第一話 アデルの出会い
初めまして。この度、この作品を書かせていただく、fuwaと申します。あまり文才はないのですが、皆さまに楽しく読んでもらえるよう、努力したいと思います。
誤字脱字やおかしい処がありましたら、是非伝えてくれると嬉しいです。
更新は不定期ですが、しっかり書き上げていきたいです。
又、短い!とか、分かりにくい!とか、あるかもしれません。作品の長さは統一されていません。皆さまの声に合わせて改善していきたいです。
では、これからもよろしくお願いいたします!
昔、世界には一人の女神が居ました。女神は、この世界の生命を、大地を、理を作り、やがて子供を二人産みました。
二人の子供は女神の神力を受け継ぎ、とても強大な存在になりました。しかし、神には一人しかなれませんでした。
二人の子供は互いを陥れ、神の座から引き剝がそうとしました。そしてついに、二人の子供のうちの一人が、もう一人を神界から突き落としてしまいました。
突き落とされた神は穢れ、神力を失いました。
神界に残った神は、自らを唯一神と名乗り、多くの生命に自らの存在を知らしめました。後に子供を作り、親族を増やしていきました。
突き落とされ、神力を失くした神は、神力の代わりに、魔力という力を生み出しました。魔力は、地上のあらゆるものを魔力によって操る、又は生み出す術でした。そうした魔術は、地上の奥の人間や精霊といった、知能のある者に親しまれ、普及していきました。
魔術の普及により、唯一神である自分を敬う者が減っていく事を、神は許しませんでした。神は、突き落としたもう一人の神を悪魔としました。そうすることで、魔術は禁忌とし、再び我が神力を求めさせようとしたのです。
目論見通り、悪魔とされた神は全ての者たちから恐怖され、姿を消しました。
そして神は、悪魔と、悪魔に付く者達をまとめて、亜空間へ追放してしまいました。後に、悪魔は恐怖されながらも、架空の存在とされるまで認識が薄れて行きました。
亜空間に追放された悪魔たちは、当然神力がないので、何もすることができませんでした。無限に広がる空間で、ただただ藻掻いていました。見かねた女神は、神に内緒で彼らに、新しい世界を与えました。そして、神にばれない様に、悪魔たちに新しい姿を与えました。
悪魔は艶やかな黒い髪と眼をした美しい女性の姿になり、他の者も皆、黒い髪と眼をもった姿に変わりました。その全てを吸い込んでしまいそうな黒には、膨大な魔力が秘められていました。黒い髪は魔力のある証でした。
女神は、唯一神にバレてしまわない様に、悪魔たちに目立つ行動を禁じ、悪魔を、魔女と名乗らせました。
女神が悪魔を逃がしたことを知った神は、激怒しました。そして、自らの神力で女神を殺してしまいました。女神は死ぬ直前、数滴の涙を流しました。その涙は、亜空間で大きくなり、やがて世界になって行きました。魔女がどこにいるか分からなくするためです。
(どうか、あの子たちに幸せが訪れますように………)
そして、神は全ての世界に自分の存在を知らしめ、奉らせ、見つけられずとも、悪魔たちの居場所を失くしていきました。
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「はい、アデル君。次のページ読んでください。」
半分寝かかっていたアデルは、慌てて教科書を手に取り、指定されたページを読んだ。
「はい。えーと・・・・・・・・・唯一神率いる神族は、邪な力を持った悪魔達と勇敢に戦いました。悪魔達は、僕たち人間を人質にしたりする卑怯な輩でしたが、唯一神は屈せず立ち向かい、犠牲者をほとんど出さずに悪魔達を退けました。」
「はい、良く出来ましたね。」
ふぅ。と安堵の息を漏らすアデル。冒険好きのアデルは、毎日近くの洞窟を歩きまわっている。そのせいか、疲れが溜まって、授業中寝てしまうのだ。
