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真実は迷宮の中  作者: Luce
第4章 セルファ
76/84

76話 再会

1週間に1度位はこちらも投稿できそうかと思われます。


それでは第4章、どうぞお楽しみを。


「エリュ、そっち行ったよ!」

「任せて!」


バンッ


ルートの脇を抜けたブラッディ・ウルフをエリュの持つ杖が打ち、吹き飛ばす。


その間、ルートはエリュの心配をすることなく槍でブラッディ・ウルフを仕留めてゆく。


そうして最後の1匹の脳天を槍で貫いて仕留めると、かいてもいない汗を拭うフリをして、


「ふぅ、これでおしまい!」

「ルートって芝居っぽい行動好きよね」

「いい気分になってるんだから茶々入れないでよ!」

「あはは、つい」

「ついって!」


ルートで遊ぶエリュ、このようなやり取りは王都ルエガから出たその日から始まり、20日経った今でも続けられていた。


二人は一通りじゃれ合いを終わらせると、ルートは土魔法で地中の深くまでそのブラッディ・ウルフの死体を埋めると、御者の人からのお礼の言葉を受け取ると馬車に乗り込む。


二人が馬車に乗り込むと同時に御者が馬にピシッと手綱を操って発車させ、動き出した馬車はガタゴトと少々の揺れを伴いながらゆっくりと動き出した。


二人の乗る馬車は主に人を乗せて運ぶことに特化した造りになっており、一度に10名は優に乗せることの出来る大きさでバスや飛行機などと同じ座席の構造の車体に、その四隅から垂直方向に延びた柱で屋根を支えているようなものだ。


この馬車には二人の他にも数名の人が乗り込んでおり、その多くは武器を持ったセルファに行って名を上げてやろうというという腹積もりの者たちであった。


先ほどはルートとエリュの二人でブラッディ・ウルフを倒したが、それは単に持ち回りの順番の結果であり、もちろんその彼らも襲ってきた魔物との戦闘をこなしていたが、彼らには二人ほどの余裕は無く、疲労困憊とまではいかないが少々のミスが目立つ程度には疲労していた。


二人はその者たちのことを慮って自分たちの担当を多めにしようかという提案をしたが、エリュはともかくとしてルートの見た目は明らかに子供で、おおよそ20代前半の戦闘者たちのプライドがその提案を跳ね除けた。


それを見てエリュはこれまでの戦闘者としての経験から、ルートはセルファという土地の恐ろしさを知るからこそ、この戦闘者たちは長続きしないと内心で見切りをつけ、しかしこれ以上何かを言ったとしても面倒なことになるだけだと口を噤み、後はセルファの洗礼に任せることにした。


そういう理由で他の戦闘者たちとの会話は最低限になったが、ある意味で目の前の戦闘者たちを見限ったルートとエリュは自分たちに向けられてくる嫉妬や怒りといった感情に一切興味を示さず、その感情の中に少しでも尊敬の念といったものが含まれていたら少しは見所があったのになどと思いながら、


「ところでルート、あとどれくらいで領都に着くの?」

「もうすぐかな。そろそろ見えてくるんじゃないかな?」

「んん~?まだ見えてこないね」

「ちょっとエリュ!近い、近いよ!」


エリュは外側に座っていたルートの体に外を見ようと自分の体を預けて身を乗り出し、ルートはその行動に最近多くなってきた謎の胸が高鳴るような感覚を覚えて彼女に対して抗議してみるが、その言葉などどこ吹く風、行動になんら変化が無くひたすら彼が謎の動悸に悩まされるだけであった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


さすがは音に聞くセルファ領、さらに領都レストという『大森林』の最前線付近まで来るといっそ面白い程に魔物と遭遇し、戦闘に戦闘を重ね、まだ昼にもならないうちに戦闘回数が5回を越え、王都付近では同じ時間で戦闘回数が0か1回だった事を考えればどれだけのものかも自ずと知れよう。


そうして昼頃になると、馬車に乗っている2人を除いた戦闘者たちは疲労が溜まり、その疲労から来るミスでポーションで治る範囲とはいえ、1人がそこそこの怪我を負い、血液不足でダウンしたりとしている中、御者が大きな声を張り上げ、


「レストが見えました!」


その言葉に馬車に乗っていた者達がみんなして車体をガッチリと掴んで身を乗り出して進行方向を見る。


一同の視線の先にはレストを囲むような15Mほどの石壁があって、魔物1匹通さんとばかりにどっしりと構えていた。


ルートは自分の膝の上にエリュが乗っていることなど気にもせず、その5年ぶりに見る石壁に懐かしさの余り涙が溢れてしまいそうになるのを必死に抑え、ポツリと「ただいま」と呟いて穏やかな笑顔を見せた。


そこにルートの感慨深く思っていたところを邪魔するように無粋にも魔物が現れ、馬車を壊してやろうというように突進してくるのを見て、担当の戦闘者たちが慌てて迎撃の準備に入る。


