第四章:火を扱うことは、命を扱うこと
これはAIが書いたものです
「火が、すぐに消えちまうんだよ」
村の少年、トモがしょんぼりとした顔で、炭の消えかけたかまどを見つめていた。
昼食に焼いた芋の残り香がまだ漂っている。かまどの灰の中には、半分だけ燃えた薪がじりじりと煙を立てていた。
「湿った薪を使ったでしょ?」
「うん……昨日の雨で濡れてた薪しかなかったから……」
俺はそっと笑って、近くに積まれた薪の山を指差した。
「じゃあ今日は、“火を育てる授業”をしようか」
「ひ……育てる?」
子どもたちの目が丸くなる。
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まずは薪の種類を仕分けするところから始めた。
「これが“焚きつけ”になる細枝。これは“中割り”の乾いた薪。そしてこれが“大割り”。これが燃えるまでには時間がかかるから、順番が大事」
「細いのから、順番に……?」
「そう。いきなり太いのに火をつけようとしても、絶対に無理。火もね、小さいうちは赤ちゃんみたいなもの。ちゃんとお世話して、育ててやらないと」
焚きつけに細枝と、乾いたわらくずを使い、火打ち石で火花を飛ばす。
カチン。カチン。
火花がちらりと舞い、わらの端に小さなオレンジ色の点が灯った。
「ほら、来た!」
「わっ、ちっちゃい火だ!」
「ここで焦っちゃダメ。少しずつ空気を送って……」
フーフーと息を吹きかける。やがて炎はパチパチと音を立て、中割りの薪へと燃え移った。
「火が……大きくなってる!」
「ね、育つでしょ?」
トモの目が輝いた。
「火を扱うのって、ちょっと怖かったけど……なんか、優しいんだな」
「その感覚、大事だよ」
火は暖かさをくれるけど、怒らせれば全てを焼き尽くす。
だからこそ、“丁寧な扱い”が必要なんだ。
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夕方には、子どもたちみんなが薪割りに挑戦した。
「よし、まずは構えだ。足は肩幅、斧は両手でしっかり握る。焦らず、真ん中を狙って――」
パコン!
「やった! 割れた!」
「俺にもやらせて!」
「順番だよー!」
細身の女の子まで、楽しそうに斧を振るっている。
俺はその様子を見ながら、どこか懐かしさを感じていた。
(昔、田舎の祖父に教わったな……薪の割り方。最初は怖くて泣いたっけ)
そんなことを思い出しながら、ふと空を見上げる。
煙が空へとまっすぐ昇っていく。
まるで、村が少しずつ前へ進んでいるようだった。
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「今日はありがとうな、先生!」
夜、トモがにこにこしながら俺の手を握ってきた。
「明日から、うちのかまどは俺が守るよ!」
「頼もしいね」
その小さな手には、薪を握った跡の豆ができていた。
誇らしげなその姿に、俺はなんだか胸が熱くなった。
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火を起こすという、ただそれだけのことが――
この村の誰かの“自信”になっている。
それが、俺にはとても尊く思えた。
(明日は……釜戸でパンでも焼いてみるか)
夜空に星がきらめく中、俺の頭の中では次なる“暮らしレッスン”のプランが、もう動き出していた。