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ドランのため息

「勇者様が消えた、そうでございますぜ、ドラン様」


ドランゴドラ傭兵団の一員、その中でも古参の傭兵である男が、少しばかり間の抜けた声でそう言った。男の名は、確か龍椀のガルド。目の前にいる、豪快な笑い声がトレードマークの巨漢の傭兵団長だ。、頭であるドランはその報告に眉をひそめた。


「消えた、だと?どういうことだ、ガルド」


ドランゴドラの低い声が、宿屋の一室に響く。その声には、普段の陽気さはなく、僅かながらも苛立ちが滲み出ていた。


ガルドは身をすくませながら、慌てて説明を始めた。


「ええ、それがですね。聞いたところによると、勇者様は、ソルゼ王国を一人で出て、どうやらサイノッテ方面へ向かったようなんですが…その後、消息が全く掴めないらしいんです」


「サイノッテは資源が豊かだからなあ。リュカン王はサイノッテを取って、ヴェルディアを取れば御の字だからなあ。しかし、一人で行くとはあのきかん坊もついにヤキがまわったか」


ドランは不敵に笑った。



「ソルゼの竜騎士たちが、総勢で空から捜索したらしいんですが、それでも見つからなかったとか。まるで、最初から存在していなかったかのように、痕跡すら残っていないそうですぜ」


「ほう…」


ドランゴドラは、顎に手を当てて考え込んだ。勇者が消えた。それは、この世界を揺るがす大事件だ。まあ、今回は人々にとって良いだけで、ドラン達には少し都合が悪い。何せ混乱に乗じて悪さをするのが常套手段だからだ。まさか、本当に魔物に喰われたのか?しかしあの勇者が魔物に食われることはあるまい。何か別の理由でどこかに隠れているのか?


「まあ、勇者様の事ですし、どこかで呑気に寝ているだけかもしれやせんぜ」


ガルドは、呑気な言葉を口にする。いつも、こんな調子だ。


ドランゴドラは、その言葉にため息をついた。楽観的なのは良いが、状況を理解しているのか。


「呑気に寝ているだけなら良いがな…まあ良い。この件、もう少し詳しく調べろ。何か分かれば、すぐに俺に報告しろ」


「はっ、承知いたしました!」


ガルドが部屋から出て行こうとすると、ドランが呼び止めた。


「聖なる鍵の捜索も引き続き急げ、リュカンの金を存分に使ってな。最後には俺らのものにするんだ。」


「心得てまさぁ」


ガルドは元気よく返事をすると、部屋から出ていった。



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