ガルドの実験
龍椀のガルドは、山深くに築かれた秘密の拠点で、特殊能力を持つ部下たちの能力向上に力を注いでいた。ここはソルゼ王国から数時間ほど馬車で走った場所にある、人里離れた山の中。勇者が消え、リュカン王がドランゴドラの存在をすっかり忘れ、国に帰ってきたとき、怒りと失望に満ちたドランゴドラたちは、ソルゼ王国を静かに離れ、この地に隠れ住むことを選んだのだった。
そして今、ガルドは一人の幼女を使った実験に没頭していた。その幼女は、ある村から攫ってきたものだが、彼女が持つ力は恐るべきものだった。彼女は魔法を使い、山の中に無数に生息するトカゲを変異させることができた。そして、その変異したトカゲに人間を食わせると、トカゲと人間が融合したような異形の生物が生まれるのだ。
「ふふふ……これは面白い」
ガルドは、その光景を目にしながら、満足げに笑みを浮かべた。彼の目には、すでにさらなる野望が燃え上がっていた。
「この力を利用すれば、恐ろしく強力で凶暴な魔獣を生み出せるに違いない。これこそが、我が軍の力を飛躍的に高める鍵だ」
彼は部下たちに指示を飛ばし、さらなる実験を進めさせた。その中で、彼は新たな計画を思い描いていた。
「例えば……北の大地に住むというバンパイアを捕らえてきて、レッドスネークを食わせるのはどうだろう? あるいは、獣人にワイバーンを食わせてもいい。そうすれば、さらに強力な魔獣が生まれるに違いない」
ガルドの頭の中では、すでにその光景が広がっていた。彼は、この力を利用して無敵の軍隊を作り上げ、すべてを支配することを夢見ていた。
「そうだ……この力で世界を手中に収めるのだ。誰もが我が力の前にひれ伏すだろう」
彼は幼女の方を振り返り、冷酷な笑みを浮かべた。
「お前の力は、我が野望を実現するための最高の道具だ。これからも存分に使わせてもらうぞ」
幼女は無表情で彼を見つめていたが、その瞳の奥には何かしらの感情がうごめいているようにも見えた。しかし、ガルドはそれには気づかず、部下たちに次の指示を出し始めた。
「さあ、さらなる実験を始めよう。我が軍の力を高めるためだ」
山の中に響くガルドの声は、まるで闇そのものが形を成したかのように不気味だった。彼の野望は、この山の中から静かに、しかし確実に広がり始めていた。
「しかし、この実験で一つだけ気に入らない点がある……」
龍椀のガルドは、暗い実験室の奥で腕を組みながら、不満そうに呟いた。彼の視線の先には、無表情で立つ幼女がいた。彼女の魔力は確かに強大だが、まだ幼いが故に限界があった。
「この力を使えるのが、このガキだという事だ。魔力量はまだ弱く、一日に2~3体に魔力を使えばぶっ倒れてしまう。死なれてしまってはかなわないので、無理をさせないように気を使わなければならない……」
ガルドは舌打ちをし、部下たちに苛立ちをぶつけるように言った。
「これが大人であれば、もっと早く軍隊を育てることが出来るのだが……こればかりは無茶が出来ない」
彼は幼女を見つめながら、ふと思い出したように部下に尋ねた。
「そういえば、このガキはどこの村から攫ってきたんだ? こいつの母親か父親も、同じ能力を持っているかもしれないぞ」
部下たちは互いを見合わせ、困惑した表情を浮かべた。誰一人として、その幼女をどこで攫ったのか覚えていなかった。
「……申し訳ありません、ガルド様。確かな記憶がありません」
一人の部下が恐る恐る答えると、ガルドは眉をひそめ、不満げに唸った。
「ふん……役に立たない奴らだな。まあ、いい。今更探し回るのも面倒だ」
彼は幼女の方に視線を戻し、冷酷な笑みを浮かべた。
「お前の力だけで十分だ。少し時間がかかっても、我が軍は完成する。それまで、お前にはしっかりと働いてもらうぞ」
幼女は無言で彼を見つめていた。
「ふふふ……まさに天が我々に微笑んだのだ」
龍椀のガルドは上機嫌に笑みを浮かべていた。
「聖なる鍵と呼ばれる人間の捜索は続けているが、そちらの成果は芳しくない。ミストベールの領主の動向を見張らせてもいるが、あちらもまだ聖なる鍵を手に入れられてはいないようだ……」
ガルドは腕を組みながら、部下たちにそう語りかけた。彼の声には、どこか余裕さえ感じられた。
「八方塞がりだったときに、この幼女を見つけた。まさに天がドランゴドラと我に微笑んだのだ」
彼は幼女の方に視線を向け、満足げに頷いた。
「ああ、面白い……ああ、面白い!」
ガルドは笑い声を上げ、部下たちにもその喜びを分け与えるように言った。
「さて、次はどの特殊能力者に何を食わせようか……」
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オレンジ




