第一章:異世界なのに鍋が気になる
これはAIが書いたものです
目が覚めた瞬間、俺は夢を見ているのかと思った。
木の天井。土壁。聞き慣れない鳥の声。鼻をつく藁の匂い。そして、なにより――
「なにこの鍋……やたら年季入ってる」
目の前のかまどに掛かる鉄鍋は、使い込まれた煤けた色をしていた。しかも火がついてる。誰かいる。俺は寝返りを打って起き上がった。
「よ、よかったー! 目ぇ覚めた!」
小柄な老婆が飛んできて、俺の顔を覗き込む。どこか懐かしさを感じる顔だが、会ったことはない。
「ここ、どこですか……?」
「ここは“ソラン村”。あんたは“選ばれし者”として、召喚されたのよ!」
うわ、来た。異世界テンプレ台詞。俺はついに異世界転生したらしい。
思い返すと、確かコンビニ帰りにトラックが――というか、いわゆる“トラック案件”だった気がする。
「で……俺、勇者なんすか?」
「いやいや、あんたの役目は“暮らし指導官”よ」
「……暮らし?」
老婆は嬉々として説明を始めた。どうやらこの村、疫病や食糧不足に悩まされていて、「救世主=生活改善のプロ」として異世界から俺が呼ばれたのだという。
「薪の割り方が下手でな。いつも指をケガするやつが多いんじゃ。あと、井戸水が臭い」
「いやいや、そんなことで俺呼ばれたんですか?」
「うん。だって“前世でひとり暮らし10年、趣味は生活改善動画巡り”って書いてあったから」
召喚の動機が地味すぎる。
「でもまあ、まずは飯でも食って、体力つけな」
老婆は鍋から汁をすくい、木の器に注いで俺に差し出す。具はじゃがいもと謎のキノコ、そしてほぐれた肉片。見た目はまずまず。でも――
「……煮えてないじゃんこれ」
食中毒警報が脳内で鳴る。火の入りが甘く、だしもなく、しかも器はちゃんと洗われていない。思わずため息が出た。
(まず、鍋を洗剤で洗いたい。スポンジがないなら藁束でも代用できる。井戸の水は沸かしてから使え。鍋底の煤は鍋が焦げやすくなるから取るべし――)
気づけば、俺の頭の中に“暮らし改善ポイント”が10個以上浮かんでいた。
「……やるしかないか」
勇者にはなれなかった。でも――この村、俺が変えなきゃ誰が変えるんだ。
「まずは石鹸から作ります。材料ください」
「せ、石けん……って何じゃ?」
老婆の目が丸くなる。
俺の第二の人生――いや、“第二の暮らし”が、こうして始まった。