追放者酒場②
ダンジョン北側とは真逆の方向に走ってきたので、この辺りが南地区というのはわかる。
しかしこちらにはあまり来る機会がなかったのでどこの路地裏かもわからない。
しかもかなり廃れた見た目の酒場で、時間はまだ酒を飲むには早過ぎるお昼をちょっと過ぎたかという時間帯。
それにも関わらず店内は意外にも多くの人で賑わっていた。
名前も知らないシスターがママと呼んだ人は、随分とガタイのいいおばちゃんだ。
それがまるで歴戦の冒険者のような鋭い目付きで、シスターを睨み付けている。
それから俺の方へ視線を移すと、同情したような普通のおばちゃんらしい表情へと変わった。
「厄介な女に目つけられるちまったね兄ちゃん。あたしはここの店主でアリーザってもんさ。んでそっちは金が無くなるまで酒を呑み、しまいにはその辺の男を捕まえて来てはここで酒をたかる偽シスターだよ」
「ふっ、偽か。まぁどっちでも回復魔法の効かない俺には一緒だがな。それにどうせ大した額は持ってないし、今日ここで全部使ったって構わないさ」
修道服を着てはいるがシスターではないらしい。
しかし俺からすればそんなのは些細なことだ。
教会に行って大金を払ったところで俺に回復魔法はほとんど効果はない。
この格好が仮装というのならそれはそれで悪くないというもの。
とにかく今日はたらふく飲んで全部忘れたい。
明日は冒険者の装備を全部売って、その金が無くなるまでゴロゴロして過ごす。
その先のことは知らん、以上が今後の人生設計だ。
「若いのにこの世の終わりみたいな顔してるねあんた。そういう時はたーんと食ってたーんと呑んでたーんと寝りゃええさね。そこの床でごろ寝してるサウロンみたい。ほら、空いてる席に座んな。酒と料理持ってってやるから」
「空いてる席……空いてる席……すみません、満席みたいですけど」
「何言ってんだい。そこの4人がけ席が2人分空いてるだろ。さっさと座んな」
言われた席には頬と鼻頭を赤く染めたドワーフの2人組が座っている。
客の確認も取らずに座っていいと言い放って大丈夫かとも思ったが、こちらを見るとボサボサの髭面に深い皺を作って破顔した。
「座んな若いの!それに酔いどれシスターも!」
そう言って椅子を引き机を強めに2度叩いた。
さっきから偽シスターだの酔いどれシスターなんて一体どんな呼び名だ、と口に出かけたがサッと手で蓋をした。
「それじゃあ失礼するよ。俺はカルマ、さっきまでは冒険者だった。このシスターとは知り合いらしいな。二人はここの常連か?」
「あぁ、火事場にいるよりここにいる時間のが長いってもんよ。そういう兄ちゃんは初めてだな。なんせいつもいる俺が見たことないからな。俺は兄のグワンゴ」
「俺は弟のドロンゴ、兄弟で鍛治師をやってたが先日工房をクビになった」
二人とも赤褐色の髪に煤けた頬、そしてドワーフの特徴である髭で顔が隠れているせいか見分けがつかないほどよく似た似た兄弟だ。
もしかすると双子かもしれないと思うほどである。
簡単に区別するなら、髭を一本に束ねているのが兄のグワンゴ、髭を2本の3つ編みで結んでいるのが弟のドロンゴである。
クビになったと聞こえたらしく奥からは「酒代が払えなくなる前に次の働き口を探しな」と、大きな声がした。
これまた余程の地獄耳らしい。
「クビか。わかるよ辛いよな」
同じ境遇と知り一気に親近感が湧いてきたので俺はそう呟いた。
しかしドワーフは手のひらで机を叩いて、こちらを鋭く睨んでいる。
どうやら何かしらの琴線に触れたらしい。
「んあ?何言ってんだい。俺達の鍛えた武器と防具を使いこなせねぇへっぽこ冒険者と、見る目の無ぇ工房長が悪いんだ。そんな奴らとおさらばできて有り難えってもんよ」
「そうそう、兄貴の言う通りさ。あんだけ優れた武器と防具だぞ、ちょっとぐらい呪われるからってなんだって話だぜ」
そう言うと二人はまだ半分以上残っていたビールのグラスを一気に傾けると二人同時に飲み干す。
揃いも揃って豪快に髭に泡を付けると、グラスを天高く掲げてこう言った。
「おかわり!!」
名前:グワンゴ・ドロル
年齢:31
種族:ドワーフ
性別:男
職業:鍛治師
LV.23
体力:950
魔力:350
攻撃:1000
防御:1100
敏捷:350
ユニークスキル"災いの名工"
より強力な武器の生成が可能
但し強制的に武器スロットに呪いがセットされる