アデルは、神様の勉強は嫌いだった。勉強ができた訳ではないが、神様の勉強は、聞いてて面白くないのだ。だって、悪魔達と戦ったという功績を強調しすぎなのである。他にもいろいろあるが、どれも子供っぽい強調だった。こんなのが唯一神か、と心の中でほくそ笑む。
アデルは悪魔に興味があった。何故神族にああも敵にされているのか。本当に人間を人質にするような卑怯な輩なのか。魔術とはどんな物なのか。
洞窟探索もその気持ちからきている。アデルは幼いころ、あの洞窟で迷子になった。光も差し込まない暗い洞窟は、持っているランプだけでは頼りなく、灯も消えかかっていた。
ランプが消えれば魔物に襲いかかられるかもしれない。という不安が、アデルの足を竦ませていた。
そんな中、洞窟の奥から一人の綺麗な女の人が自分に歩み寄ってきた。
「大丈夫。外に連れて行ってあげる。」
この世ばかりか、他の世界の人でも有り得ない、黒い髪と、眼をしていた。とても美しい顔立ちで、艶やかな髪と、吸い込まれそうな黒い眼にドキッとした。
女の人は優しく微笑むと、手を握って歩きだした。女の人が、もう一方の手を前にかざしたと思ったら、その手が淡く光った。
それが何だったのかは分からなかったけど、淡い光だったのに、辺りを見渡せて、自分の不安を拭ってくれた。とても温かい光だった。魔物も寄ってこなかった。
洞窟の先に光があり、出口があることを示していた。ここまでくれば魔物は来ない。お礼を言おうと女の人を見ると、彼女は微笑み、洞窟の中へ戻って行った。
「待って!」と言おうとしたが、村の人たちに保護され、女の人は暗闇に消えて行ってしまった。
今思えば、あれが魔術だったのかもしれない。自分の知る神術や、精霊術には、あんな物はなかったはずだ。だとしたら、どうしてあんな温かくて優しい光が、邪な術をされていて、あまつさえ禁忌なのだろうか。アデルにはそれが不思議でならなかった。
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魔女たちは、ある洞窟に身を隠していた。四つある世界の中で、この洞窟は一つだった。というのは、この洞窟から全ての世界へ行けるし、全ての世界からこの洞窟は共通のものだからだ。とても広大なこの洞窟を開拓しようと、今まで数多の人間や精霊が入ってきたが、数少ない同胞のうちの一人が、それ等を全て追い払ってしまっていた。
魔女は、フレイヤは、そんな事をする必要はないと否定したが、我々の存在を唯一神に知られてはいけないからと、フレイヤの言うことを聞かなかった。
同胞達は二つに分かれた。フレイヤと、フレイヤの意見に賛成するレイドという男。そして、人間や精霊を追い払っていたギムという魔法使いと、その意見に賛成するクラッドとランディ。
互いは傷つけあったりはしなかったものの、お互いに干渉はしなかった。フレイヤもギムの考えには一理も二理もある。このまま人間や精霊に見つかって、唯一神であるバルバドスに見つかってしまっては、母の愛を無駄にしてしまうことになる。ギムも、女神を愛していたのだ。
だが、ギムは自らの魔力で動物を凶暴化させ、番犬のようにしている。人間や精霊に死者や負傷者が出てしまっているのだ。こんなことを続ければ、私たちは本当に悪魔になってしまう。フレイヤの考えを、ギムも分かってはいた。だが、こうするしかないのだと嘆く。
互いに意見を変える様子はないので、溝は埋まることはなかった。
ある日、一人の子供が洞窟内を立ち往生していた。手に持った、魔物を寄せ付けない神聖なランプの灯が消えかかっている。足を震えさせ、辺りをキョロキョロと見回している。
フレイヤはゆっくり歩み寄ると、少年と目が合った。最初は驚いていたが、少年の顔は次第に安堵に染まり、可愛く笑った。
人間や精霊は母の子供たち。フレイヤには彼らがとても愛おしく思えた。例え自らを陥れたバルバドスを崇めていても、フレイヤには彼らが愛しかった。
