人間牧場の手がかり
サイノッテ城の地下。薄暗い石造りの部屋に、ろうそくの灯が揺れていた。冷たい空気が肌に触れるが、そこに集まる者たちの熱気がそれを打ち消すかのようだ。ミーアたちが連れてきた特殊能力者とトカゲ人間の取り調べが始まろうとしている。この地下室には、これまでにないほど多くの面々が集結していた。
ハナス、リベット、ユリ王女、皇后マリエル、ルシウス、ハナフィサ、そして魔族の姫テフロサと魔族長テローサ。さらにデルビア、アーリア、鳥人族のフィリア、そして猫耳娘のミーア。それぞれが緊張と期待を胸に、この場に臨んでいた。
「お前たち、よくやった。」
魔族長テローサの深い声が地下室に響き渡る。その言葉に、デルビアとアーリアは思わず顔をほころばせた。褒められることなど珍しくないが、魔族長からの直々の称賛は格別だ。二人は互いに目を合わせ、小さくうなずき合う。
「よくやったのです、ミーア。」
リベットが優しくミーアの頭をなでる。その瞬間、ミーアの猫耳がピクンと反応し、彼女はデロデロとろけそうな表情になる。リベットの手の温もりが、彼女の緊張を一気に解きほぐす。
「頑張ったね、フィリア。」
ハナスがフィリアの肩に手を置き、優しく声をかける。フィリアはその言葉に顔を真っ赤に染め、羽を少しばたつかせながらモジモジとしている。鳥人族特有の羽が、彼女の感情を隠し切れていないようだ。
「さて、取り調べを始めよう。」
ルシウスが冷静な声で場を仕切る。彼の言葉に、一同は再び緊張感を取り戻す。特殊能力者とトカゲ人間が、部屋の中央に縛られたままじっとしている。その目には、恐怖と諦めが混ざり合っていた。
「まずは、お前たちの目的から聞かせてもらおうか。」
ユリ王女が一歩前に出て、鋭い視線を二人に向ける。その瞳には、王族としての威厳と、敵に対する冷たさが浮かんでいる。
地下室の空気が再び張り詰める。ろうそくの炎が揺れ、影が壁にゆらめく。それぞれが自分の役割を果たすため、この場に集まった。彼らの結束と決意が、この薄暗い部屋に満ちていた。
「さあ、話してもらおうか。」
皇后マリエルが穏やかながらも圧倒的な存在感で言葉を紡ぐ。その声に、縛られた二人は震えを隠せない。
その時、ギギギギギ──と鈍い音が響き、重厚な鉄の扉がゆっくりと開いた。その音に、地下室に集まった全員が一斉に扉の方へ視線を向ける。扉の向こうから現れたのは、かつてのサイノッテ王、サイノベルだった。
「お父様!」
ユリ王女が驚きと喜びを込めて声を上げる。その声に、一同は一瞬にして静まり返った。王の姿は、以前の病に伏せていた頃とはまるで別人のようだ。頬には血色が戻り、目にはかつての輝きが宿っている。
「大丈夫ですか、陛下!」
ルシウスが慌てて駆け寄ると、王はゆっくりと手を挙げて制止した。
「大丈夫だ。そちの奥方、ハナフィサの毎日の治癒魔法と、息子ハナスの精油のおかげでな。近頃はすっかり調子が良くなってきておる。」
王の声は力強く、その言葉に一同は安堵のため息をつく。ハナフィサは少し照れくさそうに頷き、ハナスは誇らしげに胸を張った。
「この席に、わしも同席させてもらえるかな?」
王はそう言いながら、血色の良い顔で一同を見渡した。その姿に、皇后マリエルとユリ王女はすぐに王の側へ駆け寄り、椅子を用意してゆっくりと座らせた。
「あなた……!」
皇后マリエルの声には、喜びと安堵が混じっている。彼女は王の手を握り、その温もりを確かめるかのように力を込めた。ユリ王女もまた、父の元気な姿に目を細め、涙を浮かべながら微笑んだ。
「父上、無理をなさらないでください。でも……本当に嬉しいです。」
ユリ王女の声は震えていたが、その表情は明るく輝いていた。
王はゆっくりと頷き、一同を見渡しながら言った。
「わしの病気の間、皆がよくやってくれた。感謝しておる。これからは、わしもまたこの国のために力を尽くすつもりだ。」
