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真実は迷宮の中  作者: Luce
第4章 セルファ
78/84

78話 成長

毎週金曜20時投稿です!


張り切ってどうぞ!


ルートの故郷、レストへたどり着いた2人は街の中へと入り、ルートは手っ取り早く用事を済ませるために正体を隠して歩いていると、面白いものを求めて近付いてきた"黒"ランクの戦闘者のシシリーに見つかる。

そしてシシリーから逃げると次はルートの槍の師匠、"黒"ランクのソウと出会い再び逃走。

上手く逃げ遂せた2人は目的地へと向かう道中、ルートが知ってる最後の"黒"ランク戦闘者のガランドールに遭遇し、何かに気がついた彼が言葉を発する前に面白いものを追い求めてきた戦闘者たちが包囲し、戦闘が始まるかと思われたその時、緊急事態を告げる鐘の音がレストに響き渡る。

戦闘者たちの興味が鐘の音に一気に傾き、負けた2人の包囲網が消失したところで、2人は目的地へと足を進めて行った。


ということで目的地へと侵入を果たした2人であるが、


「で、結局ここって何処なの?」

「簡単に言うとおっかない者たちが住んでいるところだね」

「おっかない?」

「うん。100年くらい前から、セルファ領が出来た当時から生きている変人集団の初期メンバーといったらいいかな?そんな者たちが住んでいるところ」

「長命種族?」

「そ。このレストの出来た当時から生きているご隠居たち。さっきから僕が特級危険指定種が出ても焦ってないのはご隠居たちがいるからだよ。下手な"黒"ランクよりも強いからね」

「そ、それは…」


明らかに引いた様子のエリュにルートは苦笑いを向けると、


「っぶないなあ」


飛来してきた槍を掴み投げ返し、


「エリュ、ちょっと離れておいて。いつもの事だから心配もしなくていいよっと!」


ひとりでに宙に浮いて斬りかかっきた剣を回し蹴りで迎撃する。


大人しくルートの言葉に従ってエリュがその場を離れてゆくと、次の瞬間、


ピキピキピキッ


石畳を伝うように薄く氷がルートの足元に素早く迫り、


「『創火ファイヤー』!」


その属性に適性がなくても、魔力とその言葉さえ言えば発動できるという神のもたらした奇跡と呼ばれる基本魔法に分類される『創火ファイヤー』を、無尽蔵な魔力にものを言わせて過剰に供給し、大きな火の玉を構成して温度の低下を防ぐ。


さらに続けて"探知"を発動し、何かしらの反応を得ようとするが、


「なっ!?」


正面に見える通りの向こうから一人の男性が歩いて来ているはずなのに、反応がないように感じるという不可解な状況に驚いていると、


「"探知"にはこういう弱点があるから気をつけておけよ」


降り積もった雪のように綺麗な銀の短く刈り上げたような髪を持っている正面から堂々と近寄ってくる男のその言葉に、


「そうだね!今度は気を付けるよ!」


そう言って距離を一瞬にして詰め、懐へ飛び込み拳を放つが、


「なってない!速さしか伴わない攻撃など塵も同然!拳とはこう放つのだ!」


サラッと軌道をそらされ、お手本とばかりに放たれた拳を受け、腹に圧迫感と鈍痛がじんわりと広がってゆき、


「その程度か!弱い、弱いぞ!」


痛みで鈍った動きを指摘するように掌底を胸に叩き込まれる。


ルートは何とかインパクトの直前に後ろに飛んで衝撃を減らしたものの、小柄な体躯は容易に宙に浮き上がり吹っ飛び、大きく距離が開く。


そして、


「あなたが強すぎるんでしょうが!」

「何を言う!その程度の力でこのレストを出ていくとは…身の程を知れ!」

「なっ!?分かったよ!それじゃあ見てもらうよ!」

「思い上がりも甚だしい!ねじ伏せてやろう!」


ルートは動きを阻害する邪魔なロングコートを脱ぎ捨て、腰袋からいつもの白い槍を引き抜いて、ソウ直伝の槍の構えでその穂先をご隠居に向けると、頭をスッと冷やし、


「行くよ」


"身体強化"はもちろん、土魔法を使って足元をスターティングブロックのように変化させて虹蛇の筋力を最大限に引き出して強く踏み込み、弾丸の如く飛び出す。


その速度は直線状の動きだとはいっても『異常活性化ブレイクアクティベーション』を発動したエリュよりも速く、動いているルート自身もその速度は予想外でこれなら少しは意表をつけるだろうと思ったのだが、


「ふっ、多少はやるようになったみたいだが…。所詮は」


ご隠居は突き出した槍を半身になって避けると、がら空きになった横っ腹を殴りつけてぶっ飛ばす。


「っ!」

「その程度。お前以上の速さの魔物など優に存在しておる」


接近戦では圧倒的に錬度に差があるため、ルートは単純な接近戦では勝利を収めることが出来ないと判断すると、本来の戦い方である腰袋から刺突性能を重視した短剣を30本近くと金属球数個を取り出すと、


