003
「お姉ちゃん、ライとおでかけ嫌……?」
「そ、そんなことないよ! もー、そんな悲しそうな顔しないで、ね?」
「でもぉ……」
こうやって見ていると、まるで姉妹だな。じゃなくて――
「なぁ、アリシア、なんで裸なんだ?」
「こ、これはその……」
ゆっくりとライを抱きしめながら前面を隠すアリシア。
「お姉ちゃーんっ」
ライがむぎゅっと抱きしめ返す。
「と、とにかく、ゼクスはあっち向いてて!」
「あ、ああ……」
ライを抱き上げながら前面を隠すアリシアから目を逸らす。
見えそうで見えないっていうのが一番やらしいんだがな……。まぁ、女性に男のロマンは分からないか。
「……」
扉が閉まったあと、少しの間フウに頬ずりされていると服を着たアリシアがライを抱きかかえてやってきた。
アリシアは満足そうに鼻を鳴らしている。
「ゼクス! ライちゃんのことは任せた!」
「ん? ライは納得できたのか?」
抱かれているライの表情を確認するために覗き込んでみる。その顔は、撫でられたあとの昇天中だった。
「こんな短時間でいったい何をしたんだ?」
「ひ、ヒミツ! とにかく、私は部屋に戻るから! ライちゃんよろしくね!」
「あ、ああ……」
なんだか様子がおかしい気がする――いつの間にか蕩けているライを自然な動作で渡されてしまった。
ライの可愛い顔がふにゃふにゃになっている。
「あ、そうだ。アリシア」
「ん?」
「あとで『なんで裸だったのか』、絶対に聞くからな?」
「うっ……それは……」
明らかにやましい事がありそうなアリシアの表情。本当に一体なにをしようとしてたのか……。
「まぁ何をしてようと別にいいんだが……。そうだ、何か買っきてほしいものはあるか?」
「え、いいの?」
「ああ、あまり高いのは無理だ、が、な――――」
「ゼクス?」
「……」
そういえば黄金騎士団の鎧を売れば少しは金になるかもしれないな。
「――ゼクスってば!」
「あ、ああ、すまない」
「もー、聞いてきたのはそっちなのにひどいよぉ……」
アリシアはむぅっと頬を膨らませて顔を覗き込んでくる。
「悪い悪い……それで、なにがいい?」
「えっとね……」
「ん?」
「皆に似合う服を買ってきて欲しいかなーなんて……お揃いのとか……」
頬をかきながら照れるアリシアに、なんだかこっちまで恥ずかしくなってしまう。
「わ、分かった……でも無かったら諦めてくれ」
「うん!」
アリシアの満面の笑みに心の中で微笑みつつ、俺は背中にくっついたままのフウと昇天しているライを連れて、王城のある町に向かうことに。
一旦城を出たあと騎士団の鎧を忘れていたため、デーモンの皮から作った魔法の道具袋に詰め込んだ。
***
魔王城からずいぶん走っていると、ようやく街道を見つけた。ここから町までならそれほど遠くはないはず。
「……お兄ちゃん?」
「お、やっと起きたか」
「おはゃぅ……」
眠たそうな顔をしたライが腕の中で目をごしごしと拭いた。
「うーん……」
腕を伸ばすライ。少しの間が空いたあと、ライはキョロキョロと辺りを見渡した。
「あれ、お姉ちゃんは?」
「ああ、アリシアはお留守番だ」
「えー……」
アリシアが居ないショックで落ち込むライ。その姿になぜか落ち込んでいる俺が居る……なぜ俺までショックを受けているのか分からない……。
「――ライずるい」
少し肩を落としていると頬ずりしながらフウが言った。
「フウもズルいよ!」
「ずるくないもん、ゼクスはフウのだもん」




