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御ばば様

バンパイアの城は、深い森の奥にそびえ立つ巨大な古城だった。その尖塔は暗い雲を突き刺すように伸び、周囲には不気味な霧が立ち込めている。城内は薄暗く、ろうそくの灯がゆらゆらと揺れ、長い廊下には無数の影が蠢いていた。


その城の最奥にある広間。そこには、バンパイアの長老デフィータが玉座に座っていた。彼女の肌はカサカサで乾ききっており、まるで古い羊皮紙のようだった。深く窪んだ目には、長い年月を経た疲労と飢えが宿っている。


「……勇者を連れて参りました。」


配下のバンパイアが、乱暴に手足が溶けかけている勇者をデフィータの足元に投げ出した。勇者は苦悶の表情を浮かべながらも、まだ意識はしっかりと保っていた。その瞳には、屈辱と怒りが燃えている。


「ふむ……これがあの勇者のまつろか。」


デフィータがゆっくりと玉座から身を乗り出し、勇者をじっと見下ろす。彼女の声は乾いた風が枯れ葉を揺らすような、かすれた音だった。


「お前の血で、このデフィータの渇きを癒せるかどうか……試させてもらおう。」


デフィータがゆっくりと手を伸ばし、勇者の顎を掴む。その手の感触は冷たく、まるで氷のようだ。勇者はその触覚に嫌悪感を覚えながらも、じっとデフィータを見据える。


「…ババア、俺の血を飲んで大丈夫か?勇者の血だぞ、あんた絶対死ぬぞ…」


勇者がかすれた声で嘲笑う。その言葉に、デフィータの目が一瞬鋭く光る。


「口が達者な小僧だな。」


デフィータが冷たく笑い、勇者の首筋に鋭い牙を立てる。その瞬間、勇者の体が硬直し、血がデフィータの口の中に流れ込む。


「……これは……」


デフィータの目が大きく見開かれる。勇者の血は、彼女がこれまでに味わったことのないほど濃厚で、力強かった。その血が彼女の体に流れ込むと、乾ききった肌に少しずつ潤いが戻り、深く窪んだ目にも光が戻ってくる。


「……勇者の血は、やはり一味違うな。」


デフィータが満足そうに呟き、勇者から離れる。彼女の姿は少し若返り、以前よりも力強いオーラを放っている。


「ふむ……この血ならば、このデフィータの力も完全に回復するかもしれん。」


デフィータが玉座にゆっくりと座り直し、配下のバンパイアたちを見渡す。


「この勇者を牢に繋ぎ、死なせないようにしろ。この者の血は、貴重な栄養源だ」


「はい、御ばば様。」


配下のバンパイアたちがうなずき、勇者を再び持ち上げる。勇者は無抵抗に運ばれていくが、その目にはまだ諦めの色はなかった。


「……このまま終わると思うなよ、ババア。」


勇者がかすれた声で呟く。その言葉に、デフィータは薄く笑みを浮かべる。


「ふふふ……面白い小僧だ。だが、お前がもし勇者の力で再生しようとも、その部分からすぐに切り落としてやる。この城から脱出することはできん。この御ばばが、そうさせないからな。」


デフィータの笑い声が広間に響き渡った。



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