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大侵攻④

 不治の都市オワリの北門から出て道なりに数キロ進むとヨモヅ大森林が見えてくる。

 とはいえ十数年前までは大森林にに続くきちんと整備された道はなかった。

 何故ならそこは入った人間は神隠しに遭う、森の主様が住んでいるなどと昔から言われていた場所だったからだ。

 そんなあまり人が寄り付かなかった森の中心付近にダンジョンの入り口は存在する。

 そこはちょうど盆地のように少し窪んだ場所に位置していて、ジメジメとした陰気な洞窟がダンジョンへの入り口となっている。


 今から十五年前その洞窟からアンデッドの軍団が現れた時、都市に住む人々の半数に及ぶ犠牲者が出た。

 都市を守るために多くの人々が戦い、籠城し、援軍を待ち、なんとかそのほとんどを駆逐することができた。

 それから他の都市の冒険者ギルドが調査団を設立して、モンスターの発生源を探った。

 ダンジョンの入り口が特定され、そこには夜通しの見張りが立てられることとなる。

 それと同時にダンジョンの中を調査するためにジンを始めとする冒険者の精鋭がその中へと足を踏み入れるが、それはまた別の機会に話すとしよう。


 まずはダンジョンの周りを囲って安全の確保をしなければならない。

 洞窟の周囲の木は伐採され、そこを囲むように最初は壁が建てられた。

 そのうち壁は強固になり周囲には冒険者が常駐できるように拠点となる小さな村のようなものが作られていった。

 砦とは本来外敵から身を守るために造られるが、この砦は中から外に出ないように蓋をする格好で造られている。


 元々この都市の出身で他のダンジョンがある都市にて冒険者をしていたジン達は、最初にこの都市に来た冒険者パーティーの一つだった。

 既にSランクに差し掛かろうというところまで来ていたジン達のお陰もあって、ダンジョンの攻略は順調に進んでいった。


 ダンジョンの攻略の基本はモンスターの討伐と資源の調査と拠点作りからなる。

 ダンジョンの攻略と調査を行いダンジョンの中に拠点を作れそうな場所を探し、建築に詳しいドワーフ達を呼び拠点を作る。

 それを繰り返して行い、現在は十数個程の拠点がダンジョン内に作られている。

 ただその拠点全てに人がいて管理されているというわけでもない。

 それに加えて現在は神樹の祝福が発した避難命令により全ての拠点が放棄されおり。

 ダンジョンの内部にいる冒険者は神樹の祝福の八名のみとなっていた。




 ここはダンジョンの第ニ階層と第三階層の境目辺り。

 第二階層は通称不死者の洗礼と呼ばれる場所で、例えるならば墓地のような場所になっている。

 人が作った墓場に似ているが誰が作ったかなどは未だに不明のまま。

 この辺りは沼地ではなく普通の土なので、こちらの方が戦いやすいと言えるだろう。

 そしてここから第三階層へと向かうために築かれた拠点がある。

 石垣で組まれた簡易的な壁には魔法陣が描かれていて多少のモンスターの攻撃では壊れない造りだ。

 その中は木材で組まれたログハウスのようなものが何個か置かれていて、数十人程度なら泊まれるようになっている。


癒し手の細やかな施し(エーラ)


「……もう大丈夫です、ありがとうございます。極力魔力は温存してください。この後必要になるでしょうから」


 ハーフエルフで回復職のケニーがアーノルドの負った傷に回復魔法をかけると、あちこちにあった小さな傷が塞がっていった。

 傷は浅くても傷口から細菌が入ると大変なことになる。

 特にゾンビの攻撃による傷ならば尚更のこと。

 酷い場合は肉が腐り骨にまで毒が入り込む。

 傷がきちんと塞がったことを確認すると、アークが最初に口を開いた。


「作戦を練るにしてもあまり時間が無いな。正直俺の作戦は作戦とも言えない酷いものだ」


 いつも以上に眉間に皺を寄せた険しい表情である。

 どこか思い詰めたような鬼気迫るものがあり、周囲はそれを心配している。

 しかし本人は大丈夫の一点張りなので取り付く島もない。


「このパーティーのリーダーは貴方です。そして私は副リーダー。もし貴方が間違っていると判断したら私が口を挟みますから。その酷い作戦とやらを聞かせてもらえますか」


 アーノルドの表情はいつもと変わらない穏やかなもの。

 年齢で言うとアーノルドはこの中で一番の年長者である。

 そして人格者でもあると言えるだろう。

 優しい口調の中に芯が通っていて、その言葉は真っ直ぐ相手に届く。


「一番大事なのは一匹たりともこのダンジョンからモンスターは出さないこと。だからこの砦で援軍が来るまでひたすら耐え続ける。それしかない。だから前衛は盾を構えてポーションを飲みながら敵を受け止めて、後衛はエリクサーを飲みながら回復と魔法攻撃を延々とやる。どうだ、酷いもんだろ」


 要するに力の限り戦えということだ。

 剣が折れたなら盾で守り盾が割れたら拳で殴る。

 怪我をしたなら回復して再び戦え。

 そう言っているのと同じである。


「なんていうか泥臭いですね。貴方らしくない。というかまるで彼が考え付きそうな作戦ですね」


「……。」


 自分でもらしくないと思っていた作戦がどうしても浮かんだのか。

 その答えを言われたような気がして、アークは押し黙った。

 それとは対照的にアーノルドの顔には白い歯が光った。


「でも嫌いじゃないですよ。それくらい単純な方が私は意外と好きだったりします。みんなはどうでしょう。他に都市を守り切る作戦はありますか?」


「いいや」

「まあ、ないかも」

「別に私はそれでも」

「同意」


「じゃあ、すまない。俺に命を預けてくれ」


「ええ、最初からそのつもりです。でも誰も死なせません?私が必ず守り抜きますから」


「頼むよアーノルド。最後に一つ、全員生きて帰るぞ」


 近くにいるメンバーとハグをして背中を叩く。

 それが終われば次のメンバーとも同様にハグをしていた。

 これが最後の別れとならないように、三秒以内にハグを済ませるのがオワリの冒険者流のやり方である。

 そうして全員と挨拶が終わった頃、アンデッドの大群は拠点とは目と鼻の先まで来ていた。

 一つ一つの足音が幾重にも重なると、とてつもないプレッシャーとなって襲い掛かる。

 それはまさに数の暴力だった。


種族:スケルトン

職業:無し

LV.10〜15

体力:350

魔力:50

攻撃:200

防御:150

敏捷:100


肉体は朽ち果てて残った骨の体で動く様は哀れ

無意識のうちに生きるものを襲っているがそこに意味はない


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