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かしこいリリス

 工房の空気が少しずつ変わっていくのを、ハナスは敏感に感じ取っていた。


 リリスという少女から漂う不思議な魔力の波動。それは普通の魔法使いのものとは明らかに違っていた。まるで…まるで古の魔法書に描かれた伝説の術師のような、深く静かな力を感じる。


「あの、この瓶の中身について教えてもらえませんか?」


 ハナスは、薄紫色の液体が入った小さな瓶を指差した。その瞬間、リリスの瞳が不思議な光を放ったように見えた。


「それは…」


 リリスは言葉を選ぶように、少し間を置いてから答えた。


「夜明けの霧を濃縮して、月下で三日間熟成させた特殊なエキスです。呪いを解除する効果があるんです」


 その説明を聞きながら、リベットはリリスから目が離せなかった。獣人特有の鋭い直感が、この少女が普通ではないことを告げている。しかし、それは危険という意味ではなく…どちらかといえば神秘的な存在としての神々しさだった。


「すごい!」


 ハナスの目が輝いた。


「それって、普通の魔法使いじゃあできないですよね。すごい技術です…確かにこの瓶の中には強い魔力が渦巻いている」


 ラウラは、そんな二人のやり取りを温かく見守っていた。時折、ナミダと視線を交わしながら、小さくうなずき合う。


「坊ちゃん、もう少し落ち着いて」


 リベットが言った、その声には微笑みのようなものが含まれていた。彼女もまた、この場の不思議な雰囲気に飲まれているようだった。


「リリスさん」


 ハナスは真剣な表情で彼女を見つめた。


「僕に、魔法薬の作り方を教えてもらえませんか?きっと、魔法薬と精油の融合で新たな可能性がある何かができそうな気がするんです」

 「魔法薬と精油の融合……!」


 ラウラはハナスの一言に、目を見開いた。優雅な仕草で口元に手を当て、驚きを隠せない。


「おや、近頃話題になっている精油は、坊ちゃんのところの品だったのかい。ここらで一般に出回る虫除けの精油じゃなくて、オレジの実から精油を採ったんだろ。それがかなりのリラックス効果が出るらしいじゃないか、目の付け所が違うって感心してたんだよ。それは私も興味が出てくるねぇ」


 ラウラは興味津々にハナスを見る。ロクスも静かに頷き、ラウラに同意を示した。


 リリスは、紫色のエキスが入った瓶を大事そうに抱えながら、ハナスを見つめ返す。


「魔法薬と精油の融合……それは、私も考えたことがありませんでした。確かに、精油には自然の力が凝縮されています。それを魔法薬に利用すれば、もっと強力な効果が得られるかもしれません」


 リリスの瞳は、好奇心で輝きを増していく。


「例えば、この呪いを解くエキスに、リラックス効果のあるオレジの精油を加えれば、呪いを解く過程での精神的な負担を軽減できるかもしれません。


 あるいは、治癒効果のある魔法薬に、肌の再生を促す精油を加えれば、傷の治りが早まるだけでなく、跡も残りにくくなるかもしれません」


 リリスは、様々な可能性を思い浮かべ、興奮した様子で語り始めた。


「すごい!リリスさん、頭いいですね!」


 ハナスは目を輝かせ、リリスのアイデアに感嘆の声を上げる。


「でも、魔法薬と精油の配合は、とても繊細な作業になると思います。精油の成分によっては、魔法薬の効果を阻害してしまう可能性もあるからです」

 リリスは眉間にシワを寄せて何やら考え込む。


「そうですね。だからこそ、慎重に実験を重ねて、最適な配合を見つける必要がありますね」ハナスがいうと


 リリスは真剣な表情で頷く。


「ハナスくん、もしよろしければ、私にも協力させてくれないかい?」


 ラウラはハナスに微笑みかけた。


「もちろんです!ラウラさんの豊富な知識と経験があれば、きっと素晴らしいものができるはずです!」


 ハナスは喜び、ラウラの手を握る。


「私もお手伝いします!!」

 リベットも笑顔で名乗りを上げた。


 ロクスもナミダもそんな皆の様子を微笑ましく見守っていた。



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