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デフィータの企み

デフィータは長い石造りの階段をゆっくりと下りていた。足元には薄暗い光が揺らめき、冷たい空気が肌にまとわりつく。彼女の後ろには、スワラとイロイが無言でついてくる。三人の足音が階段に反響し、不気味なリズムを刻んでいた。


やがて、デフィータは一つの牢の前で足を止めた。鉄格子の向こうには、薄暗い牢の中に一人の人物が座り込んでいる。デフィータは唇をゆるめ、嘲るような笑みを浮かべた。


「ご機嫌いかがかな?テッサリア。」


その声に反応して、牢の中の人物がゆっくりと顔を上げた。暗がりの中、弱々しい眼光がデフィータを捉える。彼女の姿はかつての威厳を失い、まるで影のようにやつれていた。


「何しに来た……?なぜ、私を生かしている?」


テッサリアの声はかすれ、力なく響いた。それに対し、デフィータは大きく笑いながら答えを返す。


「そんなの決まってるだろう。逃げたお前の妹をおびき寄せたり、色々とお前には使い道があるのさ。」


その言葉に、テッサリアの目が一瞬、鋭く光った。彼女は突然、鉄格子に飛びかかろうとしたが、体は思うように動かない。彼女の力は、もはや人間以下の弱々しさでしかなかった。鉄格子は微動だにせず、テッサリアの体は無力に床に倒れ込む。


デフィータはその様子を見て、さらに高らかに笑い声を上げた。


「ハハハハハ!魔族の元族長も、魔素がなければ人間より弱そうだねえ。情けない姿だこと。」


彼女の嘲笑が牢の中に響き渡り、テッサリアは無言でうつむいた。その手は震え、握りしめた拳には力が入らない。


スワラとイロイはデフィータの後ろで無表情に立ち尽くし、ただその場の空気を冷ややかに見守っている。デフィータは再びテッサリアを見下ろし、声を低く落として言った。



デフィータは牢の前でゆっくりと両手を広げ、芝居がかった調子で。


「今日はね、テッサリア。お前に朗報を届けに来たんだよ。」


その言葉に、スワラはすぐさま反応し、手を胸に当てて大げさに驚いたふりをした。


「何ですの、朗報って?お母様!」


イロイはそんな二人のやり取りを無言で見つめ、ただ眉を少し動かすだけで、特に口を挟もうとはしなかった。


デフィータは満足そうに頷き、続けた。


「最近、ある力を手に入れてね。その力を使えば、我らは勇者の力を手に入れることが出来そうなんだよ。」


「まあ!勇者の力を!」スワラは目を大きく見開き、まるで舞台の女優のように身を乗り出した。「それはすごいことですわ!」


デフィータはテッサリアの方に視線を向け、にやりと笑いながら言った。


「考えてもごらんよ、テッサリア。バンパイアが勇者の力を手に入れたら……と思うと、ゾクゾクしないかい?」


テッサリアは無言でデフィータを見つめていたが、その目には静かな怒りが宿っていた。デフィータはそれを無視し、さらに言葉を重ねる。


「それでね、お前の妹、テローサを見つけ出して……八つ裂きにしてやろうと思ってね。」


デフィータとスワラは同時に高らかに笑い声を上げた。その笑い声は牢の中に響き渡り、不気味な余韻を残した。


テッサリアはじっとデフィータを見つめ、唇をかすかに震わせたが、声には出さなかった。彼女の心の中には、怒りと焦り、そして妹への心配が渦巻いていた。


しかしどういうことなのだ?バンパイアが勇者の力を手に入れるって、まったく意味が分からない。テッサリアは心の中でつぶやいた。


デフィータは笑いを収め、再び芝居がかった調子で言った。


「まあ、楽しみにしていてね、テッサリア。きっと、お前にも見せてあげるから。」


そう言い残すと、デフィータはゆっくりと踵を返し、スワラとイロイを従えて階段を上り始めた。彼女たちの足音が遠ざかる中、テッサリアは静かに目を閉じた。


「テローサ……どうか、気をつけて……」


彼女の呟きは、牢の中に吸い込まれるように消えていった。




デフィータが玉座に腰を下ろすと、スワラがきらきらとした目で近寄ってきた。


「お母様、勇者の力を手に入れるって、どうやってですの?ふふ、教えてくださらない?」


イロイも無言で玉座の横に立ち、興味津々な視線を向ける。デフィータは二人を見回すと、くすりと笑った。


「おや、言ってなかったかい?」


そう言いながら、デフィータはそばに控えている小さな少女の頭を優しくなでる。少女の名はマヤ。黒いローブに身を包んだその姿は、どこか影に溶け込みそうなほどか細かった。恐らくお母様の趣味で着せ替え人形にされたのね。スワラは心の中で笑った。


「このマヤの力だよ」


「ほう...」イロイがゆっくりとマヤに近づき、鋭い視線で少女を観察する。「この子にそんな力が?」


マヤはイロイの視線に怯えたように、小さな手でデフィータの衣の裾をつかみ、体を隠すようにした。デフィータは面白そうにその様子を見ながら説明を続ける。


「マヤの魔法を使うとね、何でも食ったもんの力を手に入れることが出来るのさ」


スワラが手をぱんと合わせる。「あら!だからあのドランゴドラが...」


「そう」デフィータの唇が歪んで笑みを作る。「勇者の力を手に入れようと、わざわざここへやってきたわけだ。まあ、失敗して魔ネズミを食っちまったがな。ハハハ!」


デフィータの高笑いが玉座の間に響き渡る。マヤはその笑い声にさらに縮こまり、スワラは楽しそうに手を振りながらデフィータの横に座り込んだ。


「でもお母様、じゃあ次は誰に魔法をかけるの...?」


デフィータはゆっくりと玉座の肘掛けに指を立て、不気味な笑みを浮かべた。


「もちろん、私たち3人さ」


マヤはデフィータの言葉にちらりと上目遣いで彼女を見上げた。その瞳には、複雑な感情が渦巻いていた。


イロイは腕を組む。「...俺たちが勇者を食うのか?」


「ふふふ...」デフィータが妖艶に指を唇に当てる。「そう、勇者の力を手に入れたら、我らバンパイアはこの地上で最も強力な存在になると思わんか?」


デフィータはまた笑った。


でもあいつを食うの?スワラは嫌な顔をした。



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