お土産
上空を飛ぶ魔族のアーリアとデルビア。その背中には、鳥人族のフィリアと猫耳族のミーアが乗っていた。彼らは、ハスとレナが捕らえられていた人間牧場を探していたが、魔族の目をもってしてもなかなか見つからなかった。あるいは、まだその場所を通りかかっていないのかもしれない。
「まだ見つからないな……」アーリアが眉間に皺を寄せながら呟くと、デルビアが冷静に答えた。
「焦らないで、アーリア。広い荒野です。時間はかかります」
その時、ミーアがデルビアの背中から風に負けまいと大声を出した。
「デルちゃん!あの土煙、見える?近くまで行ける?」
ミーアが見つけたのは、馬車と馬を疾走させる怪しい集団だった。距離を詰めて観察すると、その正体がはっきりと見えてくる。
「あれ……トカゲ人間よね?」ミーアが訝しげに呟くと、デルビアが冷静に答えた。「そうですね。あんな奇妙な生き物は見たことがありません」
馬車と馬に続いて、数十匹のトカゲ人間らしき生物が走らされている。その光景は異様であり、どこか不気味さを感じさせる。
「それなら、戦闘準備をしようかあ」アーリアが豪快に宣言した。彼女の声にはいつも通り、揺るぎない自信が込められていた。
「デルちゃん、大丈夫?」ミーアが心配そうに声をかけると、デルビアは軽く笑みを浮かべながら答えた。「任せてください!」
その瞬間、デルビアは一気に下降し、馬車と馬に乗る者たちを薙ぎ払った。彼女の動きは流れるように滑らかで、まるで風そのものが敵を切り裂くかのようだった。
戦闘の幕が切って落とされた。
薙ぎ払われて馬車や馬から落ちた者たちは、しかし、体にオーラのようなものを纏い、地面への激突を巧みに避けた。その動きはまるで重力を無視しているかのようで、不気味なまでの冷静さを感じさせた。
次の瞬間、デルビアとアーリアに向かって炎の球が飛んでくる。不意を突かれたが、二人は冷静に対応。しなやかな黒い翼を広げ、炎の球を軽々と打ち払った。その一瞬の隙もなく、今度は別の男が放った無数の氷の棘が飛来。鋭い冷気が空気を切り裂き、迫りくる。
「くっ……!」デルビアが歯を食いしばりながらも、鳥人族のフィリアと猫耳族のミーアをしっかりと庇う。アーリアもまた、黒い翼を盾のように広げ、仲間を守りながら次の一手を探る。
その刹那、デルビアの手から魔族特有の黒い槍が放たれた。槍は疾風のように空を切り裂き、氷の棘を放った男めがけて一直線に飛んでいく。男は驚きの表情を浮かべたが、避ける間もなく──槍は見事にその胸を貫いた。
「やったか……!」アーリアが叫ぶが、戦いはまだ終わっていない。オーラを纏った者たちはなおも立ち上がり、新たな攻撃の構えを見せ始めていた。
「油断するなよ、デルビア!」アーリアが声を張り上げる。デルビアは軽く頷き、再び戦闘態勢に入った。フィリアとミーアもそれぞれの武器を握りしめ、緊張感が再び高まる。
「次はこっちの番だね」ミーアが小さく呟き、瞳に闘志を燃やした。
「お前ら!こいつらを抑え込め!」
一人の男の声を合図に、トカゲ人間たちが一斉にこちらへ駆けてくる。その数は数十匹。地面を蹴る足音が轟き、不気味な唸り声が空気を震わせた。
「あいつらは任せて!」
ミーアは鋭い牙を剥き出しにし、爪を立てて「シャーッ!」と威嚇の声を上げた。その瞳は猫のように鋭く光り、獲物を狙う猛獣のような緊張感を漂わせている。
「そうよ、アーリアたちはあの魔法使いたちをお願い!」
