坊ちゃんは優しい!
別室へと通されたヴェルディア王、ソノマ、ヨルセフ、ルシウス、ハナフィサ、ハナスはまだ小さいが増幅の祝福でルシウスをはじめ様々な人のアシストをするということで、同席を許された。リベットはハナスの世話係として隣にいる。この部屋に獣人で入ることができたのは、今までリベット以外いなかった。サイノッテ王国では獣人や奴隷差別を禁じてはいるが、それでも奴隷がいないわけではない。また獣人差別も街中では根強かった。
部屋に入った者たちの表情は、一様に緊張して凍りついたような厳しさを湛えていた。
マリエル皇后が座り、ユリ王女が隣に座る。彼女の視線は、部屋全体を静かに、されど鋭く走査する。
皇后マリエルは、静かにしかし力強く語り始める。「実は」と前置きし、全員を見渡す。「先ほどソルゼ国からリュカン王の使いの者が来ました」
その瞬間、部屋全体が、目に見えない殺気で満たされた。剣呑な空気が、まるで電流のように走り抜ける。
マリエルは、優雅に、されど毅然とした仕草で、その殺気を制した。まるで嵐を手のひらで押さえ込むかのように。
彼女は、リュカン王の文面を読み上げる。「世界で暴れまわって民を苦しめていた勇者の居所を突き止め、一旦雇用の名目で、我が国にとどめおいた。我が国としては、貴国らに応援を求め、勇者を討伐したいと考えている」
皆が一瞬何のことか理解が及ばず、顔を見合わせる。
マリエルは続きを読み上げる
「どうか良い返事を聞かせてほしい。世界の民のためだと思って、貴国らの力を我が国に貸してはくれぬだろうか、共に戦い勇者討伐に助力を、熟慮願いたし。ソルゼ王国リュカン王」
重圧のような沈黙が、部屋を覆う。
ガタンという鈍い音と共に、椅子が倒れる。
ヴェルディア王が、まるで雷に打たれたかのように立ち上がった。「それでは此度の戦はリュカン王の策略でもたらされた勇者討伐のための茶番だと言ってるのですか?」激昂した声が、静寂を裂く。
マリエルは、一枚の薄氷のような静けさで、リュカン王の文面を見つめながら息を吐いた。「この文を信じるなら、そういうことになりますね」
「そんな馬鹿な!」
ヨルセフの声は、嗚咽に近い。深い疑念と怒りが、その一言に込められていた。
「けしからんことですな、勇者風情の討伐のために、二国を巻き添えとするとは」
ソノマが冷徹な声で付け加える。「まさに、策略としか言いようがありませんね」
そんな激論の中、ルシウスだけが、冷静に、されど重みのある声で言った。
「しかし、それが本当でしたら、いずれ訪れるかも知れない勇者による暴力を止める良いチャンスかもしれません」
部屋全体を、静かな、されど鋭い緊張が包み込んでいた。
重々しい空気の中で、ルシウスに向けて静かに口を開いた。「父さん」。その一言が、部屋の冷たい空気を震わせる。
ルシウスは何だい?といった表情でハナスを見る。
ユリ王女は、その様子を柔らかな目差しで見守っていた。わずかに揺れる王女の唇には、優しい微笑みがこぼれている。
「これがリュカンという王様の何らかの罠だったとしても、戦場を街ではなく、何もない荒野にすること要求できるよね?」
幼い声から紡ぎ出される大人びた言葉に、周囲の者たちは、驚く。
ヴェルディア王は、瞬きひとつせずにハナスを見つめながら、低く問いかけた。「ハナス、それはどういうことだ?」話したこともないヴェルディアにハナスと呼ばれて、面食らったが、ああそういう事かとすぐに察した。
ハナスの姿に化けたシルベアとヴェルディア王はすでに旧知の仲なんだな。
「つまりですね」ハナスは、冷静に説明を始めた。「戦場を街以外にしてしまえば、民間人は傷つかないでしょ。その上で確実に勇者を倒せる方法を考えたらって思ったんです」
