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竜騎士の誇り

獣族の村に到着すると、ユリ王女達は思いがけない歓迎を受けた。


「ユリ様ー! ユリ様ー!」


元気なヒキガエル族の子供たちが、ユリ王女の周りに集まってきた。小さな手がユリの鎧に触れ、黄色い瞳がキラキラと輝いている。村の家々からも、


「ユリ様じゃあ、よく来てくださったのう」


と、ヒキガエル族や他の獣人たちが笑顔で出迎えてくれた。久しぶりの王女の訪問に、村全体が活気に満ちている。


ユリは一人一人に丁寧に挨拶をしながらも、内心は焦燥感でいっぱいだった。視線は群衆の中を彷徨い、ある人物を探している。


「あの…皆さん…この辺りでは見かけない、冒険者風の男を見かけませんでしたか?」


ユリは尋ねた。勇者レツヤ・サメジマ。彼こそが、ユリが探し求めている人物だった。


すると、先ほどまで元気いっぱいに跳ね回っていたヒキガエル族の子供たちの動きが、ぴたりと止まった。彼らは顔を見合わせ、意味ありげな視線を交わし合う。


「……怪しい男?」


一人の子供が小さな声で呟いた。他の子供たちも、こくりと頷く。


「知らない!」

「みてない!」


「私たちずっとここで遊んでたけど、人間は来てないよ!」


一番年長の女の子が答えた。




勇者の姿が消えた。ユリ王女は腕を組んで考え込んでいた。


「まさか、転移魔法みたいなものを使えたのか?」


ハナスが独りごちると


「勇者様と名があるくらいですから、転移魔法くらい使えても不思議ではありませんね」


リベットが答えた。


「とにかく、危険人物が見えなくなった以上、どこかで被害が出ていないか情報収集が必要だ」とルシウス。


「まさか…リュカン王が嘘をついている?」


言ってユリ王女の表情が険しくなった。


「我々は騙されたのか?」


ヴェルディア王も焦りの色を隠せない。


「もしそうだとしたら、狙いはサイノッテに違いありません!」


ヨルセフが焦りを抑えきれずに言った。


「それはありえません!」


ソルゼ王国の竜騎士の大隊長が息を切らし、ユリ王女のもとへ駆けてきた。


「我々はソルゼの中でも最も気高く、位の高い騎士として任命されております。その我々を囮として使い、サイノッテ王国を無人にして、その間に兵を向けるなどという卑劣な戦法を取ることはリュカン王、また、ソルゼ王国の名に懸けて決してありません!」


大隊長の声には強い憤りが込められていた。竜騎士たちは誇り高く、正々堂々とした戦いを信条としている。そんな彼らを謀略に利用したと疑われたことは、彼らにとって大きな侮辱だった。


「万が一、万が一にも、我が王が裏切り、我々竜騎士に何も告げず、サイノッテ王国を攻めるようなことがあれば、我々竜騎士総勢五十七名は自害いたします!」


大隊長の覚悟を込めた言葉に、ユリ王女たちは言葉を失った。そこまで言い切る彼らを信じないわけにはいかなかった。


沈黙を破ったのは、魔法使いであり策略家でもあるセルフィーヌだった。


「それでは、竜騎士の皆様、その機動力を活かして、手分けして上空から勇者を探していただけませんか?」


大隊長はセルフィーヌ、そしてユリ王女に視線を送り、「心得ました」と深く頭を下げた。すぐに部下たちに指示を出し、竜騎士たちは巨竜に乗り、轟音とともに一斉に空高く散り散りに飛び立っていった。

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