しかし、


「邪魔をしないでもらえるかな」


魔物達はルートが土魔法で作り出した地割れに呑み込まれ、その地割れを修復するように地面が一気に動いて何事も無かったかのようにピッタリと閉じ、なんらいつもと変わりのない地面に戻った。


ルートは魔物達が呑み込まれた事だけ確認すると再び何だか小さくなったように感じる石壁に視線を戻して懐かしさを感じ、戦闘者たちは自分たちではそこまで鮮やかに倒せない魔物を一瞬で仕留めたルートに対して向けていた嫉妬や怒りの感情は消え去り、恐怖一色にその顔を染めるとそれだけの実力がないとこのレストでは生き残って行けないのかと愕然としていた。


そんな心の動きなどとは関係無く進んでゆく馬車は遂にレストの門番たちの検査を待つ者たちの列の傍に止まり、御者の言葉に従って馬車を降りると同時に料金を支払うと次々と検査待ちの列に並んでゆく。


その際に入れ替わるようにレストから出てきた馬車に乗り込もうとする者たちを見て、二人と一緒に乗ってきた戦闘者たちははっと息を飲んだ。


というのも、明らかに自分たちよりも上等な装備をしている戦闘者と思われる者たちが目から輝きを失って、更には体の一部も失って王都行きの馬車に乗り込んでいるのが見えたからだ。


これがセルファ領にいる戦闘者たちの間で言われているセルファの洗礼というもので、自分達よりも強い者たちが夢敗れて去ってゆくのを見てもなお奮起できるかどうかという新たに来た戦闘者たちに対する試金石になっていた。


二人と一緒に乗ってきた戦闘者たちがどうなったかは先ほどまでのルートに対する心情などからも明白で敢えて明記する必要も無いだろう。


閑話休題


面倒なことになる可能性が高いからと、ルートは腰袋から黒のフード付きのロングコートを羽織って顔を見えないようにすると、エリュもその意図が読めたようで何も言わずにその隣に立って並ぶ。


列が進み、ルートはフードの奥から覗いて門番の顔を確認すると、


(うわっ、面倒なことになった)


顔見知りだった。

さらにセルファ家としてはありがたい事に、しかし今のルートにとっては残念な事に職務に忠実、賄賂など以ての外、妙に勘が鋭い真面目が鎧を着て門番をしているとまで言われていた門番が立っていた。


ルートは頭を回転させて何とか逃れる方法を考えはしたものの、いっそ思い切って門番の彼だけに正体を教えて口止めをしておいた方がいいと結論付けた。

さらに彼を見たことで一気にレストでの記憶が蘇り、要注意人物の顔が脳裏にわっさわっさと沸いては消えてゆく。


この地が何かを狂わせるのか、なんともアクの強い面々の顔を思い出すとルートの口から溜息がこぼれ、身バレは門番の彼だけにすると決心すると、ついに自分の番になりその彼の前に立つ。


「身分証を提示してもらえるか?」

「ん」

「拝見させてもらおう。っ!」


(やっぱり1枚目(・・・)のギルドカードを見せればそうなるよね)


門番の彼はルートから渡された青色のギルドカードを操作していくと顔写真と共にそこには"ルート・セルファ"と書かおり、その顔が余りにも見覚えがあったために動きを止めた。


ルートはその反応までは想定通りで、問題は次の反応。

武器を突き付けられて誰何される、もしくは他の場所に連れて行かれて誰何されるかという二択だろうと推察していた。


前者ならば間違いなく騒ぎになってルートの帰還がバレ、後者であれば少々不審に思われたとしても隠し通せる可能性が生まれる。

ルートは静かに事を済ませようとしていた彼の性格から後者を選んでくれると一方的に信頼し、このような作戦に出た。


そして、


「…少し付いてきてもらおう」

「ん」(賭けに勝った!)


門番の男に連れて行かれることになったルートは、エリュに小さく「心配ないよ」と告げるとその後ろを追ってゆく。


男に連れて行かれたのは門番の詰め所で、そこには仮眠をしていた者たちがおり、男はその者たちを起こすとルートを席に着かせ、その周りに配置させる。


そして、


「フードを外して頂けますか?」


ルートはその男の言葉に従ってフードを外すと、


「…やはり」

「「ルート様!?」」


男とルートを取り囲んでいた者たちがそんな驚愕の声を上げる。


ルートはその言葉に苦笑いをして、


「もう様付けをされるような身分じゃないよ。というか元々様付けされるような存在でもないけどね、セルファ家は。後なんだったっけ、『セルファを愛せよ』だったよね確か」


ルートは記憶の片隅に残っていたセルファ家である証明の言葉をなんとか引っ張り出して口に出す。


すると男たちはザッとその場に片膝を立てて頭を垂れると、


「「「お帰りなさいませ、ルート様」」」


心の底から嬉しそうな声でルートの帰還を喜ぶ言葉を述べる。


ルートは少し照れ臭くなりながらも男たちに、


「ただいま、ベン、フー、カイ」


そう言って笑いかけた。


男-ベンたちは自分の名前を覚えてもらえていたという事に喜び、はち切れんばかりの笑顔でしばらく喜んでいたが、ベンの指示でフーとカイの2人は門番の仕事に回され、しばらくこの場から離れることを粘っていたがベンの「そろそろ行け」という冷たい声に、背筋をピンとして敬礼をすると二人揃って詰所を出ていった。