「おお、そうだなハナス!やっぱり賢いなワハハ、それに今日は敬語なんだな珍しいワハハ、熱でもあるのか?」
ヴェルディアの声は、まるで我が子を自慢するかのような温かさに満ちていた。
周囲の者たちは苦笑を零す。
ユリ王女は、小さく、そして意味ありげに笑った。「本当に賢いわ」彼女の視線は、ハナスから義兄へと移る。
「義兄さん、しばらく見ないうちに変わったわね。そんな義兄さんの姿を見るのははじめてよ」
そう言ってユリ王女は小さく笑った。
ヴェルディア王は照れたのか、頭をかいていた。
その様子に、場がいつのまにか和んでいた。
その間、ハナスの脳裏では、無数の可能性が、まるで微細な糸のように絡み合っていた。今この瞬間こそ、自分の壮大な構想を現実へと紡ぎ出す、かけがえのない好機かもしれないと思った。
「リュカン王の手助けに当たって、かの国に取引を持ち掛けたいのです!」
思わず言った言葉は、部屋の静寂を、繊細な震動のように横切った。
取引とは?皆の表情には、戸惑いと、そして秘かな好奇心が交錯する。
「申してみよ、私たちにも分かるようにな。ホホホ」
マリエル皇后の笑い声は、軽やかで、それでいて鋭い知性を湛えていた。まるで、少年の発言を試すかのような、愉快な挑発。
ハナスは、深い深呼吸をして、まるで大人の外交官のように、言葉を慎重に紡ぎ始めた。
「今回の件で一時的にも三国が手を取るなら、それと引き換えに三国の貨幣をヴェルディア通貨に統一して、今後、サイノッテとヴェルディアとの交易には、ソルゼ王国もヴェルディア通貨で交易を行うようにしたいのです。」
言葉が部屋に漂う。
一瞬の静寂。
皆、ポカンとした表情で固まる。戦略の話でなく、貨幣の話? 少年の口から紡ぎ出されたその提案は、まるで誰も予想だにしなかった、まったく異なる話に思えた。
ヴェルディアが思わずハナスを庇うように立ち上がる。「子供のいう事だからなあ、ハナス.......」
「続きを、詳しく聞かせてくれるかしら?」
鋭く、そして研ぎ澄まされた声が、ヴェルディア王の言葉を遮った。それは、ユリ王女の声だった。
ハナスは緊張を押し殺すように、静かに頷いた。
「これは皆さんにも承諾していただかなくてはなりませんが」
前置きを置いた後、核心に迫る。
「まず、結論から言います。この経済戦略が上手くいった暁には、三国が大いに潤い、活気づき、そして三国から貧困がかなりの確率で排除されます。それにソルゼ王国は今後、ヴェルディア王国はおろか、サイノッテ王国にも軽はずみに手出しできなくなるでしょう」
静寂が、わずかな間、部屋を支配した。
その時、ハナフィサが口を開いた。
「我が街ミストベールでは、ハナスちゃんの経済政策によって、貧民街が姿を消しました」
彼女の声には、誇らしげな響きがあった。
「そうよねえ、ハナスちゃん」
ルシウスもまた、静かにうなずいた。
「その通りだ」
部屋は、静かな期待と、わずかな希望に満ちていた。
「ハナスよもう少し分かりやすく説明してくれんか?」
ヴェルディア王の促しに、ハナスは真っ直ぐな瞳で周囲を見渡した。緊張は感じられず、むしろ自信に満ちた表情だった。
「まず、ヴェルディア通貨を三国の共通通貨にします」
彼の言葉は、静かでありながら力強かった。
「何故ヴェルディアかというと、三国の中で最も領土が広く資源が多いからです」
マリエル皇后は、わずかに身を乗り出した。彼女の鋭い目つきは、ハナスを見逃さない。
「そしてそのヴェルディア通貨でなければソルゼ王国はこれから交易をすることが出来ないようにします」
一瞬、部屋に緊張が走る。
「そのあと、ヴェルディア、サイノッテ、ソルゼの要所要所に、通貨発行所を設けます」
マリエル皇后は、軽く息を呑んだ。
