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農園の夜明け

 農園は、まるで生き物のように息づきながら、急速な変化を遂げていった。解放された奴隷たちの目には、かつての抑圧者たちの姿が次々と消えていく様子が映った。


管理者の一人、グルレイは、荷物をまとめながら、隣人のブウンに声をかけた。


「お前は本当に残るのか?」


ブウンは静かに頷いた。「ああ、残るよ。私は奴隷たちを隣人として扱ってきた。君たちのようなひどい扱いはしなかったからね」


グルレイは首を横に振った。「お前はいつまでも甘いよ。奴隷たちにしてみればお前も管理者の一人だ復讐心を甘く見るな」


「復讐?違うな、グルレイ。これは新しい始まりだ。恐れるべきは過去ではなく、未来への準備不足だよ」


その言葉を鼻で笑うと、グルレイは馬車に乗り込み、せいぜい命を大切にするんだなと残して、農園を後にした。


 残った管理者たちは、奴隷解放前には想像もできなかったような変革を目の当たりにすることになる。



  夜明け前の静寂を破るように、農園に活気が満ち始めた。かつての重圧から解放された大地は、今や希望に満ちた新たな息吹を感じていた。


 農園の中心にそびえ立つ古い屋敷の前で、ハナスとリベット、ハナフィサが皆に囲まれていた。人間、ドワーフ、獣人たち、かつては身分や種族で分断されていた彼らが、今は平等に輪を作っている。


 ドワーフの長老ソーンハンマーが一歩前に出た。


「ハナス殿、我がドワーフの民は、何世紀もの間、山の奥深くで精巧な道具を作り上げてきた」彼の声は低く、しかし力強い。「今こそ、その技術を地上にもたらす時が来たのだ」


 ソーンハンマーの言葉に、人々は息を呑んだ。彼は続ける。「我々は最高の圧搾機と水蒸気蒸留装置を作り上げる。精油の一滴一滴に、ドワーフの誇りを込めよう」


 ソーンハンマーの言葉に農園の皆が沸いた。


 その様子を見ていた若い獣人のレオが俺もとばかりに拳を上に突き上げた。


 彼の目は輝いていた。


「ハナス坊ちゃん、俺たち獣人は、大地と共に生きてきた」レオの声は、力強く、群衆を照らす。「俺たちの手で、この土地に最高の植物を育てよう。俺たちの鼻は、最高の香りを嗅ぎ分ける。俺たちの力は、最高の収穫をもたらす!」


 すると、周りでピーピーと指笛が鳴った。


「いいぞ、レオ」

「よっ、時期、獣族のおさ!」

「茶化すな茶化すな」

「照れるなよ!」

 などとやっている。


 元人間奴隷だったリサも鼻息を荒くした。彼女の表情は決意に満ちている。


「ハナス様、私たちは、この素晴らしい精油を世界に届ける役目を果たしましょう」リサの声は、清らかな小川のように心地よく響く。「瓶詰めから包装、そして販売まで担い。私たち全員で、この農園の名を世界に轟かせましょう!」



 その日から、農園は息をのむような速さで変貌を遂げていった。


 ドワーフたちは、昼夜を問わず作業を続けた。彼らの鍛冶場からは、金属を叩く音と蒸気の轟音が絶え間なく響いていた。ある朝、ソーンハンマーは誇らしげに最新の蒸留装置を披露した。


「見たまえ、ハナス殿」彼は目を輝かせながら説明する。「この装置なら、花びら一枚からでも、その精髄を余すことなく抽出できるのだ、ホホホ」

 ソーンハンマーは得意げである。

 ハナスがリベットに目配せすると、リベットもクスクス笑った。


 獣人たちは、広大な畑で汗を流していた。彼らの鋭い感覚と強靭な身体は、驚異的な成果を生み出していた。レオは、新たに開墾された畑の端に立ち、深く息を吸い込んだ。


「嗅いでごらん、リサ」彼は隣に立つ人間の少女に言う。「この香り。我々が育てた植物は、世界一の品質だ」


 リサは目を閉じ、その芳香に身を委ねた。「本当に素晴らしいわ、レオ。これなら、街でも大人気間違いなしね」


 人間たちは、精油の瓶詰めラインを整備し、美しいパッケージを考案した。人間たちの地道な努力で、精油は確実に人々のもとへ届けられるだろう。


 そして、出来上がった精油は【ハナスオイル】と呼ばれた。

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