フィリアはそう言いながら、背中の翼を広げ、弓を構えた。その腰には中型の剣も差さっており、どうやら近接戦闘にも慣れているようだ。彼女の姿は優雅でありながらも、戦士としての強さを感じさせる。
「では任せたぞ、フィリア、ミーア!」
アーリアはそう言うと、漆黒の槍を手の中に召喚した。その槍は闇を纏い、不気味な輝きを放っている。次の瞬間、敵の特殊能力者たちが一斉に攻撃を仕掛けてきた。炎、氷、雷──様々な属性の攻撃が空を切り裂く。
しかし、アーリアは一瞬にして空中へ飛び立った。その速さは目にも留まらぬほどで、特殊能力者たちは思わず彼女の動きを目で追ってしまう。
その隙を逃さなかったデルビア。彼女は漆黒の翼を広げ、無数の槍を一気に放った。槍は闇の力を纏い、風を切り裂いて敵たちに向かって飛んでいく。
「ぐあっ!」
「うわあっ!」
悲鳴が上がり、特殊能力者たちが次々と倒れていく。デルビアの攻撃は正確無比で、一撃で敵の戦力を削り取った。
「さすがデルビア!」
アーリアが空中で笑みを浮かべながら叫ぶ。その声に応えるように、デルビアは軽く頷いた。
一方、地上ではミーアがトカゲ人間たちと激しい戦いを繰り広げていた。彼女の爪と牙は敵の鱗を易々と切り裂き、その動きはまるで舞うように軽やかだ。フィリアも弓を引き、次々と矢を放ちながら、時には剣を振るって接近してくる敵を薙ぎ払う。
「これでどうだ!」
フィリアの矢が一匹のトカゲ人間の胸を貫き、その場に倒れ込む。彼女の戦いぶりは冷静でありながらも、確かな手応えを感じさせる。
戦場は混沌としていたが、四人の連携は完璧だった。それぞれが自分の役割を果たし、敵の攻撃を次々と撃破していく。
やがて、戦場に静けさが戻った。地面には倒れた敵たちの姿が散らばり、風がそっとその場を通り過ぎていく。緊張感が徐々に解け、四人の周りには戦いの余韻が漂っていた。
「よし、生き残っている奴らを縛り上げるぞ」
アーリアがそう言うと、待ってましたとばかりに皆が動き出す。生き残った数人の特殊能力者とトカゲ人間を縛り上げていく。彼らの動きは手慣れたもので、手際よく作業が進んでいく。
「ハナス様への良い土産が出来ましたね」
デルビアが満足げに呟くと、ミーアはにっこりと笑って彼女の方を向いた。
「デルちゃん、手を出して!」
「手ですか?」
デルビアは少し戸惑いながらも、言われるままに手を差し出す。すると、ミーアはその手に軽くタッチした。
「これ、喜びを表すのよ。坊ちゃんが教えてくれたの」
ミーアの瞳は楽しそうに輝き、その笑顔はまるで子供のようだった。彼女は次にフィリアとアーリアのもとへ走り、同じようにタッチを交わす。
「ふふ、ミーアったら、本当に子供みたい」
フィリアは苦笑いしながらも、ミーアの手に優しくタッチする。アーリアもまた、豪快に笑いながらミーアの手を叩いた。
「よし、これで私たちの勝利は確定だな!」
アーリアの声に、皆が笑顔で頷く。興奮冷めやらぬ空気が辺りを包みながらも、四人の間には安堵と達成感が広がっていた。
「ハナス様のところへ戻りましょう。」
デルビアが言うと、皆が一斉に頷いた。
いつもイイねをくださる優しい「あなた」ありがとうございます。イイねがあればそれだけ拡散されますし、ブックマークされれば、表示も増えてより沢山の人に読んでいただける可能性が広がります。作者のモチベーションが上がるのはもちろんの事、やっぱり単純に読んでいただけるのは嬉しいので、良ければイイねや、ブックマークよろしくお願いします。
オレンジ




