アデレード・ヴィオレッタの訪問
パチパチパチとアデレード・ヴィオレッタは農園の母屋の一室で、ハナスとリベット、ハナフィサとルシウスを前に手を叩いた。
「ブランド名はハナスの奇跡」そう言ってヴィオレッタは精油の瓶を皆に見せた。
「この美しいデザイン、ハナスオイルにふさわしいと思わないかしら?私の狙いは読み通りでしたわね。」ヴィオレッタは得意げである。
まあ、悪い人物ではないと思うので、ハナスも面白がって聞いている。ただ生粋の貴族育ちのヴィオレッタは何事にも上から目線なだけなのだ。
「そして、このハナスオイルの素晴らしさ、ここの従業員に聞きましたわよ」
ヴィオレッタがいうと、
「えっ、なんですか、なんですか?」
と、ハナスは興味しんしんだ。
ヴィオレッタは横目でハナスを見ながらフフンと得意げだ。
実はね、こんな事がありましたのとヴィオレッタは続けた。
改革された農園内を物珍しそうに歩いていたヴィオレッタだったが、ドワーフの工房の前を通りかかった時に、それを目にした。
ドワーフのグランは蒸留器の前で汗を拭いながら、獣人のミラと人間のカイトに声をかけていた。
「おい、見てくれ。今回のラベダーオイルの出来栄えは最高だぞ」
ミラは鋭い嗅覚で香りを確かめ、頷いた。「確かに。ハナス様の力が加わると、本当に特別なものになるわね」
カイトは紫色の小瓶を手に取り、光にかざして見つめた。「先日、フライングビー(小さな蜂のような魔物)に刺されたときにこれを塗ったら、痛みがすぐに引いたんだ。まるで魔法みたいだった」
グランは笑いながら言いった。「そりゃそうさ。ハナスオイルは神のオイルだからな。俺なんか、ユーカのオイルを嗅ぐと、一晩中工房で働いても疲れを感じないくらいさ」
ミラは耳をピンと立てて付け加える。「私の従姉妹は喘息持ちなんだけど、ユーカオイルを使い始めてから発作が激減したって。本当に奇跡みたいね」
カイトはペンと紙を取り出し、メモを取り始めた。「みんなの体験談を集めて、どんな効果があるか記録しておこう。きっとハナス様も喜んでくれるはずだ」
三人は頷き合い、さらに作業に励む。まるでハナスオイルを作ることは単なる仕事ではなく。世界中の人々の生活を豊かにする、神聖な使命のようだと言わんばかりに三人は生き生き、キラキラしていた。
そんな三人に吸い込まれるように、ヴィオレッタが思わず彼らに声をかけると、彼らは嫌がりもせず目をキラキラさせて、毎日新たな発見があり、驚きの連続だった事。
虫除け効果、集中力向上、痛み緩和など、ハナスオイルの可能性は無限大に思えること。
従業員たちは、自分たちが奇跡の源に関わっているという誇りを胸に、日々の仕事に励んでいることなどを話してくれた。
「どう」
そう言うヴィオレッタも目をキラキラさせていた。
恐らく、ヴィオレッタほどの人物にとっても、ハナスのオイルに携わることは、刺激的で、奇跡的で、最初自分が想像したビジネスよりもはるかに壮大だったのだ。
ヴィオレッタが頬を染め、興奮してるので、ハナスは笑った。
その時、扉が開いてリサが部屋に飛び込んできた。
一同は何事かとリサを見た。
リサの頬は真っ赤に紅葉していた。
「みんな、聞いて!」彼女は息を切らしながら叫ぶ。「私たちの精油が、王都の宮廷で使われることになったの!」
その言葉にハナスはアングリと口を開けた。
リベットが飛び上がって喜んでいたが、ヴィオレッタは一人複雑な表情を浮かべていた。