「ほう、通貨発行所とな」
彼女の一言は、ハナスが並の少年ではないことを、はっきりと告げていた。
ハナスは、まるで何十年もの経験を積んだ経済の専門家であるかのように、抜け目なく説明を続けた。
「通貨発行所では、人々が自分の持っている金を盗賊に奪われないように、安全に預けておくことができます。その引き換え券としてヴェルディア通貨が発行されます。これで盗賊からの被害は格段に減ります」
彼の言葉は、冷静で論理的だった。
「通貨発行所には衛兵が配備されているため、容易に金を盗むことは出来ないようにします。また一定以上の金は通貨発行所からもっと秘密の場所へ移します」
まるで、すでに実践されているかのような確信に満ちた物言い。彼の年齢を忘れさせるほどだ。
ユリ王女は、思わず息を呑んだ。
普通の少年ではない。彼の言葉は、国家の未来を変える力を秘めているようだった。
ハナスは、一人一人の顔を見渡しながら、最も重要な点を語り始めた。
「そして、通貨発行所を通して、預けられた金より多くのヴェルディア通貨を発行し、庶民はもちろん、貴族、王族、商人、あらゆる人に利子をつけて貸付も行います」
静まり返った部屋に、ヴェルディア王が疑問を投げかけた。
「預かった金以上に通貨を発行したら、大問題が起きるのではないか?」
その問いに、マリエル皇后が鋭く応じた。
「問題は起きんよヴェルディア殿。何故か、金より多くのヴェルディア通貨を発行しても、預けた金を全部返してくれとやってくる者が一度に押し寄せることはないからだ」
皇后は言って、ハナスを見つめた。
「ご明察です」
ハナスは恭しく頭を下げる。
「さすが皇后陛下で御座います」
マリエルは、その様子に微笑み、「ホホホ」と高らかに笑った。
「万が一、一か所の通貨発行所に民が押し寄せて、金への両替を訴えたら、各地にある通貨発行所から、金を用立てます。その為にも各地に作ります。他の国の発行所にも同時に民が押し寄せることはほぼほぼないと言っていいと思います」
この瞬間、部屋の空気は、驚きと不安とまだ理解しきれない思いに包まれていた。
ハナスは、さらに熱を帯びた語り口で説明を続けた。
「この方法を、通貨を創造で作り出す意味を込めて、『創造通貨』と呼びましょう」
彼の瞳は、まるで遠い未来を見つめているかのようだった。
「金の何倍もの通貨が発行されるのです。自然に通貨は増えてゆき、人々の暮らしは潤うでしょう」
一瞬の間、部屋は静まり返った。
「そして、市場で通貨が溢れ価格が高騰する前に、それを押さえるために税金で間引きます。これで市場のバランスが生まれます」
ハナスは、まるで街の未来を語るように、力強く続けた。
「そして、国が潤ったころ、そこで時機を見て、僕の住む街、ミストベールと同じように無条件通貨分配制度を導入します!」
彼の言葉は、夢想家の言葉であるようで、だが、同時に、冷徹な経済学者の洞察にも感じられた。
周囲の大人たちは、まるで魔法にかけられたかのように、その少年の言葉に聞き入っていた。
「そうなのです!坊ちゃんはすごく優しいのです。この無条件通貨分配制度によって、ミストベールでは飢えて亡くなる人が誰もいなくなったのです。冬でもみんな幸せなのです!!!」
おもわずリベットが興奮して大きな声をだした。
突然、自分の大声に気づいた瞬間、一斉に向けられた視線に、リベットは小さく縮こまった。
「ううう.......申しわけありません」
しかし、ユリ王女は優しく微笑んだ。
「良いのよ。自由に発言なさい。あなたはハナス君の事が大好きなのね?」
リベットは、ユリ王女の優しい言葉に、照れくさそうにした。
ユリ王女が、静かに言葉を紡いだ。
「つまり、すでにミストベールの街で成功している確実な方法なのですね?」
