パーティー解散③
ダンジョン探索を終えて最初に向かうのは冒険者ギルドの本部がある都市の中央区。
オワリと呼ばれる俺達の住む都市には冒険者ギルドが本部と支部合わせて四つある。
本当ならダンジョン探索の報告は本部でも支部でもどこでもいいのだが、ギルドマスターの顔を出せという圧力もあってBランク以上は毎回本部に顔を出して報告している。
コミュニケーションを大事にするギルマスらしいといえばらしいが、今時の若者は苦手にしている者もいるらしい。
ギルドに着いたらまず最初にするのは今回の探索の成果を報告すること。
簡単にいえば最高到達階数を更新したならそれを、集めた素材や魔石などがあればギルドで全て買い取ることになっている。
もし仮に直接商人などと交渉して売ると結構なペナルティを食らうので、昔はいたらしいが最近ではそういった輩はほとんどいない。
他には怪我人の報告や何かダンジョンに異変が起きていないかなどの報告である。
「やぁペコル、今帰ったよ」
ギルドの本部にある受付の一番奥に行くと、見知った顔と目が合った。
一年前に引退した担当受付嬢の代わりに新しく担当になったペコルである。
大きなウサ耳が特徴の獣人で、こちらに気付くとその大きな瞳をパチパチとさせた。
「黄金の祝福の皆様、おかえりなさい。今回も全員で帰還ですね。それでは報告をお願いします」
人形のような可愛らしい姿形とは反対に、その喋り方は事務的でややお堅い。
それでも最初の頃に比べたら若干表情が柔らかくなったような気がする。
「到達階数は第七層最深部。階層主の姿と地形を遠目から観察してから帰還。今回は素材はほとんど取ってきていない、次回のための偵察とルートの確認が主目的だったからな」
報告は勿論リーダーであるアークの仕事だ。
二人とも真面目な性格なので、ギルドでの報告は毎回こんな感じである。
「かしこまりました。それでは黄金の祝福の最高到達階数を第七層最深部に更新しておきます。それからギルドマスターから話があるそうです。帰ってきたらすぐに顔を出すよう言っておりました」
「……わかった。後で顔を出す。その前に空いてる会議室を借りていいか。パーティーで話し合うことがあるから」
「かしこまりました。第ニ会議室が空いておりますのでそちらをお使い下さい。ギルドマスターへの報告は少し時間を空けてからにします」
「そうしてくれると助かる」
そう言ってお堅い二人の会話は終わった。
会議室でやるよりいつもの酒場で脱退の話をしたかったが仕方あるまい。
アークの後に続いて会議室へ向かおうとすると、ペコルが小さな手で手招きをしているので近付く。
なにやら耳打ちしようと口元を隠すようにしているので、耳を傾けると周りに聞こえないくらい小さな声で囁いた。
「ギルドマスターはかなり怒っていた様子でした。あと少し悲しそうでもありましたかね。何か分かりませんが気を付けてください」
「まあ、心当たりはあるから大丈夫。忠告ありがとう」
ギルマスが脱退の話をアークから聞いていたのならその反応も仕方ないかもしれない。
冒険者になるより前からの知り合いで冒険者になってからも世話になった恩人だ。
その相手に律儀に話を通すのは流石はアークといったところだ。
根回しにも抜かりはないできたリーダーに、俺も鼻高々である。
それを含めても脱退の話をするならギルドで話すより酒場で話したかったものだ。
でもそれはそれで面倒なことになる予感がする。
あのお節介なギルマスのことだ、俺が脱退した後色んな別のパーティーを勧めて来るだろう。
しかし今は他のパーティーでやるつもりもないし、入るにしても冒険者業は一旦少しお休みするつもりだ。
くそお世話になったのは事実なので、後で会ったら感謝の言葉くらいは伝えることとしよう。
正直照れ臭いが。
あとは勿論このペコルにもお礼を言いたいところである。
感謝の言葉は後で考えるとしても、こういった裏方の人達の活躍があってこそ俺達はダンジョンに挑戦し続けられた。
そういう感謝は忘れないようにしなければいけない。
そんなことを考えながら俺は三人より数メートル遅れて会議室へと向かったのだった。
名前:ヒーリア・オラーシャ
年齢:25歳
種族:ヒューマン
性別:女
職業:回復術師
LV.64
体力:1800
魔力:7800
攻撃:1200
防御:1200
敏捷:2200
ユニークスキル"ヒールマスター"
パーティー全体の回復量(ポーション含む)1.5倍、体力1.2倍、自然治癒力3倍
デバフ回復成功率増加