再会
それからまたどれほどの時が流れただろうか。荒野には再び馬の蹄の音が響き渡り、砂塵の向こうから馬に跨った集団が現れた。レツヤ・サメジマは舌打ちをした。
「くそ、回復が遅すぎる。これではまた笑いものだ……」
彼の身体はまだ完全には元に戻っておらず、溶けかけた部分が辛うじて再生しつつある。馬の集団が近づいてくるのを見て、レツヤは憎々しげに彼らを睨みつけた。
その中で、一頭の馬に跨った目深にフードを被った人物が、ゆっくりとレツヤに近づいてきた。そして、冷ややかな声で言った。
「やれやれ、これで勇者と言えるのかねえ?」
その言葉に、レツヤの目が鋭く光った。彼はフードを被った人物を睨みつけ、怒りを込めて言い返した。
「何だって?お前誰だ!誰にものを言っている?」
フードを被った人物は馬から降り、レツヤの前に立った。
「久しぶりだね、レツヤ・サメジマ」
フードを被った老婆は、下卑た笑い声を上げながらレツヤを見下ろした。その声は、レツヤの記憶をかき乱すように鋭く刺さった。彼は老婆の顔をしっかりと見据え、怒りに震える声で叫んだ。
「おまえは……どうして生きている!」
老婆はレツヤをこの世に召喚した張本人だった。彼女はゆっくりとフードを脱ぎ、皺の深い顔に薄ら笑いを浮かべた。
「我らはね、あのくらいでは死なないさ。」そういってまた笑う。
「新鮮な血液さえあれば、我らにも再生能力くらいあるんだよ、勇者様」
そう言うと、老婆はレツヤに唾を吐きかけた。その行為に、レツヤの怒りは爆発寸前だった。
「この野郎!」
老婆は彼の怒りを無視するように、あごを掻きながら続けた。
「けど、おまえさん本当に勇者かねえ?伝説にある勇者とはだいぶ違うねえ」
レツヤは歯を食いしばり、怒りに満ちた目で老婆を見つめた。
「俺は勇者じゃねえ!お前らが勝手に勇者と呼んでるだけだろう!だいたい勇者って何なんだ?勇者ってのは善良な奴らを救う者の事を言うんじゃねえのか?」
老婆はまた笑った。その笑い声は、レツヤの心にさらに怒りを植え付ける。
「勇者の召喚方法ってのがあってねえ、まあ簡単にできる方法ではないんだが、その方法で召喚されるのが勇者さ。そいつはかなりの力を持って生まれてくる。だからほら、お前も相当に強かっただろう?ただ、期待以上に強くはなかったみたいだけどね。まあ、魔族を蹴散らすくらいには強かったみたいだけどね」
レツヤは老婆の言葉に耳を傾けながら、自分の過去を思い出していた。確かに、彼は強大な力を持っていた。だが、その力は彼を救うどころか、むしろ苦しめるものだった。
「さて、どうしたものかねえ?」老婆は独り言のように呟き、腕を組んで深く考え込んだ。彼女の目はレツヤ・サメジマに向けられ、その視線には冷酷な計算が浮かんでいる。
「おまえをもう一度生かすこともできるし、このまま放っておくこともできる。ただねえ、勇者召喚はおいそれとできるもんじゃあないからねえ……」
老婆はしばらく沈黙し、レツヤを見つめたまま思考を巡らせる。
「いま、私は悩んでるんだよ。何をだ?お前に我らに逆らえないようにする奴隷用の首輪をつけて、もう一度支配するか?それとも、捨てるかをだよ。ただ、お前は一度私を殺したからねえ。あの痛みは忘れられない……」
老婆の声には、憎しみと復讐心がにじみ出ていた。彼女はレツヤを睨みつけ、ゆっくりと口を開いた。
「そうか、お前に首輪をつけて、一度拷問してやろう。私の受けた痛みを返してやる。それから、おまえをまた飼ってやる。そうだ、そうしよう!」
老婆は高笑いを上げ、その笑い声は荒野に響き渡った。彼女は後ろで控えている配下の者たちに指図をした。
「やめろ!触るな!」
レツヤは必死に抵抗しようとするが、ドロドロに溶けかけた身体は思うように動かない。老婆の配下の者たちは、彼を無理やり馬に縛り付けた。その粗暴な扱いに、レツヤは怒りと屈辱で叫び続けた。
「やめろ!この野郎ども!俺はお前らの道具じゃない!」
しかし、老婆はただ笑い続けていた。彼女の目には、家畜をいたぶって楽しむような冷たさが浮かんでいる。
「騒げ、騒げば騒ぐほど楽しいよ、勇者様。これから、お前には長い時間をかけて、私の受けた痛みを味わってもらうからねえ……」
老婆の笑い声は、レツヤの叫び声と共に荒野に響き渡り、風に乗って遠くへと消えていった。馬に縛り付けられたレツヤは、老婆の配下の者たちに引きずられるようにして砂塵の中へと消えていく。彼の目には、怒りと無念の光が宿っていた。
「くそ……いつか……いつか必ず……!」
その言葉は風に消え、荒野には再び静寂が訪れた。
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オレンジ




