった。


「何で、私に?」


問いかけると、あっくんは視線を逸らし、白くなった前髪を弄りながら呟いた。


「……大切な人に、俺の秘密を隠すのはフェアじゃない……」


━━━この日の夜は最高潮に熱かったですねぇ。はい。




幸いなことに、前回ループが起きた時間は乗り越えられた。アレは何かを見つけ、もう時間を戻す必要が無くなったのだと思った。


やがて恐怖は薄れ、流れる時の優しさに溶けていった。気付けば私は、あの異常な日々を忘れてしまうほどに、穏やかで幸福な時間を過ごしていた。


月日は流れ、私たちは結婚し、そして━━━


「だ、大丈夫か……姫奈!」


病室の扉が荒々しく開き、息を切らしたあっくんが飛び込んできた。三十になったあっくんの顔にはうっすらと無精髭。汗で前髪が額に張りつき、スーツは皺だらけ。


それでも、その姿は懸命に走って来てくれた証で、胸が温かくなった。


「……うん」


視線を落とせば、私の隣には小さな命が眠っている。産声をあげたばかりの赤ん坊。


私とあっくんの命の結晶。


握られた指先が動くたびに、涙が零れ落ちそうになる。


「ごめんな……遅れて……」


「許さない……大変だったんだから……」


「はは、後でいくらでも償うよ……」


そう言いながら、あっくんは恐る恐る赤ん坊に触れた。ごつごつした指が小さな手に重なる。赤ん坊が弱々しく握り返すと、目を見開いた。


「……まさか……俺が父親になるなんてな……」


「うん……私も、ママになれたんだ……」


互いの視線が絡み、自然と笑みが零れた。


「ありがとう、姫奈。俺、世界で一番幸せだわ」


「私も……」


私たちは互いの喜びを分かち合うように我が子を抱きしめ合った。


「この子の名前さ、最後まで決まってなかっただろ?」


「……そうだね。あっくんが、我儘……だから」


「それはこっちの、セリフだっての……」


「じゃあさ━━━」






「……え?」


瞬きをした瞬間、景色が変わっていた。


そこは病院ではなく、見慣れた自室の天井。


命を紡いだ疲労は消え、身体は再び幼く軽くなっている。耳をつんざくような電子音が鳴り響いた。


嫌でも分かる。何十、何百と聞いた不快極りない音━━━ループの合図だ。


「ふ……ふざけないでよ!」


私はベッドの上で枕を叩きつけた。涙が次々と溢れ、嗚咽となって胸を震わせる。


「何で、何で、何でよ……ッ!」


手にまだ残っている気がした。産声を上げた小さな命の重み。


握り返してきた小さな指の温もり。


全部。


全部。


確かに生まれて、私が抱いていたはずだ。


なのに。


すべては幻だったと告げるように。


嘲笑うかのように。


あの不快な電子音が、無慈悲に現実を上書きしていく。


「私の子供を返せ……ッ!返してよ!」


お腹を痛めて産んだ子供。あっくんと共に掴んだ、確かな幸福。


それらすべてを━━━なかったことにされた。


「あ……ああ……ああああああああああ!」


喉が裂けるほどの叫びが、幼い身体から絞り出された。


息が苦しい。


心臓が握りつぶされるように━━━痛かった。



私は初めて、死に戻りの理不尽に、声を上げて泣いた。


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