73話 話
投稿が隔日で狂っていて申し訳ないです!
王からはルートの今後の扱いや償いと報酬、エリュの一般的な話によく知られている話、そしてルートとエリュに対しての報酬などについての話が終わり、次は宰相からの話としてセルファ領の今後の展望に付いての話があった。
宰相の提示したセルファ領の統治方法についての話、そしてその領分が侵されそうになった場合には王国臣下統一会議の臨時招集権の制定、そのほかにも今までのセルファ家の王国に対しての貢献度合いというものを加味したということで、さまざまな特権が提案され、それを纏めると、
・いかなる貴族、王族に対してもセルファ領内で起こった事件についてはセルファの定める法に則って裁くことが可能になり、その処分については王族が責任を持つ。
・造船技術を持った者の派遣と1隻の中型の貨物船の建造
・王都からセルファ領までの道の整備
最後の道の整備に関しては費用は王国持ちではあるが、人はセルファ領からも出さないといけないという点はあるが、出来上がったらセルファ領にとっても利となり、さらに雇用が出来るということで十分に呑んでもいい条件だと判断できる。
ルートはそう考えると、
「十分です。その特権、ありがたく受け取らせていただきます」
宰相に頭を下げてそう言った。
ルートに頭を下げられた宰相は、
「儂らのセルファ家に対する礼と侘びじゃ。気にするでない」
好々爺といった様子で笑ってそう言った。
ルートはその笑顔を見て、5年前に王城に連れて来られて3日間にも渡って続けれられたときの宰相のあの質問の数々は国を守ろうとする意識の表れで、決して冷たい人物だったからではないんだと今更ながら、復讐も終わった今だからこそようやく理解することが出来た。
そんなルートの宰相に対する印象の変化には気が付かず、宰相は、
「それでは儂からは以上じゃ。次はリリーシアかの」
「は~い」
そう言って話の主導権をリリーシアに譲り、その彼女はルートの目を見て、
「ルート君って~、闇魔法使えるよね?」
「…はい」
「やっぱりね」
ルートは自分が闇魔法を使えるということはあまり知られたくは無く、ホルン侯爵に掛けた"呪い"も大概の者はエリュの魔法によって欺くことが出来たはずであったが、
「さすがに宮廷魔道士長は欺けませんでしたか…」
「長く生きているだけあって、見た事がないわけではないからね~。ああ、気にしなくても私以外にはばれてないと思うよ~。ルート君がアレを殴っただけだったら推測くらいなら立ったかもだけど、エリュちゃんのファインプレーで違和感も無くなったと思うよ~」
そうのほほんとした調子で言うリリーシアの言葉に一応は安心したルートであったが、
「で、それを聞いた理由はどういう訳でしょうか?」
やはりその点については聞いておかなければならない部分だろうということで少し威圧的に魔力を放出してリリーシアに問いかける。
リリーシアはその圧力に怯えることなくルートを見て、
「ああ、勘違いしないでね〜。闇魔法に目覚めた理由だって予想はつくし、闇魔法が使えるかどうかというのを確認したのはあのホルン侯爵から情報が思った以上に絞れているからだよ〜。むしろ感謝のために確認しただけだよ〜」
リリーシアのその言葉にルートは少し疑うが、王や宰相に目を向けてみても誰も忌避感などを出しておらず、とりあえずは信じてみることにした。
そして、
「そういうことなら信じます」
「よかった〜。あ、私からは以上ね〜」
「闇魔法のことを理解されているということで言っておきますが、暗殺者たちにも同じく呪いをかけています。精神的に少し追い詰めているので同じく情報は絞り出すのは簡単だと思います」
「ありがと〜、暗殺者たちに吐かせるのは面倒だからちょうど良かったよ〜。暗殺者って骨折くらいじゃなかなか話をしてくれないからね〜」
ホワホワとした様子とは似合わないバイオレンスな言葉にルートは少し引いていると、
「それでは最後に私の番ということでよろしいか?」
王と同じ赤色の髪を肩まで伸ばした爽やかな印象のマーディライト公爵が自分の話をしようし、リリーシアは「どうぞ〜」と間延びした声でマーディライト公爵に手番を譲り、手番を譲られた彼はルートの顔を見ると、