ハナスは、迷いなく即座に応えた。
「はい!確実です。」
マリエル皇后が、感嘆の声を上げた。
「見事だ少年!」
そして彼女は、ヴェルディア王に鋭い眼差しを向けた。
「どうだヴェルディア殿よ、お主はその少年の案に賛成か?反対か?」
ヴェルディア王は、慎重に言葉を選んだ。
「私の頭では理解が及びませんが、ミストベールの報告は受けています。王都もかの地のように潤うのであれば、賛成いたします。」
部屋の空気は、期待と可能性に満ちていた。
ヴェルディア王は、こっそりハナス近寄り、耳にささやいた。
「ハナスよ、ミストベールの発展は聞いていたが、ワシに黙ってお前が全て手引きしていたのか?」
「は、はい陛下」
ハナスが緊張して答えると、ヴェルディアがあごをかいた。
「今日のお前はまるで別人じゃのう」
言って豪快に笑った。
お金についてややこしい部分もあるので、最初は自分で書こうと思いましたが、今は時間がないのでとりあえずAIさんに頼んで書いてもらいました。また、機会があれば加筆修正したり、自分で書くかもしれません。
1. 金本位制:お金は「金」そのものだった時代
昔々、お金は「金」そのものでした。金は希少で価値が安定していたので、人々は金をお金として使っていました。これが「金本位制」です。
イメージ: 例えば、あなたが10グラムの金を持っているとします。それは10円の価値がある、というような感じです。
良い点: お金の価値が金の量で決まるので、インフレ(物価が上がり続けること)が起こりにくく、安定していました。
悪い点: 国が持っている金の量以上にお金を発行できないので、経済が成長しにくい、災害などで急にお金が必要になっても対応しにくい、などの問題がありました。
2. 信用創造:銀行が「お金を増やす」魔法?
金本位制の限界から、人々は「銀行」を上手に使うことでお金を増やす方法を編み出しました。これが「信用創造」です。
イメージ:
あなたが銀行に100円預けます。
銀行はその100円をAさんに貸します。
Aさんはその100円を使ってBさんの店で買い物をします。
Bさんはその100円を銀行に預けます。
銀行はその100円をまたCさんに貸します…。
このように、実際には100円しかないのに、銀行が貸し借りを繰り返すことで、社会全体で使えるお金が増えていくのです。
ポイント:
銀行は預かったお金の一部を「準備金」として残し、残りを貸し出します。
この貸し出しが、新しいお金を生み出すのです。
良い点: お金が増えるので、経済が成長しやすくなります。
悪い点: 銀行が過剰に貸し出すと、インフレが起こりやすくなったり、バブル経済が起きたりすることがあります。
3. 現代貨幣理論(MMT):お金は「国の信頼」でできている?
信用創造を経て、現代ではお金は金のような実物ではなく、「国が発行する紙幣」が中心になりました。そして、最近注目されている考え方が「現代貨幣理論(MMT)」です。
MMTの考え方:
国がお金を発行するのは、税金を徴収するためではありません。
税金は、経済を安定させ、インフレを抑えるために使うものです。
国は、お金をどんどん発行して、社会に必要なサービス(教育、医療、インフラ整備など)にお金を使うべきです。
ただし、あまりにもお金を使いすぎるとインフレになるので、そこは注意が必要です。
イメージ:
お金は、国という会社が発行する「株券」のようなものだと考えてみましょう。
国が信用され、国民が安心して使える限り、お金は価値を持ちます。
ポイント:
国は、財政赤字(お金を使いすぎること)を恐れるあまり、必要な社会サービスへの支出をケチるべきではない、という考え方です。