フレイヤは、バルバドスのことをあまり怨んではいなかった。考えてみれば、彼を陥れようとしたことだってある。もしかしたら、私が彼を神界から突き落としていたかもしれないのだ。そう思うと、彼を恨むのはお門違いに思えてきた。
フレイヤは、少年に微笑み返し、出口へと送った。寒くない様に魔術で彼を包み、洞窟内を見渡せるように光を照らした。
ギムの作った魔物は、フレイヤや同胞たちには手を出さない。なので、少年を無事外に送ることができた。
少年の姿を確認したのか、村人が此方へ向かってくる。さすがに見つかってはいけないと、私は洞窟内へ戻った。
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「アデル!」
ピンクを基調とした、フリフリの可愛らしいドレスを着た女の子が走ってくる。アデルはそれを見て、げんなりとした。
少女は、腰に手を当てて、どう?似合う?と自分のドレスをアピールした。このドレスは、母に買ってもらったお気に入りなのだ。一番最初にアデルに見せてやりたかった。
「カレン………お前な、今から洞窟に行くんだぞ?そんな恰好でどうするつもりだ。
中には魔物だっているし、そんなんじゃ歩きにくいだろう?」
言うと、カレンは仏頂面になった。
「分かったわよ………着替えてくるわよ。待ってなさいよ!」
そう言って、カレンは渋々家に戻って行った。戻る途中、ドレスに足が引っ掛かって転んでいた。
「やれやれ………とんだお姫様だ。」
アデルは頭を抱えた。
学校が終わり、今日から長期休暇だ。その間に出た宿題の中に、絵日記が合ったので、アデルはこの洞窟のことを書こうと決めた。
運が良ければ、またあの綺麗な人に会えるかもしれない。そう思ってのことだ。
カレンが一緒にやろうと言ってきたので連れていく。女の子にこんなことさせるのは危ないが、彼女は男勝りの怪力だ。俺もスポーツでは勝てない。
「アデル―!」
向こうから、今度はラフな格好をしたカレンが走ってくる。濃い藍色のその髪は、仄かにあの女の人を思い起こさせる。だけど、間近で見ると、やっぱりカレンはカレンだった。
アデルはため息をつく。
「何よ!レディの前でため息なんて、失礼じゃなくて!?」
はいはいと受け流し、アデルとカレンは洞窟に向かった。
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ギムは、洞窟に人が入ってくるのを感じた。
(また人間か………!)
数匹の魔物に、彼らを追い払うよう命じ、ギムは岩で出来た不格好な椅子に腰を下ろした。
自分の母を殺したバルバドスを、赦すことはできない。ギムは母を愛していた。その愛する母の命で、目立つ行動………ひいては、バルバドスへの反乱を禁じられたギムは悩んでいた。
特別な枷があるわけではない。やろうと思えば出来るのだ。ただ、簡単に負けてしまうだろうが………。女神への愛が、ギムを踏みとどまらせていた。
フレイヤ……お前さえ私に力を貸してくれれば、勝機はあるのだ……。第一子であるお前には、神力こそないが、大いなる器と、限りない魔力がある。俺は神力より、お前の作ったこの魔力の方が好きだ。だが俺じゃ、バルバドスを倒せるほどの魔力はない。
悪魔と罵られたフレイヤの心は、とても純粋なものだ。どうしてあんなに優しくて、素敵なフレイヤが、邪な術を使えよう?
ギムは、女神と同じくらいフレイヤを愛していた。
フレイヤは悪魔と呼ぶにはあまりに純粋です。
ギムやほかの同胞たちも、とても良い人ばかりです。ですが、ギムはみんなを守るためにバルバドスを殺す決意があります。
バルバドスという名前の由来は、強そうで傲慢で厳かな奴を想い浮かべたら、昔やったゲームにこんな名前の人がいた気がするので、勝手に使わせていただいております。
申し訳ございません。