生まれ変わり?
神里龍は落ちた!
車いすごとビルの上から空中に吹き飛ばされた。
あ とか う とか 訳が分からないまま一瞬だった。
龍の記憶は途切れた。
気が付くと誰かに抱かれていた。
「..........XXXXXXXXXXXXXXXXX」
興奮した様子で、龍を抱いている夫人が聞いたことのない言葉を発した。
ひげを生やした男と、綺麗な女の人が龍をのぞき込んできた。
二人とも嬉しそうだ。
あれ?
俺はビルから落ちたはずじゃ?
そう考えながら、なんとなく自分の体が赤子のものであると分かる。
これが、生まれ変わりってやつか?えっ、今落ちたとこだぞ?生まれ変わるってこんなに早いのか?
龍は回らない頭で様々な思考をめぐらせた。
生まれ変わって、また人間になったことは分かるけど、どう見たってここは日本ではないな。目の前の人たちも日本人じゃないし。西洋人だし。
てか、俺の両親か?この西洋人が?
ここは殺風景な部屋だが、時代もすごく古いような気がする。
それから、龍は長い廊下を移動し、階段を幾段か上がって違う部屋へと連れてこられ、木造りのベッドの上に寝かされた。
何か変な匂いがするな。匂いなれないというか、外国に行ったときに感じるような感覚だ。
そうこうしているうちに、龍は身体を拭かれたり、ミルクを飲まされたりしているうちに眠くなって寝てしまった。寝むりに落ちながらうんちが出るような感覚があったが、あらがうことは出来なかった。
次に目覚めたときは、またあの綺麗な女の人に抱かれていた。彼女は龍を抱きながら歌を歌っていた。
龍と目が合うと、彼女は優しく微笑んだ。その微笑で龍は安心した。
生まれ変わったのに記憶がある。これは何だかすごいな。けど、変な感じだ。良い記憶とは言えないしな。俺の生まれ育った時代の日本は嫌な時代だった。先進国と呼ばれていたものの若者の自殺者は先進国でトップだったし、貧困家庭の子供もたくさんいて、街には子ども食堂なるものが市民の善意で作られていた。国は貧困に対して何もしなかった。龍はどん底の貧困こそ味わったことがなかったが、それでも裕福なほうではなかった。そして、ある日事故で立てない体になってしまった。そうなってからは、より苦しい日々を送った。
そんな記憶を持って生まれ変わったのだ。良いのか悪いのかわからん。
龍はそう思いながら、足の指を開いたり閉じたりした。そして満足そうに微笑む。ここだけは嬉しいな。俺の足は動く。立てるようになったら、もっと大きくなったら、走り回れるはずだ。これほど嬉しいことはない。
そんな感動を覚えていると眠りに落ちた。突然にやってきた睡魔とともに、股間からおしっこが漏れるような感覚があったが、あらがうことは出来なかった。
次の目覚めは唐突だった。
大きな音や、悲鳴が聞こえて、龍は髭の叔父さんに抱きかかえられた。おじさんは何かから逃げているようだった。龍を抱いたまま叔父さんは馬に跨り、勢いよく駆けだした。
馬の揺れは酷いものだった。龍は叔父さんに抱きかかえられて目覚め、そのままひどい揺れに見舞われたのだ。胃から何かが上がってきて苦しくなるのを何度も感じた。
そこへ、馬に乗った変な男どもが近づいてきた。
叔父さんの胸の中にしっかり抱かれていた龍には、殆ど周りの景色が見えなかったが、叔父さんが自分を守ろうとして、切りつけられていることは分かった。
ちょっと、マジかこれ。ええ、マジ怖い。シャレになんねえ。
叔父さん、大丈夫か?
そうして、しばらく逃げていた叔父さんだったが、落馬するように倒れこんだ。
龍はとっさに目を閉じて、衝撃に備えたが、どうやら誰かに抱き留められたようで、予想以上の衝撃が来ることはなかった。
龍が見ると、銀髪のハンサムな男が叔父さんに何か叫んでいた。
銀髪の隣には金髪の大きな男もいる。こちらも何か叫んでいる。
しばらくして、ひげの叔父さんは死んでしまったのだと龍は悟った。
銀髪の男に抱かれて、龍は彼のハンサムな顔を見ていた。彼は龍の頬を指で優しくなでると、何か覚悟を決めたような顔をしていた。




