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週末の過ごし方③

 世界が回っているのか、視界が回っているのかわからない。

 しかしそんなことはどうでも良かった。

 今はとにかく楽しい気分で、やりたいことなんでもできるとさえ思う。

 室内は暑苦しかったので夜風に当たりに外をぶらぶらと散歩している。

 薄い雲から透けて見える月は風情があり、輝く星々は夜空に浮かぶ宝石のよう。

 夜はまだ更けておらず家に帰るにはまだ少し早い時間。

 もう一件だけ酒場をハシゴしても良かったのだが、半歩後ろを歩いていた人物に服の裾を引っ張られその考えは消し飛んだ。


「ねぇ……二人きりになれる場所で飲み直しませんか?」


 潤んだ瞳、艶やかな唇、月のように白い肌、たわわに実った二つの果実。

 シスター・アンジェリーナを連れ出すことに成功した俺は、ダンジョンで仲間と逸れた時よりも浮き足立っている。


「……俺の家はすぐそこだけど……来る?」


 声が何度も上擦ってみっともないったらない。

 戦闘では度胸だのと言っていても、こんな時の男らしさはなかったらしい。

 酒場から俺の家まで歩いてすぐの場所にある。

 部屋は1週間前に掃除したので、まだなんとか人を呼べるラインを保っていたはずだ。

 そもそもこんな見え透いた誘い方に乗るかという不安もあったが、目の前の女性は元々赤みがかっていた頬をさらに染めて頷いた。

 そこから俺の家に着くまで会話はほとんどない。

 俺ができたのは精々右手と右足を同時に出さないように気を付けることくらいだ。


「……ここ俺ん家」


「……はい」


 冒険者時代の僅かな貯金を頭金にして買った一軒家。

 築30年の可もなく不可もないそんな家。

 懐から鍵を取り出してドアを開ける。

 もう少し綺麗にしてた気がしたが、少しの汚れがいつも以上に気になってしまう。


「ごめん、あんまり綺麗じゃないけど」


「大丈夫です。お邪魔します」


 シスターがブーツを脱ぐと白い小さな足が出てきた。

 冒険者をやっていたらありえないような綺麗な足だ。


「適当に寛いでていいからさ。奥の部屋で待ってて、お酒持ってくよ」


「はい、わかりました」


 来客用のスリッパが無いので、シスターはペタペタと足音をさせて木の床を歩いて奥へ行く。

 その後ろ姿に飛びつきたくなるのを必死に堪えて、台所へ向かった。


「えーっと、確かまだ空けてないいいお酒があったはず」


 台所の棚を漁りお目当ての果実酒を発見した。

 甘くて口当たりもよく飲みやすいけどアルコール度数は高めという評判の果実酒だ。

 それとグラスを二つ持って奥の部屋へと向かう。

 自分の家なのに自分の家じゃないような気がして、意味もなく足音を殺して歩いた。

 ドアの隙間から僅かに見える部屋の様子。

 それを見た瞬間俺は固まっていた。


 一糸纏わぬ肢体は部屋の明かりに照らされて輝いている。

 先程の星の光などこの姿に比べたら可哀想なほど劣るだろう。

 冒険者とは違い身体には傷一つない。

 まるで前人未到のダンジョンの秘奥に足を踏み入れたような高揚感だった。

 扉を押し除けるように開けてグラスなど割れても構うもんかと机に置く。


 己の服を乱雑に脱ぎながらシスターの唇に自分の唇をあてがった。

 あとは、何も考えない。

 ただ欲望のままにその唇を、身体を、獣のように貪った。


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