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パーティー解散④

 会議室にあるのは大きな円卓、それを囲む複数の椅子、あとは文字を書き込む黒いボード。

 円卓は腕利きの家具職人に作らせた特注品。

 綺麗な木目と細部まで丁寧に削り美しい円を描いている。

 しかしその円卓は会議室には少々大きいせいか室内はやや手狭である。

 その円卓を囲むように置かれた椅子に、四人は等間隔を開けて腰掛けている。

 珍しく緊張しているのか、美しい金髪を少し弄りながら透き通るような碧眼の瞳を暫く空中に彷徨わせた。

 いつもより多く息を吸って吐いてから、再び大きく息を吸い込むとはっきりとした声言った。


「今この時を以て、Aランク冒険者パーティー黄金の祝福を解散する!」


「……は?……ちょまっ、え?え?解散?違うだろ!俺がクビになるだけで終わりじゃないのか?これは聞いてないぞ」


 俺がパーティーをクビになるのとパーティーそのものが解散になるのとでは大き過ぎる違いがある。

 足手纏いになりつつあった俺を置いて、黄金の祝福は前に進み続ける。

 それならば納得できるが、解散では納得できないものがある。


「事情が変わったんだ」


「ど、どういうことか説明しろ!お前にはその義務がある」


「……ヒーリアが俺との子を身籠った。だから当面はダンジョンに潜れない。俺とエリオラの二人でS級になるのは不可能だ。だからパーティーは今日で解散。俺とエリオラは別のAランクパーティー神樹の盾と新しくパーティーを作って、改めてダンジョン攻略を目指すつもりだ」


「チョットナニイッテルカワカラナイ」


 今自分がどれだけマヌケな顔をしているかわからない。

 この部屋に鏡がなかったのがせめてもの救いだろう。


「一から説明すると神樹の盾のリーダー、アーノルドからは前々からダンジョン攻略の協力をしたいという打診があった。黄金の祝福と合併したいという話になったのはその時だ。神樹の盾にはこの都市一の戦士アーノルドがいるからな。それがお前の代わりに加入する。ヒーリアが俺との子供を身籠もっていることを知ったのはダンジョン探索途中だ。人数も半分に減ったし一度解散して新しくパーティーを作ることにしたほうがいいと思った。つまりはそういうことだ」


 実質クビなのは変わらないとして、もう一つ大きな謎がある。

 ヒーリアとアークの間に子供ができたという言葉の意味が、俺にはどうしても理解できないのである。

 子供ができるには男女間でのとある行為が必要になる。

 そして俺達3人はガキの頃からずっと一緒で、恋愛感情とかそんなものは無い……とは言わない。

 確かにヒーリアに告白してフラれたこともあった。

 そしてアークも過去にフラれたことがあるのも知っている。

 それからそういう浮ついた話はなかったはず。

 いや、あったからそうなっているのか。

 パーティー解散の話も神樹の盾との合併の話も二人が付き合っていたことも、俺は何にも知らず道化を演じていたと思えば実に滑稽の極み。


「あぁ、そうか。お前はそういう奴だったんだな。ならいいさ。お前の好きにすればいい。このパーティーもヒーリアのこともあの時の約束も、お前だけでどうにかすればいい。すればいいよ!」


 なんだかひどく疲れてしまった。

 アークの目もヒーリアの目も直視できない。

 二人の間の少し上の壁を見てそう答えるしかなかった。


「何泣いてんの?キモッ」


「エ、エリオラさん?」


 エリオラは緑髪の少女で俺達より三つほど歳下になる。

 あまり口数は多くないが天才と言われる魔導士で、うち以外の他の四つのAランクパーティーからも誘いがあった。

 普段はこんなことを言う子じゃないので、気のせいかと思ったがこちらをみる蔑みの目を見て聞き間違いでないことを理解した。


「あたしが入った頃にはもう足手纏いだったの、気付いてた?それを庇おうとアークは前衛職のカバーをしながら後衛職もやってた。ヒーリアは回復の効きづらいあんたに回復魔法掛けまくって傷を癒してた。アークがやめろって言うから今まで言わなかったけど、もうメンバーじゃないから言ってもいいよね。あんたのせいであたし達は本来の力を発揮できなかったの。あんたの無能なユニークスキルのせいでね!」


 ユニークスキルが無能でも身体を鍛えまくってAランク冒険者になったことへの僅かな自負があったことは認める。

 それは周りのサポートがなければ到底届かなかったのだろうか。

 あぁ、確かに思い返せばいくつもある。

 今だってこんなボロボロの姿だが、仲間がいなければ今頃モンスターの餌食になっていた。

 そんな場面が何度もあった。


「俺のせい……か」


 エリオラが口数少なかったのは、俺への不満をいつも我慢していたからだったのかもしれない。

 現に今日は口数が多い。

 最悪も最悪だ。

 もうどこか消えていなくなってしまいたい。

 もう帰る場所も護る人も全て失ってしまったから。

 いつもは場を和ませてくれるヒーリアも何も言わないし、俺とも目を合わせようとしない。

 もう完全に終わりだ、黄金の祝福も俺の冒険も今日ここで終わる。


名前:エリオラ・マギカル

年齢:23歳

種族:ヒューマン

性別:女

職業:黒魔導師

LV.57

体力:1350

魔力:8500

攻撃:4500

防御:1000

敏捷:2500


ユニークスキル"大魔導師の道"

攻撃魔法強化、消費魔力軽減、取得魔法数増加、魔法取得成功率上昇、短縮詠唱可能

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