その言葉に、地下室に集まった者たちは一斉に頭を下げた。王の復帰は、彼らにとって何よりも心強い支えとなった。
「では、取り調べを続けよう。」
ルシウスが再び冷静な声で場を仕切り、一同はそれぞれの位置に戻る。王の姿が加わったことで、地下室の空気はさらに緊張感を増していた。
「さあ、話してもらおうか。」
皇后マリエルが再び言葉を紡ぎ、縛られた二人に向かって鋭い視線を向ける。王の存在が、彼らの決意をさらに固くしていた。
地下室に不気味な静寂が広がった。特殊能力者の首から上が吹き飛び、その無残な姿が一同の眼前に広がる。血の匂いが一気に広がり、ろうそくの炎が不気味に揺れる。誰もが一瞬、言葉を失った。
「……これは、呪いか何かだな。」
ルシウスが冷静ながらも緊張した声で呟く。彼はすぐに特殊能力者の残された体を調べ始めた。首の断面からは、何か黒い煙のようなものがゆらゆらと立ち上り、すぐに消えていく。それはまるで、何者かが彼の口を封じるために仕掛けた罠のようだった。
「トカゲ人間の方はどうですか?」
ハナスが鋭い視線をトカゲ人間に向ける。トカゲ人間はまだ縛られたまま、恐怖に震えている。彼は口を開こうとするが、言葉がうまく出てこない。まるで何かに妨害されているかのようだ。
「……人間牧場……場所は……わからん……」
トカゲ人間がかすれた声で絞り出すように話す。その言葉に、一同は顔をしかめた。
「どうやら、彼らも何らかの制約を受けているようですね。」
ハナフィサが冷静に分析する。彼女はトカゲ人間の様子をじっと観察し、その体に何か術式や呪いがかけられていないか探っている。
「ならば、直接的な手段で聞き出すしかない。」
魔族長テローサが低い声で言う。彼女の目には、冷酷な光が宿っている。魔族の力を使えば、たとえ呪いがかけられていても、強引に情報を引き出すことができるかもしれない。
「待て。」
王サイノベルがゆっくりと手を挙げて制止する。
「無理をすれば、彼もあの特殊能力者のように命を落とすかもしれん。それでは意味がなかろう。」
王の言葉に、テローサは少し不満そうな表情を浮かべたが、それ以上は反論しなかった。
「では、どうすれば……」
ユリ王女が不安げに呟く。彼女の視線は、まだ血の跡が残る床に向けられている。
「……彼らの体に何か手がかりはないでしょうか?」
フィリアが小さな声で提案する。彼女は鳥人族としての鋭い視覚で、トカゲ人間の体に何か印や紋章がないか探っている。
「そうだな。体を調べてみよう。」
ルシウスが頷き、トカゲ人間の体を詳しく調べ始める。肌の表面に何か隠されたメッセージがないか探る。
「……ここに何かある。」
ルシウスがトカゲ人間の腕に刻まれた小さな紋章を指さす。それはまるで、ある組織の印のようだった。
「これは……『ドランゴドラ』の紋章だな。」
ルシウスが眉をひそめて言う。その言葉に、一同は一瞬にして緊張感を増した。
「ドランゴドラ……あのちんけな貴族崩れか?」
皇后マリエルが驚きを隠せない声で尋ねる。その組織は、長年にわたって暗躍し、数々の陰謀を企ててきた。
「どうやら、彼らが人間牧場を運営しているようだな。」
ルシウスが冷静に結論を出す。その言葉に、トカゲ人間は震えながらうなずく。
「では、次はドランゴドラを手がかりに、アジトを探るしかないな。」
王サイノベルが力強く言う。その声には、かつての威厳が戻っていた。
「全員、準備を整えろ。こんな非道を放ってはおけん!」
一同は王の言葉に頷き、それぞれの役割に戻っていく。地下室の空気は再び静寂に包まれた。
いつもイイねをくださる優しい「あなた」ありがとうございます。イイねがあればそれだけ拡散されますし、ブックマークされれば、表示も増えてより沢山の人に読んでいただける可能性が広がります。作者のモチベーションが上がるのはもちろんの事、やっぱり単純に読んでいただけるのは嬉しいので、良ければイイねや、ブックマークよろしくお願いします。
オレンジ




