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十二

「なんか日本では見かけないようなデザインのワンピースです」


 朝起きてきた私を見て、柊くんは驚いていた。


「このワンピースは王国で買った物です。ですから日本やこの国の物とは少し違うかもしれません」


 王国の糸は、日本やこの国の物はもちろん、帝国の物よりも太い。そこで自然と縫い目は分かりやすい服になってしまう。


 そのうえ使用されている布は、王国以外では見かけない。絹や化学繊維とは違うような淡い光沢がある。


「布も糸も色が変わっていくんですね。光の加減で色が変わっていくように見えるのはありますが、アナログで色が変わっている服はないから珍しくて、きれいです」


 柊くんは私の服をほめてくれた。


 このワンピースに使用されている布と糸は、王国の庶民やお金のない人には入手できない高級品だ。


 ぶっちゃけこのワンピースは嫁入り道具かもしれない。長距離移動することもあって、王国からたくさんの物を持ってくることができなかったから。


 そのためにこの淡い光沢があって、時間が経つごとに色が変わっていく布と糸を使った、高いワンピースを親が用意してくれたんだろう。多分。


「リリニアさんがここに来たとき着ていたワンピースとも雰囲気が違います。初日に着ていたワンピースは丈が長いですが、それよりは短めなんですね」


「一応初日に着ていたのは、帝国における婚礼衣装です。この服は王国の普段着ですので、当然のように違います。ぶっちゃけソラ様が暮らしていた帝国の方が栄えていますので、初日の方が服も良い物になります。ただし王国では婚礼衣装は日本のように派手なドレスですので、そこを考えると初日に着ていたワンピースは地味ではあります」


「そうですね。あのワンピースはおでかけのときに着る服装ではあっても、結婚式の時に着ることができる感じでは無かったです」


 柊くんはかなり不思議そうだ。


 そりゃそうかもしれない、私も柊くんのように帝国の婚礼衣装のワンピースのことは不思議に思っている。


 ワンピースの丈は長く地面すれすれってところは、特別な感じがある。でも白いスタンドカラーのワンピースに透けるような黒みがかかった青もジャンパースカートを重ね着して、胸のすぐ下に青のリボンをきつく結ぶ。


 フリルやレースが使われていない、こういうシンプルなワンピースが結婚の時に着るとは王国にいたときはもちろん、前世でも思わなかった。そこでこの格好をした私を見て、結婚と結びつけなかった柊くんが正しい。


 一応前世では私、結婚式の時に白無垢を着ていたのだ。お色直しではドレスも着ていたし。それに比べると帝国で結婚する時に着る服が地味だと、私も思った。ただ長く移動するので派手なドレスよりもマシか、そう思ったこともある。


「ここは日本じゃなくて異世界ですから、きっと婚礼衣装も違うのでしょう。ただし王国では毎日しっかりドレスを着ていましたし、帝国のパーティーでもドレスを着ていました。そこで余計に帝国の婚礼衣装が地味な感じが私はしました」


「毎日ドレスだなんて、ますます異世界転生物に出てくる貴族のお嬢様っぽいです」


 柊くんは目をキラキラさせる。


 そりゃそうか。確か異世界転生した女の子は貴族だと、大抵ドレスを着ている。そのイメージ通りの生活、私も王国にいたときはしていた。


「わっかわいいワンピースだ。それって王国の物? この国じゃあそういうデザインの服ないはずだし」


 青空くんが驚いて、私を見る。


 青空くんも王国のワンピースを見るのは、はじめてだったみたい。


「そうです。王国ではドレスを着ることが普通だったので、ワンピース家の中以外で着ることはありませんでした。でもこの国じゃあドレスを着ることは全くありません。そこで高い布と糸を使って作ってもらった、特別なワンピースかもしれません。まっもう王国には戻れませんから、嫁入り道具かもしれないです」


「リリニアは王国で産まれてから暮らしてたんだよね。王国に戻れなくていいの?」


 青空くんはさっきまでと違って、真面目な顔で私に聞く。


「大丈夫です。確かに王国には家族がいますし、私と仲良くしていた人もいました。でも生活や文化レベルはこっちの方が上ですし、前世の記憶があるからとまどいもありません。しかも私はソラ・アゴーニ様の婚約者です。1度も会ったことがない婚約者ですが、結婚するのが私のも目的です」


「なんかリリニアさんってますます異世界転生もののお姫様みたいです。現代日本の考え方と、こっちの世界の考え方が混じっているような気がします」


 柊くんがあきれたように、私のことを見る。


「私前世ではお見合い結婚だったのです。そのうえ今世では結婚は親が決めた相手とする物って感じでしたので、そこら辺は考えが混じっているとは思わなかったです」


「日本でもお見合い結婚ってあったんですね」


 柊くんはお見合い結婚が日本であることを知らないらしい。流石私の死後に産まれた子供って所かな?


「へー僕の知り合いにはお見合い結婚をしている人がいなかったので、新鮮です」


 気がつけば青空くんは黙っていて、私と柊くんだけが話しているような感じになっていた。


 そういえば青空くんはどっちなんだろうか? いや異世界転移者だろうな。確か異世界転生者は帝国とかにしかいないはずで、この国にはいないっぽいし。


『ソラ様ここにいたのですか!! 探しましたよ』


 いきなり現れたフロスト様が怒鳴る。


 えっ今フロスト様、ソラ様って言わなかったっけ?


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