「『磁力の手(マグネットハンド)』。行くよ」


そのそれぞれを宙に浮かべ、そして更にいつもは切り札として使用していた1mほどの蒼い鎖を見せ札として宙に浮かべると、様子見とばかりに一本の短剣を射出する。


その短剣をご隠居は余裕を持って回避すると、ルートに向かってにやりとした笑い顔を作り上げ、


「ほう、少しは出来るようになってきたようだな。それではその成果、存分に見せてみい」


クイクイとこちらに向けた片手で掛かって来いと挑発するような仕草をしているが、ルートは乗せられることなく、


「シッ!」


鋭く肺の中の空気を吐き出すと同時に動き出し、両者の間の距離が1mを切ったところでルートは自分の周りに浮いている短剣の内の一本を牽制として射出する。


その短剣をご隠居はゆっくりとしたようにも見える流れるような体捌きで避け、ルートは避けた先に向かって鋭く槍を突き出すと、


「フッ」


今度はルートの懐に飛び込むような形でその刺突を避けると、腕を軽く引いて呼気をともにその拳を放つ。


ルートはその拳を防ごうとお腹の高さまで『岩壁ロックウォール』を強度を重視して展開し、


ドゴン


という拳と岩の壁との衝突音とは思えないほどの大きく重い音がうなりを上げるが、罅一つ入らない癖をして拳の形はハッキリと刻まれたが破砕されること無く耐え切ったそれは、


「『貫き通すもの(ドゥヴシェフ)』!」


彼の膨大な魔力が込められたことによって強力な磁力を十分に受け取った金属球との衝突によって一瞬にして大きな音を道ずれに破砕されて瓦礫と化した。


恩知らずな金属球は恩人を破壊して加害者のご隠居の胴体をアーミー・エイプの総指揮個体の頭部を四散させたのと同様の破壊力を維持したまま食い破らんとばかりに飛んでいく。


その飛来してくる金属球をご隠居はその常人とはかけ離れた異常な動体視力で以って捉えると、


「ホホッ」


小さく笑ってその金属球が収まる程度に手のひらを広げて、信じられないようなことだがそれをつかもうと手を伸ばしたところを、


「予想通り」


ルートは槍の穂先の研いである刃をご隠居の首を削ぐな軌道になるように巧みに手元で操作して素早く引き戻す。

更に自分の周りに浮いている短剣の類も同じくご隠居に向けて射出し、少なくとも敵対者ではない者に対しては過剰ともいえる火力を向ける。


背後から迫り来る槍、正面からは恐ろしいほどの速度で向かってくる多くの短剣を目の前に、その全てが到着するまでの一瞬、ご隠居はその容赦も遠慮も何も無い攻撃に対して一つ笑みを浮かべると、


ザンッ


ご隠居の首をルートの槍が素早く切り裂き、皮一枚のところで繋がっている首と胴体という状況を、ルートの放った短剣が胴体にぽっかりと穴を空けて貫いた衝撃で千切れ宙を舞う。


そして、


「これで合格かな?」


ご隠居の宙に浮いた頭部が地面に接触したその瞬間、


ガシャン


まるでガラスの塊が高いところから落ちて割れたような破砕音が周囲に響き、それの発生源たる頭部は日の光を受けキラキラとした細かい欠片になってあたりに散らばり、やがて胴体ともども水溜りになった。


「ふう、疲れた」

「え?」


ルートと良く分からない者との戦いを見ていたエリュは、まずご隠居の強さに驚き、次にルートの知り合いであるというのにも関わらず本気で戦っているという光景に驚く。

そしてルートの反応から相手が知り合いであるというにも関わらずルートが容赦なく槍を振るい、短剣を射出したという光景にも、更にそれがエリュの目を以ってしても違和感なく鋭い動きをしていたのが、まさかの氷の塊だったという事実が素直に消化できずにいた。


そのエリュに対してルートは宙に浮いている短剣を手元に移動させて腰袋にしまいながら近づくと、


「いやぁ、ごめんね。一応片付いたよ」

「え?え?」

「ん、大丈夫?エリュ」


そう言ってエリュの肩を叩いて顔を覗き込むルート。


「いや~、強くなったな、ルート」


今ルートたちがいる通りの向こうの方から先ほどのご隠居と同じ声が聞こえてくると、ルートは一つため息を吐き出してその方向を見ること無く、エリュはその声の聞こえてきた方向に素早く視線を移すといった、互いに異なった行動を取ると、ルートは頭痛を堪えるように頭を抑えながら、


「……それは色々やってきたからね。ガー爺は相変わらずだね」

「たった5年やそこらで今更変わるはずも無かろう?」

「それはそうだけどさ…」


ルートはそう快活そうな調子でいうご隠居、ガー爺に一層頭痛を堪えるような仕草をする。


そうしてゆっくりと通りの向こうから歩いてきていたガー爺がルートの元にたどり着き、ルートが頭を上げてガー爺に目を向けると、


「お帰り、ルー坊……ッ」

「ただいま、ガー爺…」


お互いに言葉の続きを探すように口を開いては閉じる動作を交えるが結局は何も言葉は見つからず、ガー爺はなんらかの思いの表れなのか、下唇をぐっと噛むとゆっくりと手を広げてルートの体を大切そうに抱き寄せて頭をサッと撫でる。


