イーリスへ2
「ラウラさん、リリスさん、本当にありがとうございます!二人のおかげで、様々な人々の苦しみを解くための手がかりが掴めそうです」
ハナスは、ラウラとリリスに深々と頭を下げた。新たな希望を胸に、彼の表情は明るい。
「ううん、こちらこそ、ハナスくんとリベットちゃんの熱意に心を打たれたわ。頑張るのよ」
ラウラはハナスに優しい微笑みを返し、リベットの頭を撫でた。リベットは嬉しそうに目を細める。
「私たちも、精油と魔法薬の配合について、早速研究を始めるわ。何か進展があれば、すぐに連絡するわね」
リリスは、好奇心に満ちた瞳でハナスを見つめた。魔法と精油の融合という新たな可能性に、彼女もまた興奮を抑えきれない様子だ。
「ありがとうございます!またミストベールで会いましょう!」
ハナスは力強く答えた。
「じゃあ、またね!」
リベットも元気に手を振る。
ロクスとナミダも二人に続いて挨拶をした。
「気を付けて行くんだよ」
ラウラが見送る中、四人は馬に跨った。
「いよいよイーリスですね、坊ちゃん」
馬が歩き出すと、リベットはワクワクした様子でハナスに話しかけた。
「うん。ナミダさんのお母さんの苦しみを、早く終わらせたい」
ハナスは真剣な表情で頷き、広がる景色を見つめた。
「きっとうまくいきますよ、坊ちゃん。」
ロクスはハナスとリベットを見て、コクリと頷く。
「皆さん本当にありがとう。みんながいなければ私もこうして明るい前向きな気持ちになれなかったわ!」
ナミダがいうと、リベットは嬉しそうに尻尾を振った。その様子を見て、ハナスたちも笑みがこぼれた。
蹄の音に合わせて、リベットの猫耳が風にピクピク動く。石畳の道は、目指すイーリスへと続いていた。
「いよいよですね、坊ちゃん」
リベットがハナスに話しかけると、その碧眼は期待に輝いていた。ハナスは真剣な表情で頷き、地平線に浮かび始めた村影を見つめる。
「うん。」
「きっとうまくいきますよ、坊ちゃん」
リベットの励ましに、ハナスは小さく微笑んだ。
旅の始まりは不安でいっぱいだったナミダも、今では三人のおかげで希望を取り戻している。
「皆さん本当にありがとう。みんながいなければこうして明るい前向きな気持ちになれなかったわ!」
ナミダの言葉に、リベットは嬉しそうに尻尾を振った。
その様子に、ハナスとロクスもつられて笑みがこぼれる。温かい空気が一同を包み込んだ。
やがて、視界の先にイーリスの全貌が姿を現した。まるで絵本から飛び出してきたかのような、メルヘンチックな村だった。
家々の屋根は鮮やかなオレンジや青で彩られ、そのほとんどにとんがり帽子をかぶった煙突が立っている。
魔法使いが多いというだけあって、道行く人々は皆とんがり帽子をかぶり、まるで魔法の国の住人のようだった。
空気には薬草の香りが満ちている。イーリスは薬草栽培でも有名で、村全体が薬のような、どこか懐かしい匂いに包まれていた。
甘い香り、少し苦い香り、様々な薬草の香りが混ざり合い、独特の雰囲気を作り出している。
しばらく馬で村の中を進んでいくと、ナミダが借りているという小さな家が見えてきた。レンガ造りの可愛らしい家で、煙突からは白い煙が黙々と立ち上っている。誰かが薪をくべているのだろう。温かいスープの匂いが、薬草の香りと混ざって、ハナスたちの空腹を刺激した。
この小さな家で、どんな出会いが待っているのだろうか。ハナスは胸の高鳴りを抑えながら、馬を降りた。
ナミダが最初に小走りになった。彼女は家の前で一度深呼吸をするように胸いっぱいに空気を吸い込み、満面の笑みで玄関の扉を開けた。
「ただいま、お母さん!」
ナミダの声が家の中に響き渡る。ハナス、リベット、ロクスはその後をついて家の中に入ったが、玄関を入ったところで立ち止まった。
荷物を抱えたままキョロキョロと辺りを見回す。中はこじんまりとしていながらも綺麗に整頓されており、暖炉の火がパチパチと音を立てて燃えていた。
「実はね、お母さん、痛みを治してくれる友達を連れてきたの!」
奥の部屋からナミダの声が聞こえてくる。どうやら母親と話をしているようだ。
ハナスたちは顔を見合わせて小さく頷き合う。ナミダの母親に会うのは、これが初めてだった。どんな人なのだろうか。
期待と少しの緊張が入り混じった気持ちで待っていた。
しばらくすると、ナミダに連れられて、彼女の母親が現れた。その姿を見たハナスたちは、驚きを隠せなかった。ナミダの母親は、想像していたよりもずっと小さかったのだ。
身長はハナスと同じくらいだろうか。まるで小人族のような、小さな女性だった。
「はじめまして、皆さん。ナミダがお世話になっているようで、ありがとうございます」
小さな体にもかかわらず、その声は落ち着いていて、温かみがあった。彼女はハナスたちを穏やかな笑顔で見つめている。
「えっと…はじめまして」
ハナスが代表して挨拶を返す。
「まあまあ、可愛い坊やね。フローラよ、よろしくね」そう言ってナミダの母はハナスにウインクした。
「驚かせてしまってごめんなさいね。私は小人族なの。ナミダとは血は繋がっていないのよ」
ナミダの母親は、ハナスたちの驚きを察したように、自分の出自を明かした。
「血が繋がっていない…?」
ハナスは思わず聞き返した。
「そうなの。私は昔、森で迷子になっていたところをナミダのお父さんに助けられたの。それからずっと、ナミダの家で一緒に暮らしていたのよ」
フローラは、懐かしそうに遠い目をする。
「ナミダのお父さんとお母さんが亡くなってからは、私がナミダを育ててきたの。本当の親子みたいでしょ?」
そう言って、フローラは優しくナミダを見つめた。
ナミダもまた、母親に微笑み返す。二人の間には、本当の親子のような強い絆が感じられた。
「そうだったんですね…」
ハナスは、ようやく状況を理解した。小人族、血の繋がらない親子。ナミダの背景には、ハナスたちが知らなかった物語があった。
「さあさあ、皆さん、どうぞおかけになって。温かいお茶を用意しましょうか」
フローラは、小さな体で椅子を運んできた。ハナスたちは、その心遣いに感謝しながら、椅子に腰かけた。