「うん。顔立ちは辺境伯に似て、その目の色は夫人のものだ。彼らの面影を感じるよ」
ニッコリと微笑んでそう言った。
ルートはその邪気のない微笑みが自分ではなく、自分の顔立ちから想起される父や母に向けられているということを感じながらも、その微笑みから察するに決して悪くは無い関係だったのだろうと想像していた。
そして暫く懐かしそうにルートの顔を見続けていると、
「ああ、すまない。私と君の御両親は10年前の王国臣下統一会議で会っただけなのだが妙に話が合ってね。1週間にも満たない期間であったが私的に話すこともあり、非常に楽しい時間を過ごした。私の宝物だ、本当に素晴らしい御両親を持ったよ、ルート君」
「自慢の両親です」
「ははっ、そうだろう。君には彼らが話してくれた言葉を伝えておく。伯は君のことを「僕には似ずに妻に似て、誰かを支えられるような優しい者だ。…時折怖いところもソックリだ」と。あの時の夫人は軽率なことを言った伯の手を…いややめておこう。夫人は「私には似ずこの人に似て、自分というものをしっかりと持っている者です。…時折信じられないようなミスもしますが」そう言って2人して笑っていたよ。そして口を合わせて愛していると言っていた」
公爵がそう伝えると、ルートの目からツーっと涙が零れ、その涙のまま笑って、
「ああ、父様、母様。僕もずっと愛しています。どうか安らかに…」
小さくそう呟いて流れた涙を両手で拭うと、公爵の方を見て、
「ありがとうございます。今の言葉で本当に僕の復讐が終わったような気がします」
そう言って感謝の言葉を述べると、公爵は微笑んで、
「ならよかったよ。城下町で君を見た時、そしてあの会議の時に見た君には友人の息子としてはして欲しくない顔をしていたからね。今の君の顔の方が良い」
「ありがとうございます」
「いつか状況が落ち着いたら訪ねてきなさい。君の御両親が送ってきたメッセージを見せてあげよう。面白いくらいに君たち兄弟のことしか書いていないよ」
「いつか必ず」
「その時は歓迎しよう」
公爵とルートが互いに自然と差し出した手を取って握手をしながらそんな会話をし、手を離したところで王が、
「そろそろ良いか?」
そう尋ねてきたため、ルートと公爵は頷くと、
「そうか。時にルート、お主はいつ王都を出るつもりだ?」
「3日後を予定しています」
「そうか。それでは物品の鑑定はそれまでに終わらせておく故、王都を出る前に王城まで来て欲しい。また、造船に携わる人材と道の整備についての話を持っていく使者はまた後日送ろう。それで良いか?」
「分かりました」
「そうか。ところでエリュテイア殿はどうされる?この後優先してホルン侯爵から情報を引き出させる故、待つと言うなら客室に案内するが?」
「私もルートと同じく3日後に」
「承知した。それでは3日後までに全て済ませておこう。もし予定が早まるようなら兵士に伝えてくれ。案内させるように命じておく」
「「分かりました」」
「そうか。それでは話はここまでとしよう。外にはここまで案内してきた者が待っておる故、それに外まで案内させよう」
王のその言葉でこの場はお開きということになり、ルートとエリュは立ち上がって室内にいた者たちに一礼して扉を開けて出て行った。
そうして扉の前にいた執事服の男の案内に従って王城と城下町を繋ぐ橋まで案内され、男に勧められた馬車の用意を丁寧に断って橋を渡って街ゆく者たちに紛れてゆく。
王城から出たときには王都を囲む壁の向こうに沈んでしまいそうなオレンジ色の夕日が見え、いい時間ということもあって、人通りが一段と多く、それぞれ露店に並んで食べ物を買っていたり、子供を連れた大人が手を繋いで楽しそうに話をしながら歩いていったりと、街行く人たちの間を子供たちが縫うように笑いながら走り抜けていったりとしている様子がさまざまなところで見受けられ、大通りは活気に満ちていた。
その活気に満ちた大通りを、二人して何の目的も無く、行き先など何も考えずにただ足の動くままに隣り合って何も話をすることも無いままに歩いてゆく。
しばらくの間、無意味にぶらぶらと歩いていると、ルートのお腹からグゥーっという音が鳴り、ルートは、
「お腹が減った。お昼ごはんは戦いに備えてなるべく少なめに取ったし、それに良く動いたからね。もうペコペコだよ!」