ルートはそのガー爺の慣れない手つきで撫でる少し冷たい手が懐かしく、ぐっと来るような気持ちを堪えながらガー爺の体に手を回してゆっくりと強く抱きしめた。



少し寒い風が吹くルートの故郷、レストの某所にてエリュと丁度真上に上った日だけが見守る中、ルートとガー爺の再会はこうして成った。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


しばらくお互いに抱き合うようなそのままの体勢でいると、どちらからともなく、


「ぷはっ!」

「ふう」


ルートは無意識にいつの間にか腕に込めていた力を緩め、埋めていた顔をガー爺の胸元から頭を離して空気を求め、ガー爺のほうは自分の手の中にある確かな温もりの存在にしばらく触れることで、5年前のある日突然として自分たちの目の届く範囲から消えていなくなってしまったルートが嘘や幻といった類のものではないと確信を得ると、安堵からの脱力の意味で息を吐き出した。


そうして少し拘束の緩んだ中、ルートは仰ぎ見るように首を逸らしてガー爺の顔を視界の中に入れると、


「ごめんなさい。勝手にいなくなって」

「…本当にだ。ルー坊までいなくなってしまっては我らは一体なんのためにここにいるのか分からなくなってしまいそうになってしまいそうになってしまいそうになっておった」

「そう。…本当にありがとうね。セルファ領のこと」

「いつか戻ってくると信じておったからな。……それに我らも気が付いたのだ、ルー坊の曽祖父に対しての恩義によって留まっておったこのセルファ領は思っていた以上にいつの間にか我らの中で大きくなっておったということにな」

「…本当にありがとう」


穏やかな様子でそう言うガー爺にルートは表情を緩めて感謝の言葉を告げると、年甲斐も無く少し気取ったことを言ったと気恥ずかしくなってしまった彼は少し目を逸らす。


意外と心地悪くない沈黙が流れ、しばらくするとガー爺がルートの体に回していた腕をゆっくりと外して解放すると、同じようにルートも回していた腕を放して一歩下がって距離を取ると、ガー爺は先ほどまでの穏やかな様子はどこへ行ってしまったのか、厳しい目でルートの顔を見ると、


「で、説明して貰えるか?そっちの子のことを、まさかもう()()に及んだというわけではあるまいな!!」


と指を突きつけながらそう言った。


その迫力に溢れたガー爺に対してルートは、


「え?ん?()()ってなに?」


純粋に言葉の意味が分からないといった様子でそう首をかしげて聞き返す。


その様子を見てガー爺は衝撃を受けたような様子で大きくのけぞり、そしてしばらくすると、ぶつぶつと、


「いやいや、確かに口付けという単語を出しただけでも真っ赤になるということで、そういう行為・・についての学習はセルファの者たちが生きておった頃はしておらなんだ。ただ…5年だぞ?それほどの年月があれば自然と耳に入るだろうよ。なのにそれについてなにも知らない?いやいやまさか」

「ん?どうしたの?」

「いやなんでもない。…ルート、口付け(・・・)


「なっ!い、いきなりどうしたのさ!」


真っ赤になってそういう反応をするルートを見て、ガー爺は体勢を立て直すとすっかり真顔になって、


(ああ、ルー坊はこの5年間でそういった知識について何一つとして学んでおらんのか。一体ルー坊はどこで何をしておったのだ。ちなみに…そっちの子は頬が少し赤らんでいる程度で済んでいるということはおそらく意味が分かっておるのだろうな)


どうにも自分の知らない5年という期間はルートの反応から俗世とは切り離されたところにあったのだろうという推測が容易に成り立ち、これ以上のことを聞くのは自分だけという訳にはいかないと結論付けるとガー爺はルートとエリュの姿を交互に見て、


「ルー坊とそっちのお嬢さん、私と一緒に来い」


そう言うと体を反転させて先導するようにゆっくりと歩き出した。


その背中を見ながらルートとエリュはお互いに目を見合わせると、ルートはエリュに対して笑いかけながら、


「ガー爺は大丈夫だよ」

「分かった」


意外とあっけなく納得したエリュが言葉を疑うことなくさっさとガー爺の後を付けて歩き出した。


そのエリュの後姿を見たルートは来歴ゆえに疑り深いはずの彼女が自分をこうも信じてくれているということに気が付くと、少し胸が高鳴る。


(王都を出てから感じるこの気持ちはなんなんだろう。けど決して嫌じゃない。むしろ…)


自分の体に起こっている不可解な感覚に戸惑いながら、その感覚を表現する言葉を捜していると、


「ルー坊、早く来い!」

「ルート、早く!」


「う、うん!」


ガー爺とエリュの言葉にルートはハッと我に返り、気が付かない間にすっかりと空いてしまった距離を埋めるために思考を打ち切って大きな声で返事をすると地面を強く蹴って二人の下へと走り出していった。



少しは盛り上がるような文章を書けるようになってきたのではないかと少しばかり自惚れ中です。



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もう一つの連載作 テーマは独善の投影。
「辻ヒーラーさんは今日も歩く」
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