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魔術の国

 前書き

訪れてくれてありがとうございやす。最初、数エピソードシリアスな感じで続きますが、次第になろう系らしい冒頭のあらすじのような笑いありエピソードになってゆきやす。出来ればお読みいただければ幸いにございます。丹精込めて書かせていただきやす。オレンジ

プロローグ 


 チチチチチチー

 朝の静けさと、静寂な空気が心地よかった。

 ハナスはソファーにとりついて、登ると、ペタン、ふにゃぁーという感じで、沈み込んだ。

 その様子が可笑しくて、リベットはくすくすと笑う。

「ねえ、リベット新しいお家の住み心地はどう?」

「そりゃあ坊ちゃん、奴隷小屋とくらべたら、お姫様になった気分ですよ」

 ハナスは笑った。

「よりによって奴隷小屋と比べなくても、もうその過去は早く忘れてよ」

 ハナスが言うとリベットはテヘヘと笑った。

 こんな素敵な家なんだな~

 リベットはあらためて心が満たされるような笑顔を作って、家の天井や壁、キッチンやカーテン、暖炉やソファーを見ながら、くるくると回った。

 本当に、お姫様ですよ。

「それに坊ちゃんのお嫁さんになれるなんて」

 リベットが言ったので、ハナスは目を丸くした。

「えっ、リベットそんなこと考えてたの!」

 ハナスが言うと、リベットは頬をあからめて、口を手でおおった。

「そっかぁ、じゃあリベットの手料理を食べてみたいなあ」

「手料理ですかぁ、それなら任せてください!」

 そう言って、リベットは腕をまくり上げ玄関から出て行こうとする。

「ちょっとリベット、どこへゆくの?」

「手料理なら、ネズー二を捕ってこないと」

「いやいや、ちょっと待って魔物なんて食べないから!それに魔物でもネズミはいや」

 ネズミ?リベットは首をかしげた。

「材料なら母屋にあるから、そこから好きなの選んでよ」


 母屋から生肉を取ってくると、リベットはそれに塩を振りかけた。

挿絵(By みてみん)

「はい、召し上がれ坊ちゃん」

「いやっ、これ生肉だから、焼いて!」

 ハナスは笑い転げる

「えっ、肉は生のほうが美味しいですよ」

「人間はね、肉をかなりの確率で生で食べないよ」

 私の飼い主だった人間は生で食べてたですよ。

「えっ、エスキモーの保存食みたいだな」

 ハナスが言うと

「そうそう、エスモー族の保存食、生に塩を大量に振るんです」

 ハナスは納得した。そういう人たちもいるのね。

「リベットはこれから、料理を覚えてください。母様にはなしておきます」

 ハナスが言うと

 リベットはえへへと照れた。

 チチチチチチー

こんな幸せな日が自分に訪れるなんて、ハナスにしてもリベットにしても、少し前まで想像してはいなかった。

 そうして、心の中でつぶやく。

 リベットありがとう.......と。

 ありがとうございます。坊ちゃんと。


魔術の国


 この世界には魔術があった。それがいつからあったのか、王城の大図書館にも確かな記述がないことを思えば、その歴史はかなり古くて、長い耳を持つ種族の長老でさえも知らぬことであろう。

 その魔術の一つに、目に捉えられない、人の卵を取り出して、と言っても卵の形をしているわけではない。それはなんというかモヤのような、霧のようなものだ。だからそれは『ミナモト』と呼ばれていた。を取り出して赤ん坊を作るという禁断の術があった。

挿絵(By みてみん)

 禁断と言っても、膨大な魔術を必要とするその術を使うには莫大な金貨が必要であり、子供のできない上級貴族や王族の中で、密かに行われていた。

 王都から、南へ60日ほど行った所に小さな村があった。アズラの丘と呼ばれる村である。そこに元冒険者の夫婦が暮らしていた。

 夫のルシウスは剣の達人であり、この村の村長から自警団のまとめ役として雇われていた。そして、妻のハナフィサは風と治癒魔術の使い手である。が今は夫とともに静かに暮らしている。

