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第三章:異世界に、発酵の風が吹く

これはAIが書いたものです


「なあ、そろそろ“暮らし指導官”さんの次のワザ、見せてくれよ!」


焚き火の夜を経て、俺はすっかり村の人気者になっていた。

水を浄化し、石鹸を作り、鍋をピカピカに磨くだけで、こんなに感謝されるとは思わなかった。


「じゃあ、そろそろ“保存食”の話をしようかな」


「ほぞんしょく……って?」


「腐らない食べ物。長持ちするやつ」


ミーナが「それは便利そうじゃ」と頷く。村は山間の土地で、冬は雪に閉ざされるという。保存できる食べ物は、まさに生死を分ける。


「というわけで、まずは“味噌”を作ります」


「みそ……?」


村人たちの頭の上に、またしても“?”マークが並ぶ。


**


豆を煮るところから始めた。

「これ、硬くて食えたもんじゃない!」と子どもたちに言われた乾燥豆を、大鍋でじっくり煮る。朝から火を絶やさず、ようやく指で潰せるほど柔らかくなったのは、夕方だった。


「これを潰します。みんな手伝って!」


湯気の立つ豆をすりつぶし、木の桶に移す。

そこへ加えるのは――


「これ、米をほったらかしにしておいたら、白いカビが生えたんじゃが……」


「それ、すごくいいやつです!」


「えっ!? 捨てようとしてたぞ!?」


「それ、麹です。発酵に使います」


麹という単語に、村人たちは神妙な顔になった。

カビ=悪という認識しかなかった彼らにとって、カビが“命を守る”とは想像もつかないことだった。


塩と麹を混ぜ、潰した豆に加える。

まるで泥遊びのような作業に、最初は戸惑っていた子どもたちも、やがて楽しそうに手を動かし始めた。


「これで……ほんとに、食べ物になるの?」


「時間が必要です。三ヶ月ほど」


「さ、三ヶ月も……!?」


「そのかわり、毎日がちょっとずつ豊かになりますよ」


**


味噌玉を木の桶に詰め、蓋をして、重しを載せる。


「この中で、目に見えない力が働いてるんです。時間と、微生物の魔法でね」


村人たちは、なんとも言えない顔でその桶を見つめた。

信じたいけど、信じきれない。

でも、何かが始まりそうな気がする。


「これができれば、野菜も魚も美味しくなる。体も強くなる。――未来が変わります」


静かにそう告げると、ミーナがうんうんと頷いた。


「なんだかのう……あんたが来てから、この村が少しずつ明るくなってる気がするんじゃ」


「そうですか?」


「うん。水もきれいになったし、手を洗う習慣もできたし、子どもたちも笑っとる。味噌ができるころには、もっと楽しくなる気がするのう」


遠くで、夕焼けに照らされた子どもたちの笑い声が響いていた。


火も魔法も使えない俺にできるのは、ただ――

“丁寧な暮らし”を積み重ねることだけだ。


でも、それが少しずつ、人を救っている。

そう思えた夕暮れだった。


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