少し腹の虫がなったことを大慌てでエリュに向かって取り繕うように言い、エリュはそのルートを見てクスッと笑うと、
「私も食事は軽くしておいたからお腹が減ったよ。何かいいもの売ってないかな?」
そう言って自分のおなかをさすって言った。
ルートはそのエリュのフォローに良くぞ言ったという様子で、
「なるべくおいしいものがいいよね!何処か店でも入る?」
「そうしましょう。なら分かれてお互いに良さそうな店を見繕うというっていうのはどう?」
「いいね。それじゃあ時間は大体十分ほどで、集合場所はこの辺り。それでどう?」
「分かった。この際食事代の制限も無しで良いよね!それじゃあまた十分後にね」
「うん。十分後に」
ルートとエリュはお互いに反対方向に進んで行き、目に付いた店やおいしそうな匂いのする店、街行く人たちの会話の中に出てくる店を探してゆき、今いる大通りだけでなく他の大通りと繋ぐ通りの店なども探してみたりとして良い店を探し続け、十分ほどが経過したところで、二人は先ほど分かれた場所に再集合をしていた。
また同じ場所に集まった二人は両者ともに自信満々といった様子でお互いを顔を見て、
「「僕(私)の勝ち!」」
別に勝負をしていたわけではないのだが、なぜかそんなことを言っている二人はお互いに相手が言った言葉に反応して、
「うん?エリュさんやい、残念だけど僕の選んだ店のほうがおいしいはずだよ」
「いやいや、ルートさん?あなたこそ私の選んだ店のほうがおいしいということが分かっていませんね」
二人は笑顔でそう口で相手をチクリと刺しながら、お互いの目と目の間で火花を散らして自分の選んだ店が良いと主張し続け、
「「ああもう、埒が明かない!」」
「僕の見つけた店には個室があるんだよ!」
「私が見つけた店にもありますよ!個室があるってことはそっちのはどうせドレスコードが必要なんでしょう?」
「今の格好を見てそれ言ってる?僕の見つけた店には料理の種類が豊富だったよ、これでもまだそっちのほうが良いって言う?」
「もちろん、それくらい私の見つけた店でもやってますよ。実はもう予約もしてきました!」
「え?僕もしてきたんだけど…」
「…」
「「勝手なことしないで!」」
まったく同じ反応をする二人はその後も色々と相手の選んだ店についての話をしてゆき、そろそろ相手の上げる店に対して文句をつけるようなところも無くなってきた中で、
「ああもう!僕の見つけた"櫓"って店の方が良いよ!」「分からず屋!"櫓"って言う店の方がいい!」
「「…え?」」
結局、お互いに相手に勧めていた店は同じだと分かり、二人はしばらく黙って顔を見合わせると、
「「ぷっ、あははは」」
吹き出して大きな笑いをあげた。
そうして笑いすぎて目元に滲んだ涙を指で拭うと、
「ふう。それじゃあ"櫓"に行こうか、お姫様?」
笑いに一度蹴りをつけてから、ルートがそう少し気取ったようにエリュに手を差し出すと、エリュはその様子を見てもう一度笑いながら、
「ははは、全然似合ってないね、それ。まあそれでもエスコートしていただけるのであれば、その手をお借りしましょう、王子様。…サイズ的にもぴったり」
「なんて言った今!?」
「素敵なエスコートをしてくださいねと言いましたが?ぷぷ」
完全にルートで遊んでいるエリュはそう言って自分の手をルートの手に重ねて自分よりも背の小さい王子様を急かし、王子様は少し不満そうな顔をしていながらも大人しく先導し始めた。
その道中、ルートは道行く人たちから視線を集めていることに気が付き、自分の格好とエリュの格好を見ると、ルートは今来ている服を開いているほうの手で摘んで彼女に見せながら、
「流石にこの格好は不味いから着替えたいんだけど、エリュは何か持ってる?」
「持ってるけど、どうして?」
「周りの目を見れば分かるし、何処かで着替えたほうが良いと思うんだけど泊まっている宿も遠いからね。…まあそれしかないよね。エリュ、こっちに来て」
ルートはエリュの手を引いてわき道に逸れて人の来なさそうな薄暗い路地に連れ込むと、ルートに強引気味に手を引かれたことで微妙に心拍数が上がっているということに不思議な顔をしているエリュの足元に手を置くと、『影部屋』と彼女の影を繋いだ瞬間にエリュが影に沈んでいった。