 怪我をした村人に治癒魔術をかけて、少しばかりの謝礼をもらうか、夕飯の支度に囲炉裏の火に小さな風魔術を使い火を大きくするくらいしか、その使い道は今のところない。

 そんな夫婦にも悩みがあった。

 子供が出来ないのであるー。

 冒険者を引退し、夫婦になってアズラの丘に住みついて10年、あんなに欲しかった子供をハナフィサは身籠ることが出来なかった。

 夫のルシウスもハナフィサも、もうすでに30歳を超えていた。例え身籠ることが出来たとしても高齢出産である。相当のリスクがあった。それに、30を超えてから子供をつくったという話は、この世界では相当珍しい。

 ハナフィサはそんな自分の体を呪った。自分は冒険者を選んだが、引退後は大好きな人の大好きな子供を産んで育てよう。そんな第二の夢を大切にしてきた。それがなんの呪いか、この10年どんなに頑張っても叶う事はなかった。

 夫のルシウスは、その事で一度たりとも妻のことを責めなかったが、ハナフィサは知っていた。ルシウスは子供好きだ。旅をしていると、時折隣村に遣いにゆく子供に出くわすことがある。そんな時ルシウスは嬉しそうに、護衛の役をかって出て、歩きながら小さな手を繋ぎ、楽しそうに話しているのをハナフィサは何度も目にした。

 「ごめんなさい!」

 ある夜、夕飯の片付けをしていたハナフィサは突然しゃがみ込み泣き出した。整った容姿に銀色の長い髪、彼女は平民だが美しい衣装を着せればまるでどこかの姫のようだ。

 思い詰めた様子だった。

 ルシウスは駆け寄ると、そんなハナフィサを抱きしめた。

 「キミのせいじゃないよ」

 そう言って、気づけばルシウスの目にも光るものがあった。

挿絵(By みてみん)

 ハナフィサがあんなに欲しがっていた子ども、いつまで経っても授かることのない彼女が不便でならなかった。

 それなら、養子を貰えば良いのでは?と思うかもしれないが。人口管理のため、この国では、貴族や王族以外が養子縁組や奴隷売買を行うのを禁止していた。そのため、奴隷を使った商売などで生計をたてているものは、大枚を叩いて貴族の身分を買ったりしていた。しかし、その身分も永久的ではない、貴族の身分は1年更新であり、更新のたびにかなりの金がいる。奴隷商売はなかなか難しい商売ではあるが、盗賊まがいに戦場の村に行き、女や子供を攫ってきて、それを貴族に売りつけると、よく売れた。ヤバイ貴族は1日や2日で奴隷を使い物のにならなくしてしまう。そしてまた新しいのに買い換えるため、そういう貴族を顧客にもつと、大儲けできた。

 貴族の主な収入源は、税金である。うまく領地を運営できれば、人が集まり、莫大な税を捻出することが出来た。うまく領地を発展させることが出来ないものは、やがて落ちぶれ、知らぬ間に新しい領主にすげ替えられて行く。貴族とて、のうのうと暮らしているわけではない。貴族にもある種の才能と努力が必要なのだ。

 それはさておき、今はルシウス夫妻の子供が欲しいという話である。

 元冒険者で、アズラの丘の自警団団長のルシウスに1年更新の貴族階級を買える余裕などはない。何か悪いことでもして稼がなければ、そんな大金は手に入れる事は到底無理だった。

いつもイイねをくださる優しい「あなた」ありがとうございます。イイねがあればそれだけ拡散されますし、ブックマークされれば、表示も増えてより沢山の人に読んでいただける可能性が広がります。作者のモチベーションが上がるのはもちろんの事、やっぱり単純に読んでいただけるのは嬉しいので、良ければイイねや、ブックマークよろしくお願いします。


オレンジ

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