二人が出て行ったところでベンはルートに、


「私は何も聞きませんが、レストの皆さんに帰還は知らせるつもりがなさそうですね。…しかし皆さんはあなたの帰りをずっと待っていますよ?」

「…分かってはいるんだけどね。けど僕は悪いけどセルファ領の領主として就くことはないよ。それはこの国の王に直談判してきたから」

「…相変わらずですね。突拍子の無い行動に出るところはまったく変わってませんね」

「そう?」

「ええ」


ルートはベンの言うことに心当たりがないというように聞きかえすが、ベンはその言葉を撤回することなくじっとルートを見つめる。


ルートはその視線を受けて居心地悪そうにしながらもベンの目をしっかりと見つめると、


「ごめんね。けど僕が今更セルファ家の生き残りだからといってここで名乗りを上げるわけにはいかない。これからのセルファ領にセルファ家は不要。これからのセルファ領は本当の意味で民のためにある場所になるんだから。それこそが僕たちが本当に望んでいたことなんだから」

「…」


ルートは昔、父の書斎で曽祖父が書いていた手記に書いてあった、自分が形だけの貴族になっただけなのに遠くに行ってしまったような感覚を覚えて悲しくなったという一文を思い出してそう言い、その様子にベンも何も言えずに黙り込んでしまう。


そうしてそのなんともいえない様子のベンを見て、ルートは笑うと、


「僕たちの仕事は終わった、それだけのことだよ。ところで今のこのセルファ領はじいちゃんたちが?」

「はい」

「やっぱり。まあじいちゃんたちじゃないと動かせないよね。色々とじいちゃんに言わなきゃいけないことがあるから入っても良い?」

「ええ、もちろんです」

「ありがとう」

「いいえ、礼を言われるほどのことではありません」

「あはは。…ところで誰にも言わないでね。僕が帰って来たことを聞いたら面倒なことになってしまう者たちが…」

「ああ、そうですね。それではお通り下さい」


ルートは顔を青ざめさせてそう言うと、ベンはその言葉に当てはまる者達の顔を思い浮かべると苦笑いをして同意の言葉を返し、レストへの立ち入りを許可した。


ルートとベンは1通りの話を終わらせると詰所から出て、ルートはフードを深く被って二人並んで一言も言葉を交わすことなく門の所まで一緒に歩いて行き、門の内側でルートはエリュと合流を果たし、ベンはフーとカイと門番としての役割を交代する。


合流したルートはエリュに、


「お待たせしてごめんね。それじゃあ行こうか」


そう軽く詫び、エリュが頷いたのを見るとセルファ領の領都レストの活気立つ人通りの中に紛れて行った。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ん?」

「あ?」

「うん?」

「え?」


レストの各所にて、様々な者たちがほとんど同時に何かしらの直感のようなものを感じ、その者たちは辺りを見渡すと、


((((何だか面白いことになりそうな気がする))))


そう考えると口元に二ヤァっとした笑みを浮かべ、恐らく同じような直感を感じた者たちが集まるであろうギルドへと移動を開始した。


その者たちが集まったギルドの一角、会議室内ではワイワイガヤガヤと非常に楽しそうな声を上げて話をしていた。


そして会議室に一人の若い覇気を身に纏った女性が入ってきた瞬間、大いに盛り上がっていた会話がピタリと止まる。


その女性はその静まり返った空気の中、ゆっくりと集まった者たちに目を向けると、非常に楽しそうな表情で、


「分かっておろう?何かがこの町に入ってきたぞ。それも面白そうなモノじゃ。」


その言葉に集まっていた者たちも彼女と同じような楽しそうな表情を浮かべる。


その表情を見て彼女はそれも当然といった様子で、


「当然見逃せるわけがなかろう?即刻捕らえて参れ」


そう命令した。


その命令を受けた者たちは相も変わらず楽しそうな表情で、


「「「了解!」」」


非常に楽しそうな声を上げて了承すると、扉から、窓から、はたまた転移魔法を使ってそれぞれレストの町へと散っていった。



魑魅魍魎が住まうと言われる魔境レストの中でも1段と異彩を放つ変人集団、はたまたレスト最高戦力と名高い彼らは面白そうなものを探しに街へと解き放たれて行った。


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もう一つの連載作 テーマは独善の投影。
「辻ヒーラーさんは今日も歩く」
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